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第四話:ぬりかべ。
12ぬりかべ。
しおりを挟む「ボクは攻撃には向かないけど防御は得意だよ。素敵な盾になれるケドどうかな?紗紀ちゃん?」
紗紀は驚いた。
まさか自ら使役してくれと妖怪から言って来るとは思わなかったからだ。
(化け狸達といい、どうしてこうも簡単にこちら側へ来たがるのかな?ありがたいけど)
紗紀はミタマを見上げる。
「却下だよ」
「え!ひっどぉい。さっきイジワル言ったから?そんな事で怒っちゃうの?おっ子サマ~」
「紗紀、御札で奴を払ってもらってもいいかい?」
「待って待って待って!!悪かったって!!ホントごめん。キミはボクら妖と言うより神に近いでしょ?神使って呼ばれるくらいだしさぁ。……その、羨ましかったんだよねぇ。ごめんね?許して?」
両手をパンと顔の前で重ね合わせて謝る七曲り。
いつの間にかあぐらから正座に座り直していた。
彼の話を聞いて紗紀は考えを巡らせる。
(妖よりも神に近い……?それならば妖よりも神様の方が強いんじゃ?)
けれどもミタマは物から生まれたから本物の九尾には勝てないと言っていた。
(それは一体どう言う事なんだろう……?)
ミタマにとってはあまりにナイーブな話過ぎて、触れたくても触れられない。
「ミタマさん、七曲さんもこちらへ来てもらいましょう」
紗紀の提案にミタマは視線だけ紗紀に向ける。
「せっかく正気に戻れたのにまた何かあって違う神社を襲われても困りますし。使役したら悪い事は出来ないでしょう?」
「……。……はぁ。……紗紀の好きにしたらいい」
紗紀の必死の説得にミタマはあからさまに溜め息を吐き出した。
その了承とも取れる彼の返事に七曲は喜ぶ。
ミタマは懐から御札と筆を取り出し紗紀に手渡した。
紗紀はそれを受け取ると七曲へと差し出す。
「ここに名前と血印をお願いします」
「ハイハ~イお任せあれ。って何この筆!硯いらず?スゴ~イ!!画期的だね!墨が出てくる~へぇ~」
七曲は感動しながらさらさらと文字を書き、親指を噛み切って血印を押した。
「ハイ、お待ちど~!」
地面に置かれた御札と筆ペンを紗紀は回収する。御札の裏には塗壁の絵が浮き出ていた。
「これで入ってもイイ?」
「どうぞ」
ウキウキとして今か今かと待つ七曲。
紗紀の許可に恐る恐る結界に触れてみる。
弾かれると思いきやするりと結界内へと入り込めた。
「わぁ!やった!アリガト!これからよろしくねぇ」
テンションの高い七曲についていけない一同。
七曲はノリ悪~なんて呟いて肩をすくめる。
「そう言えば妖達はどうしてわざわざ人里を訪れるんですか?……私は出くわした事無いですけど」
「今出くわしてるじゃない?……うーんそうだねぇ。ボクの場合は遊びかなぁ?こう……」
七曲は化け狸達に手を繋がせて自分も加わり紗紀とミタマを囲って回り始めた。
「かーごめかごめって、こうやって遊んでるつもり。何よりニンゲン達の出られなくなって絶望した顔を見るのがたまらないよね!」
(悪趣味だ!!)
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