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第九話:木葉天狗
12木葉天狗
しおりを挟む「おっせぇよ、ほら早くなんとかしろって!痛ッ!?」
不利な状況だというのに傲慢な態度を見せる木葉天狗を、九重がぽかりと殴る。
「え!ちょっ!?九重さん」
「うるさかったから、つい」
「痛えよクソ九尾!!九本も尻尾なんか付けて何に使うって言うんだよバーカ!」
「ほう?」
一触即発の雰囲気かと思えば、動けない木葉天狗が敵うはずもなく、九重の尻尾にくすぐられるという拷問が開始された。
「ギャハハッ!やめっ!!やめろって!!死ぬ!!」
「死ね」
「バッカ!アハハハハ!!あや!謝る!!謝るからあはははは!!!ひーっ!!」
何故だか紗紀にはその光景が小学生男子のやり取りのようにも見てとれて、笑いそうになるのを必死で堪えた。
「はーっ、はーっ、テメッ!殺す気か!?」
「笑い死にとは。なかなか滑稽な死に様だな。希望とあらば#沿__そ_#うとしよう」
「やめいっ!!おい、嬢ちゃん!頼む!コイツ何とかしてくれ!いや、まず俺様の状況をだな……」
九重とやり取りをして敵わないと分かったのか、紗紀に泣き付く木葉天狗。
紗紀は必死に笑いを堪えて懐から筆ペンと御札を取り出した。
「腕だけ解放します。これに名前と血印をお願いします」
「分かった!」
相当早く今の状況から解放されたいのか、素早い返事を返す木葉天狗。
紗紀は木葉天狗に巻きついている枝に、片方ずつ触れて解術をした。
「ふぃ~。あーしんどかった。ったくオイ九尾、後で覚悟してろよ」
「ケンカは駄目です」
紗紀は筆ペンと御札を手渡しながらそう伝える。
ジト目で紗紀を見た木葉天狗は、しばらくして深い溜め息を吐き出しながら筆ペンと御札を受け取った。
「つーか、俺様がせっかく忠告してやったのによ。だーれも聞きゃしねーし。オマエも結局巻き込まれたワケだ?」
「え?」
その言葉はどこか覚えがある。
不意に、目の前の木葉天狗と以前、政府に呼び出されたビルの最上階の扉で出会った男性が綺麗に重なった。
「あーーーーーー!!あなた!一度会ってますよね!?」
「遅ェよ」
「えっえっ……あなたも狛犬?あれ、でも木葉天狗って……」
明確になってスッキリしたはずなのに、衝撃的過ぎて混乱する。
「ちょっとワケあって人間社会を見学してたんだよ」
「そう、だったんですか。……あの時はこんなにピアス付いて無かったのに……」
ふわふわの羽の生えた左耳にはたくさんのピアスにチェーンまで付いていた。
言葉遣いは丁寧では無かったけど、こんなにも酷くも無かった気がする。
紗紀はまじまじと木葉天狗を見た。
「惚れンなよ」
「自惚れるな」
間髪入れずに木葉天狗の頭を叩く九重。
容赦ない。
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