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第二話:決意と努力。
07決意と努力。
しおりを挟む「と、まぁそういう事だからもうしばらくは鍛える事に集中して欲しい。だからそれ以外の事は俺に任せてもらえるかい?」
ミタマはそう言うと紗紀から空いた皿を取り上げ、ささっと台所へと向かった。上手く言いくるめられた気がする。
「私は何をしたらいいですか?」
「そうだね……。とは言え二人分だからすぐに終わるよ」
(確かに)
「あ、じゃあ、ちょっとタブレット取って来てもいいですか?」
そう言って紗紀は両手の人差し指で四角を宙に描いて見せた。
そのジェスチャーにああ、とミタマも思い出し両手の平を弾き合わせる。
「寝室の文机の上に置いてあるよ」
「ありがとうございます!ちょっと取って来ます!」
そう言って走って出て行く紗紀の背にミタマは注意を促した。
「無駄に労力を使わないように!」
あ、と思い出し、紗紀は足を止めるとミタマを振り返った。
頷くミタマに紗紀も頷き返す。
そして今度は歩いて寝室へと向かった。
◇◆◇
タブレットを手に居間へと戻ればミタマは皿洗いを終えていた。
先程座っていた場所に腰掛けてタブレットに触れてみる。
初めて触れるタブレット端末に指先がドキドキしているのが自分でも分かる。
(こんな機械、触った事すらない。家にはパソコンだって置いていなかった)
画面を開くと名前の記入欄が出てきた。
(これは本名で書くのかな?)
とりあえず白花と入力してみた。すると画面が変わって色々な模様の四角い物がたくさん並んでいる。
下には文字が記載してあった。
(この四角を触ればその機能が使えるのかな?)
上の方にはチュートリアルと書いてあって、やたら目立つ。
(そう言えばチュートリアルがあるから使い方は大丈夫だろう的な事を政府の方が言っていた気がする)
紗紀はとりあえずその文字をタップしてみた。
すると再び画面が切り替わった。
小さな狐のキャラクターが出て来てアイコン一つ一つの機能を紹介していく。
紗紀は一生懸命それを覚える努力を試みる。
最悪分からなくなったらチュートリアルを押そう、と思った瞬間、脳内が暗記することを放棄した。
「紗紀、難しい顔をしているね。お茶でもどうだい?」
コト、と音を立てて湯飲みが紗紀の左手側に置かれた。
ミタマが後ろから画面を覗き込んで来る。
「ミタマさんは詳しいですか?これ……」
困り顔でタブレット端末を指差す紗紀。
ミタマは口元を隠しながら小首を傾げ、隣の席へと腰掛けた。
「うーん……少しだけ。君達と会うまでの数日はそれを渡されていたからね。それ一つで色々注文も出来て届いていたし、料理の作り方も直ぐに出て来るしとても便利だったよ」
感慨深げに頷きながらミタマはそう答える。
ミタマがタブレットを使うだなんて想像しただけでなんだかとても面白い。
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