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【side:涼夏】αの本心、Ωの本心。
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「ねえ、朝大変だったみたいだけどオレと帰って大丈夫?」
メッセージで一緒に帰らないと伝えることは簡単だったけど、顔を見て話した方がいいと思い挨拶もソコソコに聞いてみる。撒き込まれたのだから知らされて当然だと思う気持ちと、昨日の帰りに何か言葉を飲み込んだことが気になるという気遣う気持ち。
Ωとして本能で庇護をされたいと思う気持ちは有るけれど、αとして育ってきたせいで大切な人、Ωとの関係がままならない苦しさに共感してしまう。
どっちつかずの自分がΩとして生きていくことに、αとしての自分を無かったことにするために【幸せなΩ】の見本を見たいと思うのに上手くいかない。
浬は順調そうに見えたけど、忍の話で相殺されてしまった。
付き合っていたあの子は幸せにしてあげることができなかった。
そして今、オレの存在は羽琉君を苦しめているのだろうと燈哉に確認する。
「涼夏をエスコートすることは羽琉に許可取ったよ。だけど3人で話すのはもう少し落ち着いてからにしてほしい」
「それは、無理にとは言わないけど…」
許可を取ったと言われればそれ以上固辞するのもどうかと思ってしまう。今朝言われた通り、強いαのマーキングは自分自身を守る術でも有るのだから頼れるのなら頼りたいと思うのは、まだΩで有ることに慣れないから。
「ところでさ、昨日何か言いかけなかった?」
「何が?」
「番候補でいる間はこの学校にいられるって」
「ああ、それ」
そう言うと溜め息をひとつ吐く。
溜め息を吐きたくなるような話なのかと身構えると、思った以上に重い話を聞かされてしまう。
「俺と羽琉の関係が番候補だって言ったよな?番じゃなくて、番候補なんだ」
「候補ってことは当然だけどまだ番ってないんだよね?
番ってれば燈哉君のフェロモン分からないはずだし」
「当然。
そもそも羽琉はまだヒート来てないし」
「うわ、それ言っちゃうの最低だって知ってる?」
「相手が涼夏じゃなかったら言わない。
でもまあ、なんとなくそんなのって分かるよな、きっと」
「まあね、」
そもそも燈哉がオレにマーキングできる時点で分かりきったことだ。オレの両親のようなα同士のカップルは番関係を結ぶことができないため、抑制剤は一生手放せないと言っていたのを思い出す。両親は常に抑制剤を携帯しているし、そこの部分はオレにも徹底させている。
『ネックガードで頸は守れるけど貞操は守れないからね』
困ったようにそう言ったのは父だったのか、母だったのか。
「それで、番候補じゃなくなったら燈哉君、この学校に通えなくなるとか?」
「俺じゃないよ、羽琉」
「え、羽琉君の家の力で燈哉君が転校させられるとかじゃなくて?」
「それ、どこ情報?」
浬と忍に聞いた話、仲真の家が太いと言うことから想像したことを口にしてしまい苦笑いで誤魔化す。
「まあ、羽琉の家ならあり得るけどな。
羽琉のこと、溺愛してるし」
「そうなの?」
「だから番候補。
そもそも家が釣り合わない俺が羽琉と一緒にいられるのは羽琉が俺を選んだからだし」
そして話された幼稚舎からのこと。
戸外遊びの時にひとりで座る羽琉に話しかけたのがきっかけで、たまに居る小さな同級生が気になって見つける度に話しかけたこと。
『Ωだから仕方ない』
そう言って自分のやりたいことを我慢する羽琉に何かしてあげたいと、その姿を探すようになったこと。
クラスが違うし、そもそも休みがちだったせいで会えた時には隣を離れなかったこと。
「それって、【運命】とかなの?」
「違う、と思うけど自信はない。
………涼夏、ちょっと話す時間ある?
