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第十一話:七曲。
06七曲。
しおりを挟む「紗紀、大丈夫かい?」
「……はい」
「接触禁止、か……」
「あ、ミタマさんは別ですよ。妖力も必要ですし」
そう言われて抱きしめたくなり手を伸ばすミタマ。
けれど肩に触れれば紗紀はビクリと震えた。
その震え方が今まで何度も拒絶された反応と同じで、そっと手を離す。
「あ……の……」
「……すまない。えーっと、戻ろうか。抱き上げてもいいかい?紗紀」
「え!一人で歩けますよ!」
「具合、良くないんでしょ?」
つい先程、自分からそう言った事を思い出し、辻褄を合わせる為にも頼る事にした。
紗紀の許可を得て、ミタマはさっと紗紀を抱き上げる。
「今日はもう休んでもいいよ。俺らが対処するし。紗紀が元気じゃないとみんなも心配するから」
「……」
「紗紀?……何をされたんだい?」
押し黙る紗紀に、ミタマは白狼に酷いことをされたのではないかと推測した。
「……ごめんなさい」
ポツリ、謝罪の言葉を零す。
ミタマは何かを察したように静かに口を閉じた。
「私……七曲さんの様子が気になって部屋へ行ったんです。なんだか様子もおかしくて……。ちょっとした口論……とまではいかないのですが。たぶん、傷付けてしまって……」
「……それで落ち込んでいたのかい?」
ミタマの問いかけに頷く。
一部は伏せて置いたけれど、話せることは話しておきたい。
そう紗紀は思った。
「七曲さん……何かあったんですかね?」
「……彼は俺と似て精神面が思いの外強くは無さそうだからね。少し話をしてみよう」
「……よろしくお願いします」
きっと私じゃダメな事もあるのだろう。
そう思い直してミタマに任せる事にした。
気がかりな事はたくさんある。
グルグルと頭の中で渦を巻いて上手くまとまらない。
そうこうしてる間にも、紗紀の寝室へと着いてしまった。
カタンと音を立てて障子を開ける。
そっと紗紀を下ろすと、ミタマは後ろ手で障子を静かに閉めた。
紗紀は不思議そうに首を捻る。
「紗紀……」
ミタマが紗紀の首筋に触れれば、ふとフラッシュバックする今日の出来後。
七曲に白狼との出来事が駆け巡り重なる。
思わずその手を跳ね除けてしまった。
ガクガクと体が震え出す。
まただ、と紗紀は思った。
「あっ……ごめ……なさ……」
「……。……怖かったね」
「……ごめんなさい」
怖いよりも罪悪感の方が大きかった。
自分の不甲斐なさで隙を与えてしまった事、それが腹立たしくもある。
ミタマは部屋の中央まで歩くとその場に座り込んだ。
自分の目の前の畳をトントンと叩く。
「紗紀、おいで」
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