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第十話:疑念。

08疑念。

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「はぁ、ハイハイ。ご主人サマ」

「白狼、命令です。誰が怪物を生み出してるの?」


珍しく怒気のはらんだ声音で命令をする紗紀に、思わず周りが紗紀を見た。

今まで知っている彼女とはまた別の人のようにも感じる。

相当彼女を怒らせたのだとみんながそう思った。


「へぇ~?オマエ、そんな怒り方もするんだ?怖い怖い」

「ふざけないで」

「へえへえ。この怪物を作ってるヤツ、ねぇ。そーだなァ。……ニンゲンだって言ったら……どうする?」


白狼はそう言うと紗紀の様子をうかがうように見やる。

紗紀は不可解そうに眉根を寄せて白狼を見返した。

他妖メンバーも白狼の発言にどこか納得のいかない様子である。

てっきり妖怪関連が騒がせているものだとばかり思っていたからだ。

灯と楓は無言でそのやり取りを見守った。


「……ふざけないでと言ったはずでしょう?」

「ふざけてなんかんかねぇよ」


冗談だと思いたくて、紗紀が声を少しばかり荒げれば、白狼も吐き捨てるように言い返す。


「オマエだって察してるんだろ?自分達がニンゲンたちに捨て駒扱いされてるってさァ?だから、俺様に指摘されてメソメソ泣いたんだろ?違うのか?」

「!」

「それなのになんでニンゲンなんかの肩持つワケ?そっちのが訳わかんねー」


白狼の言葉に返す言葉が見つからず、黙りうつむく。

偶然では無い。

現にミタマもそれを知っていたし、本当の事なのだろう。


(でもじゃあ何の為に……?)


「政府が私達を集めたのに、その政府が妖怪達を使って神社を襲ってるって事……?」

「そうだ、って言えば信じてくれんの?」


彼がどこまで本気で発言しているのかとんと分からない。

白狼自身を信頼出来るかと言えば、決して信頼には値しないけれど、彼の言うことはどこか怖いくらいに辻褄つじつまが合う。


「あたしも、政府には思うとこあるよ。彼の意見をないがしろには出来ない。あんた……白狼だっけ?確信はあるの?証拠とか」


確かに目に見えるものなら信用も出来そうだ。

白狼は視線をらすと一瞬だけ唇を噛んだ。

そして何か思い当たったのかあやしげに目を細めて笑う。


「まぁ、そうだわな。言葉なんかいくらでも言い繕えるし?証拠ねェ……お望みとあらば近い内にでも見せてやるよ」

「どうして今は駄目なのよ?」


更に深く突っ込む灯。

さすがだ。

みんなが感心したように彼女を見た。


「今は手元に無いってのが正しいな。後、無理強いは好まねーからだ」


ふくみを持たすように白狼はそう言う。


「灯、話しは気になるけど、俺らの神社の無事も確認しねぇと」


睨み合うように灯と白狼が対峙たいじしてる中、隣に居た楓が肘で突いて小声でそう告げる。

灯は忘れてた、と言わんばかりに目を丸くして紗紀を見た。


「ちょっとごめんよ!あたしら自分の神社も気になるから一旦戻るわ!また何か進展あったら連絡して?こっちも何か情報掴んだら報告するわ」

「あ!分かりました。今日は本当にありがとうございます」

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