謝りたいこともあるし」
「え、何?」
「家まで送るからちゃんと話をさせて欲しい」
そう言われて戸惑うけれど、それを了承すると「とりあえず涼夏の最寄り駅まで行くか」と言われて同じ車両に乗せられる。普段はΩ専用車両だけど、燈哉が一緒なら問題はない。
「この辺でも話ができる場所はあるけど、目が多いから」
そんなふうに言うけれど、ふたりで電車に乗ることで多くの目を集めているのはいいのだろうかと心配になる。だけど話をしたいと思っていたのは俺も一緒だからと受け入れ、電車がつくまでの間は誰に聞かれても問題ないような話を繰り返す。
学校のこと、テストのこと、長期休みの過ごし方。
今までの自分の通っていた学校や、通う予定だった学校とは違う習慣に驚くことも多くあって不安になるけれど、慣れるしかない。こうやって燈哉に話を聞けるだけでもありがたいとポジティブに考えるしかないだろうと結論づけるしかなかった。
「で、謝りたいことって?」
燈哉と入ったのは駅前のファミレスで、夕方であっても平日なせいか客は少ない。とりあえずフリードリンクを頼んで話を始める。遅くなりそうなら食事を頼めば時間を引き延ばすこともできるだろう。両親には駅の近くのファミレスに友人といると連絡しておく。
「順を追って話して良いか?」
目の前に置いたコーヒーに砂糖とミルクを入れながら言った燈哉に「いいよ」と答え、ブラックじゃないんだと勝手にしていたイメージを壊された気になる。俺の目の前に置いてあるのはブラックコーヒーだ。
「そもそも涼夏に話しかけた理由だけど…フェロモンがな、羽琉と似てたんだよ」
言われている意味が分からなかったせいで返答に困ってしまう。
羽琉君とは近づいたことはないし、燈哉から香るフェロモンを気にした事がなかったからピンとこない。
「似てるって?」
「香りが似てて、………本当に最低だけど羽琉の存在を隠すのに使えないかって思ったんだ」
何度コーヒーをかき混ぜるんだろう、そう思うほどにクルクルと回されるスプーン。
「それで俺に声かけたの?」
「ごめん…」
正直、そういうことだったのかと妙に納得する。
あの時に見た羽琉君とオレは似ても似つかなかった。こういった言い方は語弊があるかもしれないけれど、見るからにΩらしいΩの羽琉君と、αに見えてしまうΩのオレ。はっきり言って、共通点と言えば男性Ωだということくらいだろう。
「で、香りが似てるからどうしたかったの?」
「だから、3人で過ごせば羽琉のフェロモンを隠せるんじゃないかって、」
「そこ、どういうことか説明」
そうして告げられた燈哉の最低な企み。
中等部の最終学年の頃から羽琉君のフェロモンが少しずつ、ほんの少しずつだけど感じることができるようになってきたこと。
番候補なのだからヒートが来た時には自分が一緒に過ごしたいと思っていたこと。
だけど、そうなる前に自分よりも強いαと羽琉君が知り合った場合は羽琉君に選択肢があること。
だから、他のαに羽琉君の変化を悟られないようカムフラージュしたかったこと。
正直なところ憤りはあった。
あったけれど、その気持ちが理解できてしまい憤りはあるものの激しく怒る気にはならない。それどころか、打算的に燈哉を受け入れようとした自分とどっちもどっちじゃないかと嗤いたくなる。
「本当はフェロモンの持ち主を探して、話をしたいと伝えて、協力をしてもらえるか打診しようと思ったんだ」
その言葉がどこまで本当かは分からないけれど、何も答えず話の続きを促す。
「だけど探してるうちになんとか自分のモノにしないとって、羽琉を守るために今すぐに囲わないとって妙に焦って」
「あ、それなんとなく分かる。
オレもあの時、このαの側にいれば守られるって、守ってもらいたい、守ってもらわないとって。
あれ、何なんだろうね、今こうやってふたりでいても全くそんなこと思わないのに」
「怒らないのか?」
「何だよソレ、とは思うよ。
だけど守るためなら何でも使いたいって気持ち、分かっちゃうから」
そう言って別れてしまったあの子を思い出す。大切にしたいから、守りたいから。だから、守ることのできる術があるのなら何を利用してでも囲い込んでしまいたい。
『僕の元カレ、Ωのくせにαのフリしてたんだ』
そう言ったあの子は見たことのない笑顔を見せていた。嘲るような…嗤い方。
オレがαであれば、Ωであっても守る術があればあの子はオレのことを見限ったりしなかったのだろうか。
「ごめん、そんなに傷付けたんだな」
困ったようにそう言われて自分が泣いていることに気づく。
「許してもらえるとは思わないけど、できることは何でもするから」
「あ、これ違う。
燈哉君のせいで泣いたわけじゃない」
焦って涙を拭けば訝しげな顔をする。
「オレ、αだと思ってたって言ったじゃない?だから気持ちは分からないでもないんだけど、ちょっと嫌なこと思い出して情けなくなっただけ。
って言うか、さっさと自分のフェロモン纏わせてヒート来たら番っちゃえばいいのに」
「そんな簡単な、」
「だって、付き合ってるんじゃないの?」
「番候補だけど付き合ってはないよ」
「………マジで?
