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第一話:選ばれし七名。
01選ばれし七名。
しおりを挟むそれは突然の出来事だった。
家賃の安いボロボロのアパートに、請求書などではない一通の手紙が届いたのは。
それが、後の白花紗紀の人生を大きく変えた。
「政府からって、私何をやらかしたの?」
茶封筒にはパソコンで打ち込まれた明朝体の文字で、紗紀の名前と住所が書いてある。
紛れもなく自分宛であることを確認し、紗紀は自分の部屋へと足を踏み入れた。
今年の春から新社会人へと繰り出す紗紀の部屋は、まだダンボールだらけで荷解きは完了していない。
社会人と言っても高卒だ。
右も左も分からない。
何が正しくてどれが詐欺なのかすら教えてくれる者も相談出来る相手も紗紀には居なかった。
◆◇◆
手紙に指定されてある日時に、指定の場所へと渋々向かった。
高校の卒業式では満開だった桜が、今は随分と散り若葉の色の方が目につく。
その日は目がくらむほど晴れているのに、気持ちはずっしりと重い。
その心に反映してか、妙に風が強く吹き荒れていた。
残り少ない桜が最後の瞬間だと言わんばかりにその枝を揺らして桜吹雪を舞わせる。
悪い事は何もしていないと思ってはいるものの、やはり怖いと思う。
しっかりと話を聞いて、出来うる事をしなければと改めて自分自身に喝を入れた。
「ここ、だよね?」
高い高級そうなビルを見上げる。
しかも指定場所はなんと最上階。
エレベーターで上がりながら見下ろす街々は絶景だ。
けれど、足元が竦みそうになるのを感じる。
到着時間は予定の十五分前。
時計を確認して早くも遅くも無い時間に安堵しつつ、紗紀はエレベーターを降りて広く長い廊下を歩く。
(部屋は確か……)
「おい。こっちだぜー」
分厚そうな一つの扉の前にその場にそぐわない雰囲気を持った男性が立っていた。
綺麗な鳶色の瞳に、それに合わせたような髪色をしている。
スーツを着ているから、ここの関係者ではあるのだろう。
親指で扉を示す彼はふと手を伸ばしてきた。
「え?あの……」
「桜まみれ。なに、桜の絨毯の上で寝転んで来たのかよ?」
彼は桜の花びらを摘んで見せた。
「あ……。あの、ありがとうございます。風がすごく強くて……」
そうお礼を言いつつ言い訳を口にする。その男性はふと何か思い出して紗紀を見た。
「あぁ、そういや竜巻注意報出てたぜ?オマエも、巻き込まれないように注意しな?」
「……そうなんですか」
(竜巻なんて珍しい……。帰り気をつけなきゃ)
しばしの談笑の後、その男性が分厚いその扉を開けてくれた。
「ほらよ、入りな」
「失礼します」
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