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第三話:化け狸。

01化け狸。

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「狐火!」


洗練された広めの庭には、声高々に活気のある少女の声が響いた。

少女の手の平には青白い炎が宿りゆらゆらと揺らめき、辺りに青白い色が差し込む。


「さて、狐火も上手く操れるようになってきた事だし、本日から新しい事を覚えて貰おうと思う」


ご飯を終えた昼下がりに、狛犬の付喪神であるミタマは両手の平を合わせてにこりとそう言った。

真っ白な狐の耳がピンと立っていて、黄金色の瞳を伏せ笑顔を浮かべている。


「頑張ります!」


ひょんな事から妖怪退治をする事になった白花紗紀しらはなさきは体力が持たずに未だ妖怪と対峙出来ずに居る。

焦りは無いとは言い切れないが、ミタマのフォローもあり、順調に技の精度を上げつつ、体力を付ける事に専念していた。


縁側に腰掛けると、ミタマは懐から数枚取り出した御札を床に並べていく。

紗紀はまじまじとその御札を眺めた。


「この黄色い御札は雷……電流を扱えう事が出来るよ。赤は炎、青は水。この薄い水色は風。緑は草木。茶色は土。最後にこの桃色は治癒をしてくれる。覚えて置くと使い道があると思う」


一つ一つを指差して丁寧に説明してくれる。


(こんな便利な魔法みたいなのが本当にあるなんて……。思わず頬っぺたをつまんで見る。痛い)


「何で頬をつねるの。やめなさい」


ミタマさんはそう言うと紗紀の手を掴んで頬から引き剥がす。

紗紀はそんなミタマの手を握り返した。


「な、何だい?」


珍しく手を掴み返してきた紗紀に、ミタマは少しばかり狼狽うろたえた。


「いえ。……確かに感触があります。ひんやりとして冷たいですけど。これはやっぱり現実ですよね?」

「……そうだね。未だに現実味が無いのかい?」

「ありません」

「即答……」


きっぱりとそう断言する紗紀に、ミタマは苦笑する。


(自分が変化する事すら驚きなのに、炎まで操って、御札まで出てきて……)


順応じゅんのうする方が難しい。


「まだ説明があるんだけど、ここまでは付いて来れているかい?」


「一応、大丈夫です」

「まぁ、分からなくなったら気軽に聞いてくれて大丈夫だから。瞬時に全てを把握するなんて難しいだろうし。安心して?」

「ありがとうございます」

「じゃあ、とりあえず……その手を離してもらってもいいかい?」


ミタマはにこりと笑って、視線を握られた手へと向ける。

促されるように紗紀も視線をそちらへと向けた。

自ら掴んだミタマの真っ白な手に我にかえる。


「うわぁああ!!すみません!!ってなんで握り返すんですか……!」


手を離すように促して置きながら、手を離そうとした紗紀の手を今度はミタマが掴む。

どうやら紗紀の反応を楽しんでいるようだ。

真っ赤な顔をした紗紀が必死にミタマの手を剥ぎ取ろうと奮闘している。


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