え、でもかなり場慣れしてない??」
思わずそう言ってしまったオレに燈哉が渋い顔を見せる。
「番候補として守って欲しいとは言われてるけれど、交際の許可はもらってない」
「………え⁈」
間抜けな声を出したオレは、きっと悪くない。
メッセージで一緒に帰らないと伝えることは簡単だったけど、顔を見て話した方がいいと思い挨拶もソコソコに聞いてみる。撒き込まれたのだから知らされて当然だと思う気持ちと、昨日の帰りに何か言葉を飲み込んだことが気になるという気遣う気持ち。
Ωとして本能で庇護をされたいと思う気持ちは有るけれど、αとして育ってきたせいで大切な人、Ωとの関係がままならない苦しさに共感してしまう。
どっちつかずの自分がΩとして生きていくことに、αとしての自分を無かったことにするために【幸せなΩ】の見本を見たいと思うのに上手くいかない。
浬は順調そうに見えたけど、忍の話で相殺されてしまった。
付き合っていたあの子は幸せにしてあげることができなかった。
そして今、オレの存在は羽琉君を苦しめているのだろうと燈哉に確認する。
「涼夏をエスコートすることは羽琉に許可取ったよ。だけど3人で話すのはもう少し落ち着いてからにしてほしい」
「それは、無理にとは言わないけど…」
許可を取ったと言われればそれ以上固辞するのもどうかと思ってしまう。今朝言われた通り、強いαのマーキングは自分自身を守る術でも有るのだから頼れるのなら頼りたいと思うのは、まだΩで有ることに慣れないから。
「ところでさ、昨日何か言いかけなかった?」
「何が?」
「番候補でいる間はこの学校にいられるって」
「ああ、それ」
そう言うと溜め息をひとつ吐く。
溜め息を吐きたくなるような話なのかと身構えると、思った以上に重い話を聞かされてしまう。
「俺と羽琉の関係が番候補だって言ったよな?番じゃなくて、番候補なんだ」
「候補ってことは当然だけどまだ番ってないんだよね?
番ってれば燈哉君のフェロモン分からないはずだし」
「当然。
そもそも羽琉はまだヒート来てないし」
「うわ、それ言っちゃうの最低だって知ってる?」
「相手が涼夏じゃなかったら言わない。
でもまあ、なんとなくそんなのって分かるよな、きっと」
「まあね、」
そもそも燈哉がオレにマーキングできる時点で分かりきったことだ。オレの両親のようなα同士のカップルは番関係を結ぶことができないため、抑制剤は一生手放せないと言っていたのを思い出す。両親は常に抑制剤を携帯しているし、そこの部分はオレにも徹底させている。
『ネックガードで頸は守れるけど貞操は守れないからね』
困ったようにそう言ったのは父だったのか、母だったのか。
「それで、番候補じゃなくなったら燈哉君、この学校に通えなくなるとか?」
「俺じゃないよ、羽琉」
「え、羽琉君の家の力で燈哉君が転校させられるとかじゃなくて?」
「それ、どこ情報?」
浬と忍に聞いた話、仲真の家が太いと言うことから想像したことを口にしてしまい苦笑いで誤魔化す。
「まあ、羽琉の家ならあり得るけどな。
羽琉のこと、溺愛してるし」
「そうなの?」
「だから番候補。
そもそも家が釣り合わない俺が羽琉と一緒にいられるのは羽琉が俺を選んだからだし」
そして話された幼稚舎からのこと。
戸外遊びの時にひとりで座る羽琉に話しかけたのがきっかけで、たまに居る小さな同級生が気になって見つける度に話しかけたこと。
『Ωだから仕方ない』
そう言って自分のやりたいことを我慢する羽琉に何かしてあげたいと、その姿を探すようになったこと。
クラスが違うし、そもそも休みがちだったせいで会えた時には隣を離れなかったこと。
「それって、【運命】とかなの?」
「違う、と思うけど自信はない。
………涼夏、ちょっと話す時間ある?
