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第四話:ぬりかべ。
09ぬりかべ。
しおりを挟む「……ミタマさん?」
「ここにいるよ。手でも繋ぐかい?」
冗談めかしく言ったはずが、紗紀は言われるがままミタマの手を取り握った。
「……」
思わず黙り込むミタマ。
本当に握って来るとは思わなかった。
「……狐火」
ミタマが小さくそう呟くと青い光が浮き出した。
微かにミタマが見える。
(そう言えば初めて狐火を習った時に『これで真っ暗な所に一人ぼっちになってしまっても安心だね』って言われたっけ?)
繋がれたままのミタマの手を見た。
一人ではない。
それに安心する。
紗紀はミタマの手をぎゅっと握った。
「私も変化して狐火を使います」
「うん。それじゃあ手を離すよ」
「はい」
手が離れると紗紀は懐から御札を取り出し変化をした。
そして狐火を灯す。
そうしたかと思えばバタバタとした足取りが遠くから近づいて来た。
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
マミが紗紀に抱き着く。
紗紀はマミの背を擦る。
「みんな無事で良かった。それにしてもこれって妖怪のせい?」
全方位から嫌な気配がした。
囲まれているのだろうか。
「これは塗壁の仕業だろうね」
「ぬりかべ?ぬりかべって一枚の大きな壁で手と足が付いてるあれですか?」
「そう言う進行方向を邪魔する塗壁も居れば、視界を奪って真っ暗にする塗壁も居る」
ミタマの発言になるほど、と納得する。
今回のは後者か。
「とりあえず壁の側まで行ってみます」
紗紀の後をみんなで追う。
紗紀は鳥居のあるところまでやって来た。
鳥居から手を伸ばして見る。
確かにそこには壁があった。
不思議と妙に温かい。
視界を暗くしたとしても結界がある限りそれ以上は近寄れないはずである。
けれどもこうずっと暗いとなると気も滅入る。
「あの!ぬりかべさん」
攻撃的では無さそうなので話を聞いてくれるかもしれない。
そう思った紗紀は声をかけてみた。
けれど返事は無い。
「塗壁は通常なら放って置けば勝手に居なくなるんだけど。今回正気を失っているならば行動しなければこのまま真っ暗な可能性があるね」
「真っ暗ならずっと眠っててもいいのー?」
カイリがミタマの袖を引いてそう問う。
ミタマはカイリの頭をぐりぐり撫でながら答えた。
「そんなにずっと眠っていたら美味しいものも楽しいものも逃してしまうけどいいのかい?」
「……それはいやー……」
カイリはしょぼんとする。
紗紀がどうしようか逡巡していると、ユウリとムジナが狸火を連射した。
二人で攻撃をして見るけれどビクともしない。
「攻撃も効かない、か」
ユウリがどこか残念そうだ。
ミタマはそんな二人を見てふと思い出したように両手の平を弾いた。
「そう言えば塗壁は足元を狙うと消えたって話を聞いたよ。一斉攻撃でもしてみるかい?」
ミタマの提案にみんなが頷く。
横に並んで下側をそれぞれに攻撃する。
けれどもしん、として特に変わりはない。
「……もしかして一ヶ所じゃ駄目なのかもしれない」
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