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第九話:木葉天狗
19木葉天狗
しおりを挟む正直、紗紀もミタマがウカノミタマを好きだと知ってモヤモヤとしたのだ。
なんだ、そうだったのかと落胆もした。
一緒になっても両親みたいに駄目になってしまうと自分に何度も言い聞かせた。
(このもやもやドロドロした気持ちも、嫉妬?)
「俺はね、紗紀。キミを失ってしまう事が一番いやだよ。キミが傍にいてくれるだけで嬉しいし、笑ってくれたら幸せだ」
「私、もです」
不意に口からこぼれ落ちた言葉は徐々に尻すぼみになって消えた。
ミタマの耳に届いただろうか。
自分の口から出てしまった共感の意味に気づいて手汗が滲んだ。
尋常じゃないくらい心拍数が上がっていて、バクバクとけたたましい音が体から聞こえる。
先程まで流暢に喋っていたミタマはこんな時に限ってだんまりだ。
妙な静けさにいたたまれなくなって来た頃、ようやくミタマが声を発した。
「……それって紗紀も同じ気持ちだったって事?」
(やっぱり聞こえてた!!)
うぁぁああああああああ!!とのたうち回りたくなるのを必死で堪える。
自分ですら驚いているのに問いたださないで欲しい。
自分で言った言葉の意味を、今一度整理して確認したいところなのだから。
「……やっぱり、都合良く解釈し過ぎだね。紗紀がウカノミタマ様に嫉妬したのかと思ったよ」
「そ、そんな大それた事は決して……」
「だよね。うん、分かってる」
「ただ、ミタマさんがウカノミタマ様を好きだって知って、なんかもやもやして、胸のあたりがキュッて苦しくて」
弁解をしているのか墓穴を掘っているのか、テンパっている紗紀には必死過ぎて分からない。
「……それって、嫉妬とはどう違うの?」
「……うぐぐ」
さっくり図星をつかれ、良く分からないくぐもった声が漏れ出た。
「……うん、ちょっと浮足立ちそうだからお互い一旦冷静になろうか」
「……そうですね」
紗紀は息を深く吐き出した。
先程から心臓がずっと忙しない。
ミタマに丸聞こえなのではないかとすら思う。
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