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第六話:九尾狐。
03九尾狐。
しおりを挟む妖力を貰うためとは言え自らした行為に、しかも失敗に終わったそれを蒸し返されては紗紀もたまったものでは無い。
「ふふっ。キミは本当に面白い子だね。表情豊かでそれにとても素直だ。……後、顔に似合わないくらい頑固だよね。意地っ張りの方がしっくり来るかも」
「ううっ……最後の方は思い当たる節しか無いです!!……ごめんなさい」
顔を上げずに謝る紗紀の頭をミタマは撫でる。
紗紀は自分を甘やかしてくれるその手が好きだと思った。
けれど依存してしまうのがとても怖い。
居なくなったら駄目になってしまう。
そうはなりたくないと思った。
「さて、そろそろ起きておいで。ご飯、紗紀が作ってくれるんでしょ?」
その言葉にハッとする。
顔を上げて時計を確認すればお昼を回っていた。
「はい!準備します!……あ、他の皆さんは?」
「雪音以外はまだ夢の中だよ。少し疲れてるだけだろうから心配はいらないよ」
「……」
昨日あった雪音と言う名の雪女との戦いを思い返す紗紀。
自分の判断ミスを反省し、紗紀が使役したみんなとの絆が深まった瞬間でもあった。
(反省はたくさんした)
今度はどうするべきかを考える必要がある。
紗紀は一瞬落ち込みつつも改めて気合いを入れ直した。
「ミタマさん、先に行っててください!準備をして私も向かいます」
「ああ、分かったよ」
ミタマは頷くと部屋を後にした。
紗紀は着替えを持ってお風呂場へと向かう。
◇◆◇
湯浴みをして着物に袖を通せば気持ちもぐっと引き締まった。
急ぎ足で居間へと向かえばミタマ以外はまだ集まっていない様子だった。
(雪音さんはどこへ行ったんだろう?)
不思議に思いつつも紗紀は台所へと立つ。
ミタマに手渡されて割烹着を身に付けた。
「よく似合っているよ」
ミタマの何気無い一言に、紗紀は狼狽えそうになりつつも小さくお礼を口にする。
(他意は無いに決まってる)
そう自分に言い聞かせる。
ミタマはいつだって紗紀に甘い言葉をかける。
けれどミタマからしてみれば素直な感想を口にしているに過ぎなかった。
「さて、何を作るのじゃ?」
「そうですね。朝なので重くないものを」
「それはいいね」
「お味噌汁とミニサラダ、後は卵焼きにします」
そう言う紗紀にミタマは冷蔵庫からふとあるものを取り出して渡す。
「これは……ちりめんじゃこ?」
「歯触りが嫌で無ければ卵焼きに入れるのを進めるよ」
「わぁ!美味しそうですね。ありがとうございます」
ミタマからそれを受け取ろうと手を伸ばせば、そのミタマの痛々しい拳が目に入る。
(ああ、そうだった)
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