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第五話:友達と雪女。
16友達と雪女。
しおりを挟むミタマは気づいていたのだろう。
紗紀が無理をして気丈に振る舞っているのを。
そして、この神社での主である故にしっかりしなければと気を張っている事も。
自分の提案でみんなを巻き込み責任を感じている事も。
紗紀はミタマの服を強く掴む。けれど泣かないと心に誓った。
「私、まだまだですね」
「そんな事は無いよ。みんな無事だった。そして新しい妖を使役したろう?」
「みんなを危険に晒したら意味なんて無いです」
紗紀の言葉にミタマは彼女の両肩を掴んで紗紀を離した。
そして彼女の両頬を両手の平で挟み込む。
「反省するのは美徳だけれど、深みにはまってはいけないよ。出来た自分も褒めてあげて。出来ない所ばかり指摘してしまっては可哀想だ」
そうミタマに言われて自分が何を出来たのか考えてみる。
うまく回らない頭では思いつかなかった。
「キミが提案して行動に移さなければ潰えた命ばかりだよ。この敷地に一体何体の妖が今住んでると思ってるの?キミが、救ったんだ。それだけは忘れてはいけないよ」
ミタマの言葉に体が震えた。ミタマは相変わらず優しく紗紀の頭を撫でる。
「誰もキミを責めやしないさ。まぁ、責めるような大馬鹿者は俺が追放するんだけどね。ふふっ」
最後のミタマの発言に微塵も笑えない、と冷や汗を流したのは言うまでもない。
けれどそんな彼の優しさに心から救われた。
(どうして彼はこうも優しくしてくれるのだろう?)
あまりに甘やかしてくれるものだから、居心地が良すぎて怖い。
紗紀はバレないように少しの間だけミタマの裾を握った。
◇◆◇
しばらくすると居間にみんなが集まって来た。
お風呂上がりなのか血色もいい。
みんなが集まったのを見て紗紀は席を立った。
思い切り頭を下げる。
「皆さん巻き込んでしまって、怖い思いをさせてしまって本当にすみませんでした!!」
「紗紀お姉ちゃん」
紗紀の謝罪にしん、と室内が静まり返った。
驚いた顔をしてみんなが紗紀を見る。
「私、みんなを守れるようにもっと強くなりたい。まだまだ未熟だけど、努力するから!」
「……紗紀ちゃん、顔を上げて?」
口火を切っのは塗壁の七曲だった。
紗紀は恐る恐る顔を上げる。
正直とても怖かった。
下手してら死んでいた。
自分のワガママでここに居た全員が居なくなっていたかもしれない。
もうこうして集まれなかったかもしれない。
誰か一人欠けて居たかもしれない。
みんなに嫌われてしまったかもしれない。
「ボクはボクの意思でここに居るんだよ。キミに縛られ命令を受けて嫌々居るわけじゃない。だからボクに何があってもそれはボクの責任だ。キミが苦しむ事じゃあ無いよ。覚えといて」
みんなが七曲を見る。
「妾も妾の意思で使役されておる。何があっても自己責任じゃ。それに今回の件、操られて居たとは言え妾も悪かった。怖い思いをさせちまったね」
今度は雪音が声を上げた。
最初は怯えて居た化け狸達も雪音の言葉に確かにそうだと思い直す。
彼女の意思で襲って来たわけではないのだ。
雪音は傍に居たユウリとムジナの頭を撫でた。
「私、も……紗紀お姉ちゃんが悪いって思ってないよ。助けてくれてありがとう」
マミの言葉で我慢していた涙腺がいよいよ緩んで来る。
紗紀は思わず手で顔を隠した。
「俺たちも、戦う事に対する覚悟が足りてなかった。どこかお遊び気分で……ごめん」
ユウリが申し訳無さそうに頭を下げる。
「オレももっと強くなるから!!一緒に頑張ろうな!姉ちゃん!」
「……ぼくは美味しものたくさん食べて良く寝て大きくなるー」
ムジナが意気込みを語ると次にカイリが眠そうに目を擦りながら目標を口にする。
カイリに対して誰もツッコミは入れなかった。
「……みんな、ありがとう。これからも不束者では在りますが、よろしくお願いします!」
紗紀が再び深くお辞儀をする。
するとなぜか拍手が巻き起こった。
思わず顔を上げる。
みんながそれぞれに頷いてくれた。
紗紀は許されたのだと思った。
自分の未熟さも、これからの目標も、ここに居る事も。
そしてついに涙が溢れた。
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