謝りたいこともあるし」
「え、何?」
「家まで送るからちゃんと話をさせて欲しい」
そう言われて戸惑うけれど、それを了承すると「とりあえず涼夏の最寄り駅まで行くか」と言われて同じ車両に乗せられる。普段はΩ専用車両だけど、燈哉が一緒なら問題はない。
「この辺でも話ができる場所はあるけど、目が多いから」
そんなふうに言うけれど、ふたりで電車に乗ることで多くの目を集めているのはいいのだろうかと心配になる。だけど話をしたいと思っていたのは俺も一緒だからと受け入れ、電車がつくまでの間は誰に聞かれても問題ないような話を繰り返す。
学校のこと、テストのこと、長期休みの過ごし方。
今までの自分の通っていた学校や、通う予定だった学校とは違う習慣に驚くことも多くあって不安になるけれど、慣れるしかない。こうやって燈哉に話を聞けるだけでもありがたいとポジティブに考えるしかないだろうと結論づけるしかなかった。
「で、謝りたいことって?」
燈哉と入ったのは駅前のファミレスで、夕方であっても平日なせいか客は少ない。とりあえずフリードリンクを頼んで話を始める。遅くなりそうなら食事を頼めば時間を引き延ばすこともできるだろう。両親には駅の近くのファミレスに友人といると連絡しておく。
「順を追って話して良いか?」
目の前に置いたコーヒーに砂糖とミルクを入れながら言った燈哉に「いいよ」と答え、ブラックじゃないんだと勝手にしていたイメージを壊された気になる。俺の目の前に置いてあるのはブラックコーヒーだ。
「そもそも涼夏に話しかけた理由だけど…フェロモンがな、羽琉と似てたんだよ」
言われている意味が分からなかったせいで返答に困ってしまう。
羽琉君とは近づいたことはないし、燈哉から香るフェロモンを気にした事がなかったからピンとこない。
「似てるって?」
「香りが似てて、………本当に最低だけど羽琉の存在を隠すのに使えないかって思ったんだ」
何度コーヒーをかき混ぜるんだろう、そう思うほどにクルクルと回されるスプーン。
「それで俺に声かけたの?」
「ごめん…」
正直、そういうことだったのかと妙に納得する。
あの時に見た羽琉君とオレは似ても似つかなかった。こういった言い方は語弊があるかもしれないけれど、見るからにΩらしいΩの羽琉君と、αに見えてしまうΩのオレ。はっきり言って、共通点と言えば男性Ωだということくらいだろう。
「で、香りが似てるからどうしたかったの?」
「だから、3人で過ごせば羽琉のフェロモンを隠せるんじゃないかって、」
「そこ、どういうことか説明」
そうして告げられた燈哉の最低な企み。
中等部の最終学年の頃から羽琉君のフェロモンが少しずつ、ほんの少しずつだけど感じることができるようになってきたこと。
番候補なのだからヒートが来た時には自分が一緒に過ごしたいと思っていたこと。
だけど、そうなる前に自分よりも強いαと羽琉君が知り合った場合は羽琉君に選択肢があること。
だから、他のαに羽琉君の変化を悟られないようカムフラージュしたかったこと。
正直なところ憤りはあった。
あったけれど、その気持ちが理解できてしまい憤りはあるものの激しく怒る気にはならない。それどころか、打算的に燈哉を受け入れようとした自分とどっちもどっちじゃないかと嗤いたくなる。
「本当はフェロモンの持ち主を探して、話をしたいと伝えて、協力をしてもらえるか打診しようと思ったんだ」
その言葉がどこまで本当かは分からないけれど、何も答えず話の続きを促す。
「だけど探してるうちになんとか自分のモノにしないとって、羽琉を守るために今すぐに囲わないとって妙に焦って」
「あ、それなんとなく分かる。
オレもあの時、このαの側にいれば守られるって、守ってもらいたい、守ってもらわないとって。
あれ、何なんだろうね、今こうやってふたりでいても全くそんなこと思わないのに」
「怒らないのか?」
「何だよソレ、とは思うよ。
だけど守るためなら何でも使いたいって気持ち、分かっちゃうから」
そう言って別れてしまったあの子を思い出す。大切にしたいから、守りたいから。だから、守ることのできる術があるのなら何を利用してでも囲い込んでしまいたい。
『僕の元カレ、Ωのくせにαのフリしてたんだ』
そう言ったあの子は見たことのない笑顔を見せていた。嘲るような…嗤い方。
オレがαであれば、Ωであっても守る術があればあの子はオレのことを見限ったりしなかったのだろうか。
「ごめん、そんなに傷付けたんだな」
困ったようにそう言われて自分が泣いていることに気づく。
「許してもらえるとは思わないけど、できることは何でもするから」
「あ、これ違う。
燈哉君のせいで泣いたわけじゃない」
焦って涙を拭けば訝しげな顔をする。
「オレ、αだと思ってたって言ったじゃない?だから気持ちは分からないでもないんだけど、ちょっと嫌なこと思い出して情けなくなっただけ。
って言うか、さっさと自分のフェロモン纏わせてヒート来たら番っちゃえばいいのに」
「そんな簡単な、」
「だって、付き合ってるんじゃないの?」
「番候補だけど付き合ってはないよ」
「………マジで?
え、でもかなり場慣れしてない??」
思わずそう言ってしまったオレに燈哉が渋い顔を見せる。
「番候補として守って欲しいとは言われてるけれど、交際の許可はもらってない」
「………え⁈」
間抜けな声を出したオレは、きっと悪くない。
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