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第十話:疑念。
01疑念。
しおりを挟む突然鳴り出したタブレットの音で目が覚めた。
正直色々考え過ぎてあまり眠れていない。
昨夜のミタマとのやり取りを思い出すとそれだけでのたうち回りそうだ。
『俺は……、紗紀と夫婦になりたいと思ってる』
終わらない関係を求めたのだから、いずれはそこにたどり着くのは当たり前のように思うのに。
柳瀬優一と同じ香りがした。
彼もまた、ミタマと似たような事を遠回しに告げていた。
『きみとなら同じ境遇だから分かり合えると思う。……俺と一緒に生きてほしい』
一体全体、自分に何が起きてるんだと頭を抱えたくなった。
未だに鳴り響いているタブレットに、眠気眼だった紗紀は手を伸ばした。
聞き覚えのあるメロディー。
この音は以前、灯から連絡があった時と同じ音だった。
手に取ったタブレットの画面には、案の定、灯からの着信が表示されていた。
『あ、紗紀ちゃん?そっちは無事?こっちは昨日ヒマでさ~』
「……無事じゃありません」
『えぇえええっ!?ちょ、今からそっち行くわ!待ってて!』
「え!あのっ……」
状況を説明する前に通話が切られた。
灯の行動力に紗紀は言葉を失う。
(しまった……!)
心配をかけてしまう言い回しをした事に深く反省をした。
急いで布団を畳み、着替えを済ませる。
時計を見れば時刻はとうにお昼を過ぎていた。
(ご飯の準備忘れてた!!)
急ぎ足で居間へ向かえば、マミと雪音が食事の準備を済ませてくれていた。
「すみません……!寝坊してしまって」
「たまにはゆっくり寝たらいい。アンタは少し自分の体大事にしな?」
「そうだよ。ほらご飯食べよう」
優しく彼女たちが迎え入れてくれて、なんだか泣きそうになる。
ここに来て涙腺が緩くなったように思う。
「雪音さんこそお怪我はありませんか?」
「あぁ、眠ればある程度回復するもんさ。丈夫に出来てるからね」
「ご無事なら良かったです」
どこか自慢気にそう言った雪音は、自分の胸を手の平でパシンと叩く。
雪音の無事にホッと胸を撫で下ろした。
「おはよう、紗紀」
不意に背後から声をかけられて、その声が誰の者か直ぐに分かった。
恐る恐る振り返った先には予想通りミタマが居て、少しだけ対応に困りつつも頭を下げる紗紀。
「おはようございます」
一生懸命普段通りを装う。
「よーっす!って、そんな丁寧に出迎えてくんなくていーのに~」
わざとらしい声を上げて、お辞儀をしている紗紀に声をかける白狼。
「貴様を出迎えてなどいない」
白狼の後から居間にやって来た九重が手厳しいツッコミを入れる。
この二人はなかなか良いコンビのように思う。
居間には七曲以外みんな集まっていた。
「七曲さんは?」
そういえば昨夜、木葉天狗である白狼から攻撃を受けて以来会っていない。
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