上 下
128 / 164
後編

後手と先手 4

しおりを挟む
 そろそろトリスタンが動いている頃だ。
 彼も最終的な準備に取り掛かる必要がある。
 
 約4千人。
 
 カウフマンとローエルハイドの血を持つジェシーの成り損ないたち。
 その者らの命を奪う必要があった。
 自分のためとも言えるし、そうではないとも言える。
 だが、それが自分の「義務」であるのは確かだ。
 
 今夜にするか、明日にするか。
 
 トリスタンからの連絡を待ってからでも遅くはない。
 万が一にもカウフマンに逃げられるようなことがあれば、予定を変更しなければならないからだ。
 トリスタンに限って、そんなことはないと確信しているが、それはともかく。
 
「旦那様、これでアドラントは平和になりますね」
「そうでなければならない、と思っているよ。きみに危険な真似をさせたあげく、取り逃がしたなんてことにはできないさ、リビー」
 
 去年の暮れのことだった。
 大掃除の真っ只中、リビーから話があると言われている。
 2人だけで話がしたいとのことだった。
 
「それにしても、カウフマンは人を見る目がある」
「そうでしょうか? 見る目がなかったと、私には思えます」
「いや、きみの忠誠心を高く評価した結果だよ」
 
 リビーは、アシュリーに対する忠誠心が厚い。
 そこにカウフマンは目を付けたのだろう。
 彼がアシュリーを手放したことに、リビーが不満を持っていてもおかしくはないのだ。
 本邸の勤め人以外で、アシュリー自身がジョバンニを選んだと知っている者は、サマンサしかいない。
 
「とても上手くやってくれたね」
「商人たちが私たちの会話に耳をそばだてていることが、以前から気になっていました。ですから、ジョバンニにカウフマンの話を聞いて納得でしたね」
 
 リビーは、ジョバンニに商人の態度がおかしいと、相談をしていた。
 ジョバンニから、その報告を受け、カウフマンのことをリビーに話すようにと彼が指示した。
 屋敷の勤め人をカウフマンが取り込もうとしているとわかったからだ。
 
「少々、妙だとも思ってはいたのです」
「アシュリーを勤め人にしたことかい?」
「はい。勤め人であればジョバンニのそばにいられますし、常に誰かと一緒にいるのも不自然ではありません。それが安全だと、お考えになっておられたのですね」
 
 表向きは、次期侯爵夫人としての教育の一環としている。
 だが、実際は、リビーの言った通りだ。
 日々の生活の中、アシュリーが狙われないとも限らない。
 カウフマンの関心がサマンサに逸れていたとしても、偶然は起こり得る。
 彼は、その不確定要素を、極力、排除しておきたかったのだ。
 
「アシュリー様は一方的に婚約を解消され、望まない婚姻を押しつけられた上に、勤め人までさせられている。そのように、本邸の勤め人は、商人が来るたびに憤慨してみせていましたが、演技だと見抜かれはしなかったのが幸いでした」
「最も憤慨しているのが、きみ。アシュリー付きのメイド、リバテッサ・バロワ」
「商人に声をかけられた時には、さすがに緊張いたしました」
 
 今となっては、本邸の者もサマンサに敵意はない。
 人柄を知らないため好感を持つほどではないにしても「特別な客人」だった時ほど嫌悪感はいだいていなかった。
 ただ商人を欺くため、サマンサを けなしていたに過ぎない。
 その結果、カウフマン配下の商人が、彼の垂らした糸に食いついてきたのだ。
 
 その商人は、リビーに「アシュリーの立場がない」ことを吹き込んでいる。
 もちろん急にではなく、リビーの憤慨した様子に同調しながら、ゆっくりと、少しずつ、その心に踏み込んできたらしい。
 よりサマンサを憎むよう、よりアシュリーに対する庇護欲を煽るように。
 
「ゾッとしますね。あのような手口で周囲の者を操っていたのでしょうから」
「カウフマンは、確かに人の心を操るのが得意だ。だがねえ、リビー。彼には大きな欠点がある。とても大きな欠点だ」
 
 彼はイスに座り、リビーにもイスを勧めていた。
 向き合って座っているリビーの手には、ティーカップが握られている。
 これも、彼が出したものだ。
 
 あの夜も、こんなふうにして話をしている。
 彼は、一瞬、サマンサが嫉妬をしてくれたのではないかと喜んだのを思い出し、苦笑いを浮かべた。
 彼女は、彼が外聞の悪い噂を立てられることを気にかけていただけだったのに。
 
「カウフマンの欠点とは、なんでしょう?」
 
 彼は記憶を遮り、リビーとの会話に意識を戻す。
 最近は、いつもこんな調子だ。
 なにかにつけサマンサと結びつけて、記憶が呼び覚まされる。
 
「自分の手を汚さないことさ」
 
 昔は違っていたのだろうが、今のカウフマンは自らでは動かない。
 ほとんどの場合、人を使う。
 立場的に用心深くなるのは当然だとしても、弊害が生じるのだ。
 どんなに正確な報告であろうが、伝聞には違いない。
 そこには、わずかであれ、書いた者の主観が入り込む。
 
