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第四話:ぬりかべ。
15ぬりかべ。
しおりを挟む「……そう、だね。うん、料理はしばらく紗紀に任せよう。この手で料理されたって良い気はしないだろうしね」
「ちがっ……!そういう意味じゃなくて……」
「それに、あの子達じゃ台所が大惨事になりそうだ」
ミタマはどこか遠い目をしてそう呟いた。
紗紀もああ……、と何となく想像してしまう。
「けれど紗紀、これを許可するには一つ守ってもらわなければならない事がある」
ミタマの真剣な眼差しに紗紀も真剣に頷いて見せる。
ミタマの料理のこだわりから見て、きっと台所を大切にしてるに違いない。
そう思ったからだ。
「仕事量が増えると言う事は体に無理を強いると言う事だ。だから……定期的な妖力補給をした方がいいと思うんだよ」
「うえっ!?」
「上?」
予想外な提案に紗紀は奇声を上げる。
その変な奇声が上と聴こえて上を見上げるミタマ。
「そうでは無くて……!……それって、つまり……」
「まぁ、そうなるね。最悪これでも舐めるかい?」
そう言ってミタマは怪我を負った右腕を指差す。
確かに血みどろだったけれども!!それはそれで生々しく感じる。
「ふと思ったんだけど、年頃の女子だし頻繁に口づけするのもどうかとは思っているんだ。キミはどう思うかい?」
「……そう、聞かれてもですね……」
"YES"だなんてそう簡単には言えない。
紗紀は顔を赤らめたまま俯いた。
「嫌でないならいいんだけど……」
「……嫌ではない、です」
自分の精神面まで心配してくれるミタマに、紗紀は声を絞って答える。
「それなら良かった」
ミタマは普段どおりに笑うと、紗紀を引き寄せ唇を寄せた。
伏せてある純白のまつ毛が、ゆっくりと開いて黄金色の瞳とかち合う。
その瞳には驚いた顔をした紗紀が映っていた。
「な、なな……」
わなわなと言葉にならない紗紀にミタマは口元を袖で隠すと笑った。
「寝込みを襲うのは駄目だとキミが言ったんだよ、紗紀。それに眠る前の方が目覚めもスッキリしそうだ」
ミタマに適う日は来ないと紗紀は悟った。
◇◆◇
その後、特に何事も無く夜は明けた。
みんなは解散し、それぞれ部屋へと向かい就寝する。
そうしてまた一日が終わり、新しい一日が始まったのだった。
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