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第五話:友達と雪女。
14友達と雪女。
しおりを挟む紗紀は雪女を見た。
「……ありがとう」
「……いや、記憶にゃないがね。妾が悪いのじゃろう?……それにしても、なんで妾はここに居るんじゃ?」
雪女は不思議そうに小首を傾げて辺りを見渡した。
化け狸達や塗壁と同じだ。
「……キミも、何も思い出せないんだね?」
「ああ」
(どうして自らじゃ無く何の罪もない妖怪にこんな事をさせるのだろう?)
ふつふつと顔も知らない相手に怒りが込み上げる。
「紗紀、どうするんだい?」
ミタマの声にハッと我にかえった。
最初は"諦めて欲しい"とそう言っていたのに。
彼は最終的に雪女を助けてくれた。
「ミタマさん、すみませんでした」
深く頭を下げる。
自分のワガママのせいでこの現状だ。
最早、謝罪以外に言える言葉が思い付かなかった。
ミタマは深い溜め息を吐くと紗紀の頭をぽんぽんと叩く。
「まさか壁に閉じ込められるとは思わなかったよ。出て来てみれば目の前で七曲が凍らされるし、マミは泣いてるし、化け狸達が凍ってるしで驚き通しだったよ。気づいた時には雪女は縛り上げられていたし。だから助ける方向に切り替えたんだ。それは紗紀がそう言う展開へ持ち込んだからだよ。だから今がある」
ミタマの言葉にまた涙が溢れた。
紗紀は袖で無理矢理それを拭うと雪女へ向き直る。
「あの、雪女さん……」
「雪音。……妾の名じゃよ」
「雪音さん。あの、良ければ一緒にここで戦ってくれせんか?」
紗紀の申し出に、雪音と名乗る雪女が瞬きを数回繰り返してマジマジと紗紀を見る。
「ここで戦う?何とじゃ?」
「雪音さんを操ってここで戦わせていた者がいるんです。その者がここに操った妖怪を送り込んで来ています。だから私は操られた妖怪達を使役しているんです」
「それじゃあ……つまる話、最終的には妾を操ったヤツと戦えると?」
「……そう、ですね。そうなると思います」
紗紀の凛とした佇まいに雪音はその強い意思を感じ取った。
フッと笑ったかと思えば高笑いをする雪音。
「あっははは!!……いいじゃろう。面白い。その話に乗った」
「……ありがとうございます!」
それにしても、と雪音は思う。
人間の香りがするのに目の前の少女は九尾の形をしていて妖力も感じる。
ふと雪音はミタマを見た。
彼から紗紀と同じ妖力を感じたからだ。
ミタマは懐から御札と筆ペンを取り出して雪音の前へと並べる。
「ここに名前と血印を押して欲しいのですが……」
「あいよ。……って硯は無いのかえ?」
紗紀の願いに雪音は筆ペンを手に取ると不思議そうに筆ペンを眺めた。
キャップを外すと既に黒に染まっている筆先を見て驚く。
「こりゃたまげた!もう筆に墨が染みているじゃないか!へぇ、ここを押すと墨が出るとは」
筆ペンに対する反応はみんな同じなのだなと微笑ましく思う。
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