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第十二話:戦友の死。

07戦友の死。

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白狼の部屋に着くとノックもせずにミタマは障子しょうじを開けた。


「オーイオイオイ。随分な扱いじゃねーの。これ酷くね?俺様超可哀想!」


待ってましたと言わんばかりに声をあげる白狼はキッチリしばり上げられていて、布団も無しにたたみに転がされていた。

その状態で一晩過ごしたのかと思うと少しばかり可哀想にも思う。


「……大丈夫ですか?その体勢」

「……え?結構シンドイかな。つーか、俺様なんざ心配するとはさっすが御主人サマだねぇ~」


相変わらず事態を把握はあくしていないかのような口ぶりだ。

こんなヤツから本当に情報を聴き出せるのか不安ではある。


「ねぇロウちゃん。ロウちゃんはさ……なんであの事自分のせいにして黙ってろって言ったの?自分を悪者にして何か得なんてあった?」

「あー?あ~な。その方がオマエ、俺様を信用すんだろ?違うか?だからオマエ飲んだんだろ?薬」


白狼の言葉に七曲が言葉を飲み込んだ。

その通りだった。

全く疑わなかったわけじゃない。

だけど、その言葉があるか無いかでは段違いだった。


「あの事って……?」


紗紀が首をかしげて聞けば、おっと、と七曲の肩が跳ね上がる。

ミタマは察しがついているのか面白くない顔をしていた。

そんな三匹を眺めて白狼が愉しげに笑い出す。


「ぶっはは!マジかよ!あっはは!!ひーひー!面白ぇ~。あー、いーよいーよ。紗紀チャンは、思い出さなくて!」


そう言われて瞬時に過ぎる七曲さんや白狼と起こった出来事。

ぶわっと体に熱が込みあげる。

赤面しつつも頭を左右に振って冷静を取り戻した。


「やっぱり白狼はわざとだったんだね?おかしいなとは思ってたんだ」

「ふーん?へぇ……」


紗紀の言葉に一瞬驚いた顔をした白狼は、次に目を細めて笑った。

まるで面白いものでも見ているようだ。

ミタマと七曲もまた驚いた顔をして紗紀を見つめる。


「あなたの目的は何?」

「懐柔」

「……カイジュウ?」


白狼は誤魔化すことも濁すこともなくキッパリとそう言い放った。

紗紀は思わず呆気に取られて言われた言葉を理解しようと復唱する。


(怪獣?絶対違う。え、なにそれ)


「……それはどういう事?」

「……は?」


言葉の意味が理解できずに思わずそのまま投げてしまう。

それに対して白狼は素っ頓狂すっとんきょうな声を上げた。


「……つまりだ、ご主人サマ。俺様たちと手を組まないか?」

「え?」


いつもなら茶化して大笑いして馬鹿にするのに、少し考えた後に、言葉を選ぶようにそう真剣に伝えて来る白狼。

紗紀はその目が嘘偽りなく真面目であると感じた。


(カイジュウとは仲間になれってそう言う事なの?)


紗紀の頭の中に疑問符ばかりが浮かぶ。

「……手を、組む?私達と白狼達が?」

「そうだ。オマエも知っての通りオマエんとこのお偉いさん。なんだ?セイフとか言ったか?……ヤツラは世間から見放されたニンゲンを裏で使ってこの戦いを済ませようとしている。誰が何人、どんな形で死のうがアイツらにとってはどうでも良くて替も利く。違うか?」


(確かに私もそう感じている)


ここ最近は特にだ。

だから不安で怖くて不信感を抱いていた。



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