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第七話:救援に来た男。
06救援に来た男。
しおりを挟む彼に視線を向けられて、慌てて片手を左右に振った。
「違います、違います!そんな関係では!」
「……えーっと、ごめん?」
「だから、違いますってば!」
自分でも顔が赤くなってるのが分かる。
「さて、早いとこ妖怪を片そう」
(スルー!?)
そう言って御札を取り出し変化をする青年。
その姿は猫耳にしっぽまで生えていて、何とも言えない。
「……。……俺もね、この歳で猫耳はどうかと思ってはいるんだよ?……うん、大丈夫。笑ってくれていいから」
「……わ、笑えませんよ。私も人のこと言えませんし」
「きみきみ、肩が震えているよ。そしてどうして目を合わせないんだ?ねぇ?」
「わ、笑ってる場合じゃありませんよ!行きましょう!」
「やっぱり笑ってた……」
予想通りと言わんばかりに苦笑する彼をよそに、紗紀は自分も変化をしようと懐を探る。
「あれ……?御札が……ない」
よくよく服装を見れば寝間着である。
人様の猫耳姿に笑いを堪えている場合ではない。
(私ってばなんて格好で人前に!?)
「……えーっと、それじゃあとりあえず……俺達は先に向かうよ」
そう言って駆け出す彼と、彼の狛犬の背を呆然と見送る。
これでは妖力を分けて貰った意味がまるで無い。
「紗紀が探しているのはー……これ?」
カイリくんが懐から何かを取り出すと小首を傾げた。
その小さな紅葉のような手に握られていたのは見覚えのある御札だ。
「な、なんでカイリくんが……!」
「紗紀とタマがけんかしてたのが見えて、ひつよーかもって」
「……ありがとう、カイリくん……」
しゃがんで小さな彼をぎゅっと抱きしめると、その手から御札を受け取る。
「紗紀お姉ちゃん!?……まさか戦う気じゃ……」
「うん。みんな頑張ってるからね。マミちゃんとカイリくんはみんなが戻って来た時の為におむすびとお風呂の準備を頼んでもいいかな?」
何か言いたげなマミ。
けれど現状そうも言っていられないのだろう。
仕方なく頷く。
「……分かった。行こうカイリ」
「はーい」
「ありがとう」
紗紀はお礼を言って妖怪の群れに向き直る。
「変化!」
狛犬であるミタマの姿を借りて、紗紀は駆け出した。
◇◆◇
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