90 / 368
第七話:救援に来た男。
07救援に来た男。
しおりを挟むミタマ達のおかげで妖怪の数は残り二体に減っていた。
「やはり戦える頭数がいるのは良いね」
青年が羨ましそうにそう言う。
紗紀は誇らしい気持ちになった。
自分の仲間が評価されている事が嬉しい。
少し離れた距離から狐火を繰り出す紗紀。
「紗紀ちゃん!?」
変化をしている紗紀を見て驚く七曲。
その油断した隙に妖怪から攻撃を受けて飛ばされる。
「七曲さん!!」
紗紀は飛ばされた七曲へと駆けつけた。
けれど七曲は意外と平気そうだ。
舌をペロリとして切った唇の端を舐める。
「コイツら大きくて数いるけど意外と力は弱いんだ。だから平気だよ」
「そうなんですね」
「それよりも紗紀ちゃん、妖力が不足してたんじゃ……?」
そう言ってる間にもミタマと九重、そして加勢に入った青年が残りの妖怪を倒してしまった。
結局何の力にもなれなかった事に肩を落とす。
「紗紀……!」
「……ミタマさん」
いの一番に駆けつけて来たミタマは血相を変えていた。
紗紀のその唇に指先で触れる。
「あ、あの……!?」
「その妖力……。解術して」
「か、解術」
普段と違う様子のミタマに困惑しつつも術を解く紗紀。
たまに見せる冷酷な彼の言葉に身震いした。
言われたとおり術を解けば体から力が抜けて、紗紀は意識を失った。
倒れ込む紗紀をミタマは受け止めるとそのままゆっくりと横抱きにする。
「え!彼女大丈夫なの!?」
慌てて駆け付ける青年に、ミタマはそっぽを向いた。
ミタマは怒っていた。
勝手に力を与え無理をさせた事に。
そんなミタマの態度に青年は不思議そうに首を傾げる。
「そう言えばきみが彼女の狛犬だね。初めまして。僕は柳瀬優一。これからよろしく頼むよ」
ほわんとした穏やかな笑顔を浮かべる彼、優一。
ミタマはそんな彼に冷めた視線を送った。
「勝手な事をされたら困るよ」
「え?……ああ、妖力の事?彼女……白花さんが困ってるみたいだったからつい。ごめん?」
悪びれた様子も無く小首を傾げる優一。
ミタマは何か言いたげに彼を見たが、小さな溜め息を周りに分からない程度についてから礼を述べた。
「助けに来てくれたんだね。ありがとう。そちらが危機の時にはこちらも助太刀に参るよ」
「ありがとう。このまま戻るつもりだったんだけどね、転移装置がまだ完全じゃないみたいだ。…… …エラーして戻れない」
「は?」
エラーと言う横文字に頭が一瞬ついていかなかったが"戻れない"と言うその言葉に居合わせた全員が優一を見た。
優一は申し訳なさそうに頭をかく。
「……それってその何とか装置が起動するまでここに居るってコト?」
七曲が簡潔にまとめる。
「そうなると思う。えーっと、お世話になります」
優一はぺこりと頭を下げる。
こうして新しい仲間が加わる事となった。ミタマの不機嫌が一気に加速した。
◇◆◇
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
くろぼし少年スポーツ団
紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
叶うのならば、もう一度。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ライト文芸
今年30になった結奈は、ある日唐突に余命宣告をされた。
混乱する頭で思い悩んだが、そんな彼女を支えたのは優しくて頑固な婚約者の彼だった。
彼と籍を入れ、他愛のない事で笑い合う日々。
病院生活でもそんな幸せな時を過ごせたのは、彼の優しさがあったから。
しかしそんな時間にも限りがあって――?
これは夫婦になっても色褪せない恋情と、別れと、その先のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる