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第五話:友達と雪女。

01友達と雪女。

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白花紗紀しらはなさきは今、神社の狛犬の付喪神つくもがみであるミタマと向かい合ったまま正座をしていた。

時間は正午である。

目が覚めたばかりの紗紀の部屋にミタマは訪れていた。

理由は妖力を与える為だ。


「紗紀、目を閉じて」

「い、今ですか!?」

「え?じゃあいつがいいんだい?」


そう返されるとむしろ困る。

自分で言い出して置きながらこの時間帯、などと選べる訳もない。

時間帯がいつであろうと緊張するものは緊張する。


「……わ、分かりました」


紗紀は意を決して目を閉じる。

思いのほか緊張して膝上に乗せた手に力がこもった。

ゴクリと喉がなる。


(私は昼間っから恋人でもない相手と一体何をしているんだろう?)


いくら封印を守る為、国の為、自分の未来の為の投資だと言えど、これはいいのだろうか。

正解不正解など最早分かるはずも無い。

きっと人それぞれなのだから。

ミタマの唇が触れ、妖力が流れ込んで来るのが分かる。

それがまた妙に気恥ずかしくてくすぐったい。

ミタマの唇が離れると紗紀はそのままうずくまった。


(顔なんか見られない!!!)


「紗紀?どうしたんだい?体調でも悪いのかい?」

「……いえ、しばらく放っておいてください」

「湯浴みを先にするかい?」

「いえ、ご飯の準備先にします!お腹空かせていると思うので。……だから、先に行っててください。着替えたら行きます」

「……分かった」


ミタマは後ろ髪を引かれる思いで紗紀の部屋を後にした。

紗紀は、のそのそと起きがあり着替えを済ませる。

恥ずかしがって転がってる場合じゃない。

紗紀は着替え終わるとタブレットの確認をした。

すると一件のメッセージが目に付く。

政府からの通達だった。


『本日十五時より、会議の為一時帰還を申し上げます』


(本日……。今日。十五時……?)


紗紀は時計を見る。

時刻は十三時前。

紗紀の悲鳴が上がった。


「うえええええええっ!!?もうすぐだよ!!!」


その雄叫びにも似た悲鳴にバタバタと大勢の足音が紗紀の部屋へと集まる。

ガラッと勢いよく障子が開かれた。


「紗紀!?」

「紗紀お姉ちゃん!?何があったの!?」


ミタマにマミ、化け狸達に塗壁の七曲もなんだなんだと顔を覗かせる。

紗紀はまるでからくり人間かのようにグギギギとみんなへ振り返った。

その手は驚きと緊張のあまり震えている。


「一時帰還」


ポツリ、紗紀の呟きにみんなが口を揃えて繰り返す。


「一時帰還?」

紗紀はコクリと頷いた。


「今日の十五時には一旦戻るようにって」


紗紀の言葉にみんな一斉に時計に目を向ける。

そしてもう一度紗紀を見た。


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