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第四話:ぬりかべ。
07ぬりかべ。
しおりを挟む「夕暮れ時は何も起こらなかったね」
そう言うマミに、紗紀ははたと思い出す。
(そう言えばこの子達はどこまで知らされているのかな?)
今は稽古の合間の休憩時間だ。
縁側に腰掛けて紗紀とマミは二人並んで座っている。
ムジナとカイリはお風呂に入りに行った。
ギシ、と遠くで廊下の軋む音が小さく聞こえた。
「紗紀、マミ、少し小腹が空いただろう?ユウリとおむすびを結んだんだ。居間へ行くといい」
ミタマは作り終えたようでそう声をかけにやって来た。
「おむすびなら私も出来たのに」
「休憩だよ」
「おむすびなら座ったままでも握れます。それにそんなに体力使わないと思うんですが……」
「休憩だよ」
あくまでも譲らない。
それは先程のミタマと紗紀のやり取りの逆バージョンに見てとれた。
「マミおむすび好きー!行こう!紗紀お姉ちゃん!」
マミはそんな二人を交互に見やってから止めようと思ったのか、そう言って紗紀の裾を引く。
紗紀はゆっくりと立ち上がった。
「マミ、先に一人で行けるかい?」
「どうして?」
「俺は少し紗紀に用があるんだよ」
ミタマはマミの視線まで腰を下ろしてそう伝える。
マミは少し悩んでからもう一度ミタマを見た。
「……分かった。ミタマお兄ちゃん、紗紀お姉ちゃんイジメちゃダメだからね!」
「……うん」
そう言われて一瞬驚いたミタマだったが、いつものように笑って頷く。
それを見て安心したマミは紗紀にまた後でね!と言ってトコトコと歩き出した。
「ミタマさんは……子供好きなんですか?」
縁側に腰掛けるミタマの隣に紗紀はもう一度座り直してそう尋ねる。
「いいや。……あまり得意ではないよ」
ミタマは少し遠くを見てそう答えた。
「言っておきますけど、血の件は譲れません」
「……そうか。ならばどちらが先か、と言う事だね?」
「え……?」
「どちらが先に血を与え、正気に戻すか。そう言う事になるじゃないか」
それはつまり、ミタマも譲る気は無い。と言う戦線布告だ。
ミタマが紗紀を見る。
近いせいかお互いの瞳にお互いが映って見えた。
「……負けません」
「俺だって」
(譲らない)
お互いがお互いを思うが故に譲れない。
「紗紀、目を閉じて」
「……なんでですか」
「この後妖が来るかもしれないし。妖力補給」
そう言われて紗紀が後ろへと下がる。
しかし直ぐに縁柱にぶつかった。
ミタマがにこりと笑う。
ふと初めてこの世界へやって来た日の事がフラッシュバックした。
「……こ、心の準備が必要です」
「肝心な時に倒れたりしないって約束出来るかい?」
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