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第七話:救援に来た男。
11救援に来た男。
しおりを挟む「そうやって気のある素振りをして、優しくして離れ難くして、結局は自分の元いた所へ戻ってしまうくせに」
ぽつり、紗紀の口から溢れた言葉。
そんな弱々しい彼女を見てどうしようもなく愛おしいと思う。
抱きしめて慰めたい。
果たして、こんな感情がウカノミタマに対してあっただろうか。
彼女はとても気品があって凛としていた。
綺麗で美しい。
そしてそれよりも格好良さすらあった。
とても強く逞しい神。
それは恋でも愛でも無く"憧れ"。
こうありたい、こうなりたい。
彼女に対する褒められたい、必要とされたい、はきっとそれだ。
―憧れ。
ならば紗紀はどうだろうか。
彼女を守りたいと思う。
悲しませたくない。
笑っていて欲しい。
触れたい。
「紗紀が、好きだ」
思わず出てしまった言葉にミタマすら狼狽える。
けれど紗紀はミタマをもう一度突き飛ばすと部屋を出て行った。
耳までも赤い。
嬉しいと心のどこかで思ってしまう自分に嫌悪する。
結局は優しくされれば誰にでも靡いてしまうように出来ているのだろうか。
お互いを唯一無二と尊敬し合い大切にして添い遂げる事など無理なのかもしれない。
角を曲がった所でドンと誰かとぶつかった。
「すみません!」
「白花……さん?白花さんじゃないか!良かった。まさかこんな直ぐに動き回れるなんて」
そう言って自分の事以上に喜んだのは優一だった。
驚く紗紀に優一はお辞儀を一つして片手を差し出す。
「あ、あの……」
「ああ、僕は柳瀬優一。きみと同じく選ばれた七名だよ。本当は僕の前に戦っていた子が居るらしいんだけど。交代になったみたいで」
笑う彼の顔はどこか曇っていて、ああ、あえてぼかして話してくれてるのだと思った。
彼も紗紀も知っている。
彼の前に戦って居た少女が亡くなった事。
紗紀は差し出された手を取り握手を返した。
「……あなたは逃げないのですか?」
「逃げないよ。逃げたって最終的には自分の身に降り注ぐ事案だからね。封印された妖が目覚めてしまえば逃げた所で変わらないさ」
「そう、なんですか。……そうかもしれません」
紗紀も思い直して頷く。
「少し話をしよう?」
「はい」
青年の言葉に紗紀は了承した。
同じ仲間なら何か共有出来る情報があるかもしれない。
そう思う気持ちとしばらくミタマに会いたくなかった。
◇◆◇
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