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第十一話:七曲。

15七曲。

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ミタマは七曲の目の前に腰を下ろすと正座した。

紗紀は慌てて二人のそばへと駆け寄る。


「七曲、みんなが心配してる。何があったんだい?」


真摯しんしな目を向けられて、七曲は驚いてしまう。

てっきり殴られると思っていたのだ。

罵声ばせいを浴びせられても仕方ないと、み嫌われてしまってもそれだけの事をしたと七曲は思っていた。

紗紀はホッと息を吐き出してミタマの隣に座る。


「七曲さん……。私、私もごめんなさい。貴方を傷付けたのかもしれない。何がダメだったのか、どうしたら良かったのか……。ずっと気がかりで。だから教えて欲しい、です」


紗紀は太ももの上に乗せた拳へ視線を落としてから、申し訳無さそうに話した。

紗紀の言葉に七曲は必死に首を左右に振る。


「違う!……違うんだよ。違う……。ボク、は……自分が情けなくて。知られたく無くて……。だから!……怖がらせて……距離を置きたかった……」


七曲は片手で顔を押さえて言葉をつむいだ。


「情けなくなんか、ないです。七曲さんは七曲さんが出来る事をいつだってしてくれてるじゃないですか!……私、私は。この御札おふだが無ければ何も出来ない。力の無いただの人間です」

「……。……紗紀ちゃん」

「七曲さんは例え相手が自分より強いって分かっていても。それでも……私達をまもろうとしてくれた。何度だって助けられてるんです」


紗紀は一生懸命、一生懸命言葉を重ねる。

必要だって伝えたかった。

自分をダメだなんて思って欲しくなかった。

言葉を積み上げられればられる程、七曲は恥ずかしくなって両手で顔をおおう。


「そう、言って貰えるのは嬉しいケド……。足りないんだよ。だって結局護り切れていないんだ。護る事が専売特許なのに。それが出来ないって、攻撃も出来ないのに意味無いじゃん」


どんどん言葉尻がしぼんでいって、口に出すと尚更落ち込んでしまった。

側に居ても護り切れないなら、それは居ないのと一緒だ。

そんな居ても居なくても変わらない存在になりたくない。

お荷物が増えただなんて思われたくない。

護るモノが増えるという事は、つまり弱点が増えるという事だ。

七曲はそう思っていた。


「その気持ち、俺も分かるよ。七曲も知っていると思うけど……。俺が本当は尾が一つなのに九つあるのを知っているでしょ?」

「……」


ミタマが自ら自分の地雷をみに行く。

未だに九つ生えている尻尾を見て、七曲は何も返せずに黙り込んだ。


「俺だって本物の九尾狐には敵わないよ。それに引け目を感じていた。けれどキミは、俺が恐れていた相手にすら立ち向かって行っただろう?みんなが九重を恐れて会話出来ない中、率先そっせんして話しかけたり。それも一つの強さでは無いのかい?」

「戦闘には不向きだよ」


ミタマに褒められて嬉しくないわけではない。

けれど、七曲が望んでいる強さとはそういうものではない。


「……七曲の気持ちは分かったよ。方法がある……」


―シャン。


ミタマの話の途中で、鈴の音が鳴り響いた。

紗紀は立ち上がる。


(妖だ……!)


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