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第一話:選ばれし七名。

09選ばれし七名。

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ドクドクと心臓が怖いくらい警鐘を鳴らしてくる。


(これは、この感じは恐らく……妖怪だ)


そう思う理由としては、紗紀がここに来た理由が討伐とうばつの為だからだ。


「はぁ。随分と間が悪い」

「……私、頑張ります。『札に眠りし力よ我に力を』」


先程いたはずの術で九尾の力を身にまとう。


(この為に、私はここに居る。必要とされているからには応えたい)


ピリピリと張りつめた空気の中、鳥居の前へと姿を現したのはおかっぱ頭をした少女だった。

思わず躊躇ためらう。

けれど少女は鳥居の真ん中、何も無い筈のそこに両の手の平をかざした。

その瞬間、歪みのようなものが見て取れた。


「結界を破壊する気だね。そうはさせないよ。紗紀」

「はい!」


練習をした通りイメージをする。


(ここは絶対に通させない。結界を守るんだ)


「狐火!!」

「……タスケテ……」

「え?」


青い炎が少女に向かう。その途中、少女が何かを呟いたような気がした。

少女が飛びのくと同時に、紗紀が放った狐火とは別の狐火が少女を襲った。

威力は紗紀の放ったものの比では無い。


「ああぁあああああぁああ!!」


業火ごうかに焼かれて少女が苦しみにもがく。

その間何度も見えない結界をその小さな手で叩く少女。


「ぁああああああああ……!!」


見ていられなかった。

その姿は妖怪になんか見えなくて。

本当にただの少女が苦しんでいるように思えた。

思わず駆け寄ろうすれば強く腕を掴まれた。

その腕を掴んだ者を見上げる紗紀。

そこには冷めた眼差しで紗紀を見下ろすミタマが居た。

ゾクリと背中が粟立つ。


「駆け寄ってどうするんだい?……もう、手遅れだよ」

「……ッ!離して」

「いやだ。今回は下級妖怪だったから良かったけれど、一発で仕留められるようにならないと後がもたないよ」


(確かにその通りだ。ミタマさんが一発で仕留められた妖怪を私は倒すどころか掠らせる事も出来なかった)


けれど、初めて妖怪と対面して。

下級妖怪だったとしても。

敵だとしても。

こんな、目の前で誰かが苦しみのたうち回るのを見送れだなんて。

酷いにも程がある。

手をこちらへ伸ばし苦しみに叫ぶ少女を見て、紗紀の瞳から涙が溢れた。


(これが、これから私達が立ち向かっていく事。こんな事をずっと……?)


その場に跪く。

体が震えた。


(怖い。気持ち悪い)


「まだ始まったばかりなのに。……大丈夫かい?」


背中をさするその手を、紗紀は力強く払いのけた。

ミタマはその衝撃に顔をしかめる。


「触らないで。……一人にしてください」

「いやだ」

「え……?ちょっ!ミタマさん!?」


突然、ミタマに横向きに抱きかかえられ紗紀は慌てふためく。


「ひとりになんかしないよ。キミは意地っ張りそうだから、ひとりにしたら無駄に考え込んでメソメソするんでしょ?」

「無駄に、って……」


ぐっさりと図星をさされて押し黙る。

紗紀はミタマにしがみつくと静かに泣いた。

ミタマは何も言わず彼女を寝室へと運んだ。

寝室に着いた頃には泣きつかれたのかはたまた妖力不足か、紗紀は元の姿に戻っていて、意識が無かった。

そんな彼女にそっと口づけて妖力を送る。


 ◇◆◇

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