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第十一話:七曲。
25七曲。
しおりを挟む「と、言う事で優一さんがこちらに残る事になりました……。政府に戻ってタブレットについて掛け合うので何かしら改善が見られるまではよろしくお願いします」
「よ!優一!よろしくなー!」
「わーい!優一お兄ちゃんまた遊ぼう!」
「優一よろしくなのー」
「また雑巾掛け一緒にしようよ」
化け狸達は快く受け入れてくれた。
「……なんかお邪魔ばかりしてごめんね?」
どこか申し訳無さそうにそう謝罪をする優一。
「いやいや!むしろボクのせいだから!ホントごめんね?……それからボクも……たくさん心配と迷惑おかけしました。ごめんなさい」
七曲はそう言うと謝罪と共に深く頭を下げた。
みんながどこかほっとした顔をして拍手を送る。
「強くなって戻ってきたんだって?見た目まで変わっちまってさ」
雪音が茶化すようにそう言う。
「本当、最初誰だか分かんなかったし!」
ムジナも七曲の変化に声を上げた。
「……強いかはまだ試してみないと。だけど、いつもと違う感じは確実に感じてるよ。あ、人型だけどこんな事も出来るよ。闇を纏え、囲い」
そう言ってムジナに触れれば、そこに居たはずの彼の姿が見えなくなってしまった。
「ムジナが!!」
「どこー?」
マミとカイリがムジナを探す。
手で触れてみるけれど感触すらしない。
「ムジナくんはボクの生み出した異空間の中だよ~」
「早く出してやって。一匹じゃさすがに心細いよ」
ユウリの言葉に、それもそうだと解術をする。
「び、ビックリしたぞ!!急に真っ暗とかやめろよバカ……!」
半泣きになったムジナがガクガク震えながらそう言う。
そんな彼にマミとカイリがギューッと抱きついた。
「アハハ。ごめんごめん。お詫びのぎゅー」
「いらんわ!」
デカイ図体に抱きしめあげられて、ムジナが叫ぶ。
「凄いですね!進化すると使える術まで増えるなんて」
「ありがとう。紗紀ちゃん。キミのおかげでボクはみんなと戦えるよ」
そう言った彼の瞳は潤んでいて、泣きそうなのに嬉しそうに笑った。
「防御特化だったケド、攻撃を跳ね返せるようにもなったし!迷惑かけた分はしっかり働かないとねぇ」
七曲は気恥ずかしそうにそう言うと頬をかく。
なんだか穏やかな空気に紗紀はやっと気持ちが落ち着き始めた。
雪音は改めて優一にお礼を言ったり、それぞれ和気藹々としている。
(これでまた、少し穏やかな生活が送れる)
紗紀はホッと安堵していた。
しばらく様子のおかしかった七曲が、こうしてみんなの輪の中に居るだけでいつも通りに感じる。
「それはそうと……ミタマ、尻尾が一つになってるんだけど?」
化け狸のユウリがずっと気になってたと言わんばかりにミタマを見る。
「それ俺も思った!紗紀姉ちゃんも尻尾一つになってたよな!」
ムジナも声をあげて紗紀を見上げた。
「ああ~……。えーっと、タマちゃんは本来尻尾が一つなんだよ。ちょっと理由合って尻尾の数を増やしてたんだ」
七曲が慌ててフォローに入る。
化け狸達はへぇ~、と騙されてくれたが、雪音思う。
見栄だな、と。
ミタマはしばらくみんなからの冷やかしを受けていたのは言うまでもない。
(後は白狼か……)
紗紀はぼんやりと縛られて隔離されている白狼の事を考えた。
今は九重が監視役として彼のそばに居る。
おちゃらけた白狼の事だから、きっと何を聞かれてもテキトーに答えて九重を苛立てていそうだ。
この先何が待ち構えているのか、この時の紗紀達は知る由も無かった。
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