 小さなズレも蓄積され続ければ、元の正しさと離れたものに変わってしまう。
 カウフマンは、自らの「しゅ」を俯瞰してはいるかもしれない。
 ただし、咲き誇る花畑を「鑑賞」することはないのだ。
 雨が降り、葉に水滴を残したと知っていても、その大きさや数、形が、報告されたものと一致しているかどうかまでは関知していない。
 
(カウフマンは、人を人とも思わない割に、本人は人として生きている。そこがスタンとは違うところだな。彼は、本物の狂人だ)
 
 トリスタンは、常に膨大な資料に囲まれている。
 重要であるかどうかなどおかまいなしに、あの大きな机に資料は山積み。
 それは、トリスタンが、すべての資料に目を通し、精査しているからだ。
 
 配下には、見たまま、調べた結果のみを記載させている。
 情報に対する軽重の判断を、絶対に配下にはさせない。
 各々の情報を繋ぎ合わせ、関連づけ、意味を見出すのは、トリスタンただ1人。
 
 トリスタンの配下は、言わば、働き蟻と同じだ。
 獲物を見つけ、解体し、巣に運ぶだけ。
 それを配下たちも受け入れているのだから、狂人の集まりとしか思えない。
 だが、そうであるからこそ、トリスタンの正しさは維持できるのだ。
 
「リビー、奴の懐に潜り込めたのは、きみのおかげだよ」
「そのために、いくつか情報を渡さなければなりませんでしたし……サマンサ様を危ない目に合わせることになりました。褒められたことではありませんね」
「彼女の居場所をカウフマンに伝えるように言ったのは、私だ」
 
 彼は、できる準備は、すべて整えたと考えていた。
 だから、リビーをカウフマンのところに向かわせている。
 サマンサの居場所を知れば、カウフマンが動くのはわかっていたからだ。
 あとは「いつ動くのか」を見定めるだけだった。
 
 それも、レジーに指輪を渡したことで判断できるようにしている。
 サマンサを囮としながらも、彼女を危険にさらす気はなかった。
 テスアの国王を利用するという、ある種の禁じ手まで講じていた。
 彼は、サマンサから危険を取り除くための策を作り上げていたのだ。
 
 長引けば不利になるし、サマンサの心の負担も大きくなる。
 彼は、サマンサの安全を確保できる状態だと思い、リビーに指示をした。
 サマンサを守りきる自信があったからだ。
 
 あの時までは。
 
 本当に、ぎりぎりだった。
 ラスの抜刀が一瞬でも遅れていたら、サマンサは死んでいた。
 彼は、自分の傲慢さと無力さを、またしても思い知らされている。
 
「とにかく、きみはよくやってくれた。これからもアシュリーとジョバンニを頼むよ。カウフマンの脅威はなくなっても、なにがあるかわからないからね」
「アシュリー様のことはお支えいたしますが、ジョバンニのことは知りません。旦那様は彼に甘過ぎるのではないでしょうか?」
「だから、きみに躾けてもらいたいのさ」
 
 嫌そうな顔のリビーに、彼は微笑んでみせる。
 ジョバンニは、あれでなかなかに成長しているのだ。
 気に入らない内容ではあったが、先日は、彼に「物申して」きた。
 そのうち彼の指示がなくても、采配できるようになるに違いない。
 
「アシュリー様のお幸せのためならば、いたしかたありません」
「容赦しろとは言わないよ」
「もとより、するつもりはございません」
 
 リビーは、バロワ男爵家の四女だった。
 14歳の頃から男爵家を離れ、王都の街で働くつもりだったのだ。
 だが、両親に愛妾として貴族屋敷に連れて行かれそうになり、逃げ出している。
 そこを、偶然に出会って、彼が拾った。
 
 しっかりしていて、アシュリーの付のメイドに良いと思えたのだ。
 貴族の嫌な面も知っており、きっとアシュリーの境遇も理解する。
 歳が近いこともあったので、アシュリーも友人感覚でつきあえるだろう。
 そう考えてのことだったのだが、想像以上に、アシュリーを想ってくれている。
 
「早く片付くといいですね」
「あと数日内には、すべて片付くさ」
「綺麗に片が付くまで気を抜かず、アシュリー様をお守りいたします」
 
 頭を下げ、リビーが出て行った。
 アドラントの街でアシュリーがさらわれたことに、未だ自責の念があるらしい。
 今回、危険を承知でカウフマンの懐に飛び込んだのも、その思いがあったからではないかと思う。
 
