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惺のキモチ

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現地に到着してから2時間ほど経過した。
今は、夕食の時間だ。
宿のくせに夕食は出ないため、自分たちで作らなければいけないらしい。
まぁ、班的にいつもどおり彼方が作ってくれるのだが。
彼方と同じ班になってよかったと思う数少ない理由の一つだ。

そういえば……と今更のように思い出す。
バスの中で感じたあの気持ちはなんなのだろうか。
彼方が月見里さんと話していて、微笑ましいと感じる自分。
彼方と話せなくて、辛いと感じる自分。
彼方が僕に寄り添うように寝た時、嬉しいと感じる自分。
僕があの時感じた感情とはなんと表せばいいのだろう……

だが、一番自分でも理解できない感情があった。
彼方が月見里さんと笑顔で話している時僕は……

思考を巡らせていると
『嫉妬』
その言葉がふと脳裏をよぎった。
嫉妬ではない。きっとそのはずだ。
僕がなぜ嫉妬をしなくてはならないんだ。
そうだ。僕は嫉妬なんてしていない。
きっとこれは彼方と話すことに慣れすぎたからだ。
そう無理やり自分を納得させ、僕は別のことを思案し始めるのだった。

ーこの時の僕はそれらの感情が恋であることをまだ知らないー

--------------

さて……、
夜、どうしたもんかなぁ。
これが今の僕の悩みだ。
夜、どうやって寝るかが問題だ。
彼方とあった次の日の朝を思い出す。
今考えると、出会って2日でよくあんなことになったなぁ…
という過去の自分に対しての呆れと羞恥が込み上がってくる。
今、起きて彼方が隣にいたらいろんな意味で僕が抑えきれなくなる自信がある。
「はぁ……。どうしたもんかな」
ため息を吐くと同時に各部屋に設置されているキッチンから声がする。
「惺~。できたよ~」
3秒ほど経つと彼方は両手に美味しそうな料理を持ち、やってきた。
僕は、また、あとで考えるか。と割り切り、目の前の料理にかぶりつくのだった。
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