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第十一話:七曲。

09七曲。

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(何が怖いのか。それはきっと、ずっと昔から変わらない)


「私は大切な人たちから離れるのが一番怖い。ひとりぼっちになるのが一番怖い。元々一人で生きていく勇気が無かったから、この案件に参加したんです。死ぬ事以上に生き抜く事が怖かったから。だから、ミタマさんがこの戦いを続けなければいけない以上、私はここに残ってミタマさんと共に戦い続けます」


紗紀の言葉に、ミタマは息を飲んだ。

言われた言葉の意味を何度も何度も頭に入れて意味をとらえようとする。


「私はミタマさんとここに居るみんなと、これから先も一緒に居る為に戦います」


そう目標が出来れば、頑張れる気がした。

政府がどうとか、そんなのもうどうだっていい。

今は何よりせっかく出会ったみんなと、ミタマと一秒でも長く共にりたい。


「……紗紀……」


ミタマは紗紀の両頬を包むと口付けをする。


「俺も、キミが好きだよ。とても」


何度も何度もついばむように角度を変えて口づけをわした。


◇◆◇


一方その頃、木葉天狗このはてんぐの白狼は塗壁ぬりかべの七曲の部屋へとおとずれていた。

カタンと静かな室内に物音が響く。

障子に寄りかかった白狼が、部屋の隅で膝を抱えてうずくまっている七曲を腕組みして眺めていた。


「何の用なのさ」


ぽつり、どこか不機嫌そうにつぶやかれた声。

その声は普段冗談をすらすら言う明るい七曲のモノとは違うように聞こえた。


「いんや?さっきちょいと面白いものを見てさァ。……ご主人サマの首筋。ありゃ所有印しょゆういんだぜ。独占欲の強い男が居ると見た」

「……。……それをなんだってボクにわざわざ伝えに来たワケ?」


白狼は喉奥でククッと笑うだけで何も言わない。

七曲の脳裏のうりにはあの時の紗紀の怯えた表情が焼き付いて離れずにいた。


「……泣いてた?」

「そうだなァ、あ!因みに俺様も泣かせてやったぜ!」


そう言って親指を立ててウィンクをかます白狼。

そんな彼の言葉に思わず顔を上げて、それからまた七曲は視線をらした。


「はぁ……。キミまでなんて事してるのさ」

「……やっぱりオマエか」

「カマかけるとかロウちゃんヒドイ。はぁ……そうだよ。だったら何?とがめたいの?自分の事たな上げして?」


暗闇でも分かる。

その瞳がみら見据みすええている事に。

けれど白狼はおくする事無く笑い出す。


「アッハハハ!……まぁ落ち着けって。そう言うんじゃねぇよ。むしろ俺様なんざやっ散らかしてるトコあの狛犬に見られてっからよ!」

「いや、そう言う問題じゃないケド!?って言うかそれヤバイでしょ……」


七曲のツッコミにカラカラと笑い声を立てる白狼。

全然笑えない、と絶句ぜっくする。

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