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第三話:化け狸。
02化け狸。
しおりを挟む「えーっと、じゃあ話の続きをしようか」
ミタマは満足し終えたのか、紗紀の手を離すと本題へと移った。
「この人形の式札は式神を操る事が出来るんだ」
「式神?」
そっと、懐から人の形をした純白の紙を取り出し、紗紀の目の前へと並べる。
紗紀はその形になんだか可愛らしいとほっこりしつつ触れてみた。
「そう。例えば、場所が離れていたとしても、使役したモノを呼び出す事が可能なんだよ」
「使役?」
「自分の代わりに仕事をしてもらったりとかね」
(私の代わりに……?)
あまりに想像が出来なくて首を傾げる紗紀。
それに気付いたミタマはどう伝えたものかと袖を口元に当てて考え込んだ。
「うーん、そうだね……。かの有名な安倍晴明は式神に家事をさせていたそうだよ。彼はずば抜けて力を持っていた。なんてったってあの十二天将を使役していたんだ。凄いでしょ?」
「……じゅうに、てんしょう?」
「あー……。そこからかい?心得た。そうだね、安倍晴明に使役されていた神々だよ」
「神様を使役……!?」
ミタマは腕組みをしながらうんうんと絶賛していた。
(そんな凄い人達に家事だなんて……。いや、今の私もミタマさんに家事炊事をしてもらっている身分だけど……)
紗紀は物言いたげにミタマを見る。
ミタマはにこりと笑って返した。
「もちろん、俺はキミに使役されているよ。紗紀。俺と離れる事があればこれで俺を呼んで。ね?」
そう言って渡された御札を紗紀は両手で受け取る。
大事に一枚一枚確認した。
人形をした御札は一枚、桃色が三枚。
他は全種類一枚ずつある。
「……あれ?どうしてこの桃色は三枚あるんですか?」
(色のついた他の御札は一枚ずつなのに)
「ああ、その御札は癒やしの札で治癒してくれるんだけど、回復って凄く力を使うから一枚に付き一回しか使えないんだ。大事に使う事。いいかい?」
「はい!」
大切にしなければとそう強く思った。
「因みにだけど、御札の攻撃は使役した妖、つまり俺には効力が無いんだ。この桃色の、癒やしの御札は妖にも効くんだけどね。変化した時の技は妖にも効くから、使役されてる俺にも効果があるよ。覚えておいて」
「そうなんですね。覚えておきます」
先は縁側に置きっぱなしにしていたタブレットを手に取ると、メモ帳を開いて文字を打ち込んでいく。
そんな紗紀を見てミタマは小さく笑った。
「キミは真面目だね」
「……そう、ですか?忘れて困るのは自分なので」
紗紀は顔を上げると苦笑した。メモを終えた紗紀は大事そうに御札を握る。
年端も行かない若い娘なのにえらくしっかりしているとそう思う。
「そうだね。俺がいつまで役に立つか分からないからね」
「え?」
突然のミタマの発言に、視線を再度ミタマへ向ける。
まるで足場を失ったように背筋がひんやりと凍てつく感覚がした。
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