149 / 368
第十一話:七曲。
14七曲。
しおりを挟むその後、結局食事に現れなかった七曲と白狼。
「ナナちゃん、どうしたのかな?」
「なな居ないと寂しい……」
マミとカイリがしょんぼりとして席に着いたまま項垂れる。
みんなで食事を囲んではみたものの、一向に来ない七曲をみんな心配していた。
白狼まで居ないのがとても気がかりで仕方ない。
紗紀が席を立つとそれを見てミタマも立ち上がった。
「予測に過ぎないが自分の力不足を悔いているようだ」
九重の言葉に一斉にみんなが九重を見た。
「……七の気持ちは分かるよ。妾も近頃めっきり力になれてないからね」
「そんな事……」
雪音が湯飲みのお茶を見つめて七曲に共感する。
雪音もまた、自分の力が及んでいな事に少し悩んでいた。
紗紀はまるで自分と同じだと思った。
七曲も雪音も自分の力の至らなさに苦しんでいるのだろうか。
そう思うとその気持ちが痛い程良く分かって、泣きそうになった。
知られたくない気持ちと、抗いたい気持ちと。
「様子を見て来よう」
そう言って歩き出すミタマの後を紗紀は追う。
「……私も。私も行きます!」
その気持ちなら理解出来る。
(悔しいのも苦しいのも。きっと)
紗紀は無意識に首に手を当てていた。
◇◆◇
七曲の部屋へ向かうと、障子が開け放たれていた。
ミタマと紗紀は顔を見合わせる。
「七曲……?今、大丈夫かい?」
声をかけてから部屋を覗き見た。
「……タマちゃんに……紗紀ちゃん。いらっしゃい」
西日が差し込んではいるけれど、何故だか薄暗く感じた。
部屋の隅で片膝を立てて座っていた七曲が視線を二人に向けるといつものように笑う。
「……体調、大丈夫ですか?」
「うん。体調はね。平気。……紗紀ちゃんは?首は平気?」
びくりと肩が跳ねる。
ミタマは不思議そうに首を捻って七曲を見た。
紗紀の首筋の事は七曲は知らないはずだ、ミタマはそう思っていた。
「タマちゃん、紗紀ちゃん。……ごめんね」
「何の話だい?」
「紗紀ちゃんには酷い事をした。怖い思いさせてしまって……ごめん」
ミタマはゆっくりと紗紀を見る。
紗紀は自分の首筋に触れて震えていた。
その顔色は真っ青だ。
「……紗紀?……その首……白狼じゃ?」
「ロウちゃんもその後、紗紀ちゃんを泣かせたって言ってたね。大丈夫だった?」
「……も?」
何も言えなくなった紗紀から、七曲へ視線を向けるミタマ。
「うん。そう。一番最初はボクだから。……ついカッとなって……。タマちゃん殴っていいよ。本当に酷い事をしたんだ。合わせる顔も無い」
「ミ、ミタマさんっ」
スタスタと七曲の方へ歩みを寄せるミタマに、思わず紗紀がミタマを呼ぶ。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集
春
恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる