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第三話:化け狸。
04化け狸。
しおりを挟む一人取り残された紗紀は縁側に座り、そっと懐から御札を取り出す。
一枚一枚丁寧に並べ、その中の御札を一種類手にしてはその御札について考えてみた。
(水色はさっき使った風……風は他にどう使える?)
先程は、些か威力が低くはあったけれど、イメージに近い物ではあった。
それ以外に何がこの御札で出来るだろうか。
目を閉じゆっくりと考える。
作られたとされるフェイクの世界でも、差し込む日差しは暖かさを感じ、吹き抜ける風は春のようで少しだけ肌寒い。
まるでミタマみたいだと紗紀は思った。
温かい妖なのに、触れる手の冷たさは春と少し似ている。
「春と言うより、春一番かもしれない」
そうぽつりと紗紀は呟いた。
どこ吹く風のようで、掴みどころが無く、吹き荒れる。
庭先にあるもう若葉だらけとなった桜の木から、最後を振り絞ったように一枚の花びらが風に舞って紗紀の元へと運ばれた。
それはゆっくりと握った御札の上へと落ちる。
「そういえば……」
不意に政府に呼び出された日の事を思い出した。
桜の並木道を歩き、ビルの最上階、分厚い扉の前で出会った風変わりな男性の発した言葉。
―『あぁ、そういや竜巻注意報出てたぜ?オマエも、巻き込まれないように注意しな?』
「……そうだ、竜巻!」
ただ吹き荒れるだけではない。
渦を巻き家々を崩壊させるその威力は強いに決まっている。
そしてそれはきっと、水にも炎にだって使えるはずだ。
そう思い立った時だった。
―シャン
と鈴の音が鳴り響いたのは。
「変化!」
紗紀は襟の合わせ目から御札を取り出し、狛犬へと変化をする。
そして、縁側に並べていた御札を急いで懐へとしまった。
「紗紀!」
名前を呼ばれて弾かれたようにそちらへと視線を向ける。
「鳥居の方ですね」
「ああ、行こう」
お互い頷き合い、鳥居へと駆け出した。
◇◆◇
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