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第九話:木葉天狗

13木葉天狗

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「痛ってェーな!優しさが足んねーンじゃねェーの!?」

「貴様に与える優しさなど持ち合わせていない」

フン、と腕組した九重さんはそっぽを向いた。

木葉天狗は物申したげに紗紀に視線を向ける。

けれどジロジロと頭から爪先まで視線を巡らせて、再びげんなりと溜め息を吐き出した。


「ハァ。まさかこんなガキに負けるとはなぁ……。さすが神様の念のこもった御札だな」

「神様?」


木葉天狗の言葉に首をかしげる。

そう言えばこの御札達は誰から何の意図いとで渡された物なのか知らない。

木葉天狗はサラサラと文字を書くと親指をカリッと噛み血印けついんを押した。

ん、と紗紀に手渡しながら言葉を続ける。


「何オマエ、なんも知らねーの?」

「あなたが知ってる事教えてください」


紗紀はそれを受け取ると真剣な目で木葉天狗を見つめた。

その瞳を見て木葉天狗はハッ!と馬鹿にしたように笑った。


「なーるほどねぇ、ニセモノなワケだ」

「どういう事だ?」


木葉天狗の言葉に今度は九重が催促さいそくする。


「この御札は、オマエのとこだとウカノミタマが念じて一筆一筆、力を込めた御札だ。力も要するから気軽に何枚でも作れるもんじゃねぇ」


(そう、だったんだ。何も知らなかった。だからこそこんなにも強力で私のイメージを叶えてくれるのか……)


それが一体、後何回使えるだろう?

そしてこの戦いはいつまで続くのだろう?


「つーかさぁ。オマエ、知ってたか?何で何の力も無い、何も知らされて無いオマエらが、こんな命がけの戦いにり出されてんのか」


ニヤリと意地悪げに笑う木葉天狗の言葉に、ドクリと心臓が一際ひときわ大きくね上がった。

妙な静けさのせいか、自分の心音が嫌に大きく聞こえる。

紗紀は自分の襟の合わせ目を掴んだ。

体が、震える。


(知りたくない……)

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