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第三話:化け狸。

07化け狸。

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「なんて無茶するの」


その表情はとても険しくて怒っているとすぐに分かった。

ミタマは紗紀を抱えたまま結界内に戻る。

途中子供達が冷やかし声を上げた。


「わー!狐のヤキモチだ!」

「ヤキモチー!」

「焼きもちってウマいのか?」

「おいしそーなの~」


徐々に会話が違う方向へと向かったが、ミタマはピタリと足を止めて子供達へと振り向き、にこりと笑った。

子供達達からはひぃ!と小さな悲鳴が上がる。

けれども気にした素振りも無くミタマは結界内へと足を踏み入れると紗紀を降ろした。


「怪我は無いかい?痛い所は?」

「大丈夫です!ほらピンピンとしてます!」


降ろしてもらった紗紀は、その場でぴょんぴょん跳ねて元気アピールを必死でしてみせる。


「……はぁ。そりゃあ御札使ったからね。……まったく、キミはお馬鹿さんなのかい?」

「あ痛っ!あ痛っ!?」


べしべしと容赦無く額を手の平で弾くミタマ。

紗紀は額を擦りながら後退する。

今まで見た事ないくらい御立腹だった。

けれどそれだけミタマは驚き、何より怖かったのだ。


「後先考えずに行動したよね?」


その笑顔がとても怖くて、紗紀視線を地面へと向ける。


「……はい」

「何とかならなかったら……死んでたんだよ?」


ミタマの言葉に思わず目を瞬いた。


(死んでた、か……)


確かに咄嗟の判断過ぎて何も考えていなかった。

けれどそこにはなんの感情も沸かない。

恐ろしいとも、悲しいとも。

それに側で見ていたから分かる。

この血で確かにあの子達は正気に戻った、と。


「お姉ちゃんをいじめないで」


女の子が不意に声を上げる。

するとそれに反応を示すように次々と男の子達も声を上げた。

"お姉ちゃんをいじめないで!"それぞれに何度も何度言われれば、圧倒されてミタマの耳も垂れていく。


「大丈夫だよ!いじめられてないよ。ミタマ……狐さんは優しいから教えてくれてるの」


ミタマが紗紀を見る。


「本当に?」

「いじめてない?」

「うん、本当だよ。いじめじゃないよ」


紗紀は子供達の視線と同じようになるよう跪く。

子供達は心配そうに紗紀を見ていた。


「私、お姉ちゃんと一緒に居たいな。狐さんみたいに」

「え?」

「僕も!」

「俺も!」

「ぼくもー」


(ミタマさんみたいに、ってこの結界の中で暮らしたいって事?)


紗紀は考え込む。


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