27 / 368
第三話:化け狸。
01化け狸。
しおりを挟む「狐火!」
洗練された広めの庭には、声高々に活気のある少女の声が響いた。
少女の手の平には青白い炎が宿りゆらゆらと揺らめき、辺りに青白い色が差し込む。
「さて、狐火も上手く操れるようになってきた事だし、本日から新しい事を覚えて貰おうと思う」
ご飯を終えた昼下がりに、狛犬の付喪神であるミタマは両手の平を合わせてにこりとそう言った。
真っ白な狐の耳がピンと立っていて、黄金色の瞳を伏せ笑顔を浮かべている。
「頑張ります!」
ひょんな事から妖怪退治をする事になった白花紗紀は体力が持たずに未だ妖怪と対峙出来ずに居る。
焦りは無いとは言い切れないが、ミタマのフォローもあり、順調に技の精度を上げつつ、体力を付ける事に専念していた。
縁側に腰掛けると、ミタマは懐から数枚取り出した御札を床に並べていく。
紗紀はまじまじとその御札を眺めた。
「この黄色い御札は雷……電流を扱えう事が出来るよ。赤は炎、青は水。この薄い水色は風。緑は草木。茶色は土。最後にこの桃色は治癒をしてくれる。覚えて置くと使い道があると思う」
一つ一つを指差して丁寧に説明してくれる。
(こんな便利な魔法みたいなのが本当にあるなんて……。思わず頬っぺたを摘んで見る。痛い)
「何で頬を抓るの。やめなさい」
ミタマさんはそう言うと紗紀の手を掴んで頬から引き剥がす。
紗紀はそんなミタマの手を握り返した。
「な、何だい?」
珍しく手を掴み返してきた紗紀に、ミタマは少しばかり狼狽えた。
「いえ。……確かに感触があります。ひんやりとして冷たいですけど。これはやっぱり現実ですよね?」
「……そうだね。未だに現実味が無いのかい?」
「ありません」
「即答……」
きっぱりとそう断言する紗紀に、ミタマは苦笑する。
(自分が変化する事すら驚きなのに、炎まで操って、御札まで出てきて……)
順応する方が難しい。
「まだ説明があるんだけど、ここまでは付いて来れているかい?」
「一応、大丈夫です」
「まぁ、分からなくなったら気軽に聞いてくれて大丈夫だから。瞬時に全てを把握するなんて難しいだろうし。安心して?」
「ありがとうございます」
「じゃあ、とりあえず……その手を離してもらってもいいかい?」
ミタマはにこりと笑って、視線を握られた手へと向ける。
促されるように紗紀も視線をそちらへと向けた。
自ら掴んだミタマの真っ白な手に我にかえる。
「うわぁああ!!すみません!!ってなんで握り返すんですか……!」
手を離すように促して置きながら、手を離そうとした紗紀の手を今度はミタマが掴む。
どうやら紗紀の反応を楽しんでいるようだ。
真っ赤な顔をした紗紀が必死にミタマの手を剥ぎ取ろうと奮闘している。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
くろぼし少年スポーツ団
紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
叶うのならば、もう一度。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ライト文芸
今年30になった結奈は、ある日唐突に余命宣告をされた。
混乱する頭で思い悩んだが、そんな彼女を支えたのは優しくて頑固な婚約者の彼だった。
彼と籍を入れ、他愛のない事で笑い合う日々。
病院生活でもそんな幸せな時を過ごせたのは、彼の優しさがあったから。
しかしそんな時間にも限りがあって――?
これは夫婦になっても色褪せない恋情と、別れと、その先のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる