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第二話:決意と努力。
10決意と努力。
しおりを挟む目が覚めるといつの間にか布団の中に居た。
紗紀は左に視線を向ける。
そこにはミタマが座ったまま眠っていた。
(デジャヴ?)
ゆっくりと起き上がると時計は三時を回っていた。
(あれ?朝起きて、ご飯を食べて時計を見た時は朝の九時だったはず……。それから、眠ってた……?三時まで?どれだけ眠れば気が済むんだ!!)
布団の上にうずくまり一人反省会をする。
「紗紀?」
声をかけられて顔を上げれば腕組みをしたまま寝ていたミタマがこちらを見ていた。
「お腹でも痛いのかい?」
「……いえ。その、すみません。寝過ぎました」
「いや。むしろそれが正常な反応だと思うよ。初めての事ばかりでしかも慣れない場所なら尚更疲労も蓄積されるだろうし。疲れたらゆっくり休むのが一番だよ」
ミタマはいつものようににこりと笑うと紗紀の頭を優しく撫でる。
両親にすらこんな風に頭を撫でて貰った記憶は無い。
彼なりの労り方なのかもしれない。
「さて、そろそろだね。戦闘前であれだけど……湯浴みでもしておいで」
(そうか、もうすぐ夕方だ。ついにまたこの時が来たんだ)
紗紀は無意識の内に手の平を強く握りしめていた。
「和服は一人で着れるかい?」
「え、いえ。着れません」
「そうだよね。ここにキミ用の着物を入れてあるんだ」
タンスから長方形に紙で包まれた物を、取り出すミタマ。
紐を解いて丁寧に開いていくと中には真っ白な着物が入っていた。
柄は無く無地だ。
そう言えば今朝、『紗紀にもっと柄のある可愛らしい着物を買ってやりたいんだ』ってそう言っていた事を思い出す。
(それはそうと白って事はこれは下に着る物かな?)
紗紀は思ったけれどミタマは赤い中襦袢を取り出してこれを先に着るようにと告げた。
「あ、その前にこの肌襦袢を先にね」
「分かりました。ってえ、今ここでですか?」
「湯浴みが終わったらね。ふふっ、今着替えてくれても俺は構わないけど?」
「……遠慮します!」
紗紀の驚いたように見開かれた瞳とじわじわと赤みを帯びる頬に、ミタマはどこか満足そうに口元に袖を当ててクスクスよ楽しげに笑った。
「からかってますよね……ミタマさん」
「ふふっ。何?緊張でもする?付喪神相手に?」
皮肉を口にしたのだろうか。
ミタマの様子を伺えばいつもと変わらずにこりと笑った。
読めない人だと紗紀は思った。
それよりも気になるのは"付喪神という言葉だ。
「つくもがみ……?」
「え、知らないのかい?」
ミタマが驚いたように紗紀を見やる。
紗紀は静かに首を横に振った。
(つくもがみ……それは神というのだから神様なのだろうか?でも精霊だと言っていた気がする)
どんどん訳がわからなくなって来た。
それに神様だろうが精霊だろうが妖だろうが人の形をしていれば妙に意識してしまうのは仕方がないと思う。
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