 アシュリーを攫ったのはハインリヒだが、操っていたのはカウフマンだ。
 だから、リビー自身、カウフマンがいなくならなければ安心はできない。
 2度とアシュリーが攫われるような事態を起こしたくないという強い気持ちが、リビーに危険を冒させた。
 実際、殺される可能性は高かったのだから。
 
(リビーの無茶を止めなかったのは……結局、私は、サミーさえ守れればいいと考えていたからだ。ほかの誰を犠牲にしても……)
 
 人ならざる者は、たった1人の愛する者のために存在する。
 
 彼の世界には、サマンサしかいない。
 サマンサが遠くに行ってしまっても、だ。
 ジョバンニに言われた「彼女の望まないこと」は、的を射ているかもしれない。
 それでも、遠くから見守ることくらいはさせてもらうつもりでいた。
 
「せいぜい見つからないようにしなければな。また彼女を怒らせ……」
 
 バァーンッ!!
 
 彼の私室には、基本的に鍵はかけていない。
 そのため誰でも簡単に扉を開くことはできるのだけれども。
 
「いったい、どういうことなのっ?!」
 
 訊きたいのは、彼のほうだ。
 怒りに満ちた薄緑色の瞳が、彼をにらんでいる。
 彼らしくもなく、茫然としながら、思った。
 
(きみを怒らせる才能を、私は、いつ発揮したのだろうね……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

式前日に浮気現場を目撃してしまったので花嫁を交代したいと思います

おこめ
恋愛
式前日に一目だけでも婚約者に会いたいとやってきた邸で、婚約者のオリオンが浮気している現場を目撃してしまったキャス。 しかも浮気相手は従姉妹で幼馴染のミリーだった。 あんな男と結婚なんて嫌! よし花嫁を替えてやろう!というお話です。 オリオンはただのクズキモ男です。 ハッピーエンド。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

10万円分の食料を購入しましたが、冷蔵庫はそれらの食料でいっぱいになりましたが、食費を悔い連ねて、ビールなどの酒類の方が腹を制するために、い

すずりはさくらの本棚
現代文学
10万円分の食料を購入しましたが、冷蔵庫はそれらの食料でいっぱいになりましたが、食費を悔い連ねて、ビールなどの酒類の方が腹を制するために、いっこうに食料は減らない。 10万円分の食料を購入されたのですね。冷蔵庫がいっぱいになるほどの量、大変だったことと思います。しかし、食費を悔やみながらも、酒類の方に手が伸びてしまい、食料が減らない状況とのこと、お気持ちお察しいたします。 この状況について、いくつか考えられる原因と、改善策を提案させてください。 **考えられる原因** * **ストレスや感情的な要因:** ストレスを感じている時や、何か感情的な出来事があった時、人はつい食べ過ぎたり、お酒を飲んだりしがちです。 * **習慣:** 以前から、食事よりもお酒を優先する習慣がついている可能性があります。 * **食料の選び方:** 長期保存できる加工食品ばかりを選んでしまい、飽きてしまいやすくなっている可能性があります。 * **環境:** 冷蔵庫の中身が全て見える状態になっていると、ついつい手が伸びてしまうかもしれません。 **改善策** * **食生活を見直す:** * **バランスの取れた食事:** 三食バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素を摂取するようにしましょう。 * **間食の管理:** 間食は、ヘルシーなものを選び、食べる量を意識しましょう。 * **水分補給:** お酒の代わりに、水をこまめに飲むようにしましょう。 * **環境を変える:** * **冷蔵庫の整理:** 冷蔵庫の中身を整理し、見やすい状態にすることで、無駄な買い物を防ぎ、必要なものだけを取り出すようにしましょう。 * **見える場所に果物:** 冷蔵庫の見える場所に、リンゴやバナナなどの果物を置いておくと、自然と手が伸びやすくなります。 * **心の状態に目を向ける:** * **ストレス解消:** ヨガや瞑想など、自分に合ったストレス解消法を見つけてみましょう。 * **相談:** どうしても一人で抱えきれない場合は、信頼できる人に相談したり、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。 **その他** * **食品ロス:** 食料が無駄にならないよう、消費期限を守り、計画的に消費するようにしましょう。 * **食費の管理:** 食費の予算を決めて、その範囲内で買い物をするようにしましょう。 **まとめ** 食生活の改善は、一朝一夕にできるものではありません。まずは、ご自身の状況を客観的に見て、何が問題なのかを把握することが大切です。そして、小さなことから少しずつ改善していくことで、より良い食生活を送ることができるでしょう。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

柴野
恋愛
「シャルロット・アンディース公爵令嬢!!! 今ここでお前との婚約を破棄するッ!」  ある日のこと、学園の新入生歓迎パーティーで婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロット。でも……。 「私はあなたの婚約者じゃありませんよ? どなたかとお間違いなのでは? ――そこにいる女性があなたの婚約者だと思うのですが」 「え!?」 ※ざまぁ100%です。 ※小説家になろう、カクヨムに重複投稿しています。

処理中です...