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第二話:決意と努力。
09決意と努力。
しおりを挟む「……分かりました。でも、その時は私も戦います」
紗紀の承諾にミタマは心底ほっとした。
これで万が一の時は何も考えずに応戦出来る。
「それはそうと、あまり詳しい事を知らないのですが……封印されてる妖怪ってなんなんですか?その封印が解けてしまったら何が起きてしまうんでしょうか?」
「これは俺が勝手に話していい事なのか……ちょっと分からない」
「そう、ですよね。守秘義務ってありますもんね。分かりました」
紗紀も今年から社会人になるので知っていた。
会社の仕事内容を勝手に他人に漏らしてはいけない事を。
どうしても気になればこのタブレットのお問い合わせからメールして質問すればいい。
「さて、これからの事なんだけど。妖怪が現れやすい時間帯は覚えているかい?」
「はい!夕方から夜中ですよね?」
「正解。だから昼間に睡眠を取り、夜は起きておく形になるんだけど……大丈夫かい?」
夕方から朝方にかけて戦闘態勢で居るならば確かに昼間に睡眠を取らなければ持たない。
(それはつまり……昼夜逆転生活……?)
「……何とかなると思います。やってみないと想像も付かないのでチャレンジさせてください」
「前向きだね。キミのそういうところ、とても好きだよ」
穏やかな口調でそう言われ、紗紀はとても嬉しくなった。
褒められる事がほとんど無かったから尚更だ。
「じゃあ、夕暮れ時になったら鍛錬でもしようか」
ミタマの提案に紗紀は頷いた。
時計を見ればまだ朝の九時だった。
まだまだ時間がある。
「ミタマさんはこの後何をするんですか?」
「……お昼ご飯の下拵えだよ」
「なら私も……」
お手伝いを……と言おうとすればぺし、とミタマが手の平で紗紀の額を軽く弾いた。
紗紀は、あ、と思い出し額をさする。
(無駄に労力を使うなと言われたばかりだった。残念)
「……じゃあミタマさんがお料理してるのをここで眺めていてもいいですか?」
「何も面白く無いとは思うけど?」
「いいんです。……私……」
喋りながらうつらうつらとし始める紗紀。
お腹が満たされたからか急にとても眠くなって来た。
体から力がふっと抜けて崩れるようにミタマの方へと倒れ込む。
そんな紗紀の背に腕を回してミタマは紗紀を支えた。
「やっぱりか」
溜め息混じりに紗紀を抱えると寝室へと向かった。
朝起きてそう何かしらしたわけではない。
それでもやはり彼女には体力があまり無いように思う。
(最初だからと言えばそれだけだけど、今後もし体が妖力と馴染まなかった場合……紗紀は……)
ミタマの不安は尽きない。
◇◆◇
布団へと紗紀を横たえて掛け布団をしっかり肩までかける。
そして静かに眠る紗紀の唇にそっと口付けた。
妖力を送り込みミタマは部屋を出る。
「昼には目覚めるのかな……?」
ミタマは何故政府が聖職者では無く普通の人間を寄越したのか、そして、人間界に置ける紗紀の立ち位置を聞かされていた。
哀(あわ)れだとは思う。
けれどいつの世も、人間界はこんなものだったとも思う。
ふと、脳裏に過ぎる紗紀の言葉。
『話し合える妖ならば説得をしてみたい』
(昨日は吐く程に苦しみ嘆いていたのに。嫌、だからか。だからこそどうするべきか自分なりに考えたのだろう)
その結果が"説得"。
紗紀の言葉もキラキラとした眼差しも向けられる事がとても痛かった。
神社に訪れる誰もが彼女の様にキラキラとした視線向けては撫でて行ったけれどそのほとんどが身勝手な願いばかりでそれ以外は重たい病についてだった。
無条件に願いを叶える事は出来ない。
出来るのは運を散りばめる事であり、後はその運に気付き掴めるかどうか。
その運に見合う努力と方向性が正しく交差した時に叶ったとされる。
それだけだ。
そう、彼女の願いもまた……。
◇◆◇
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