126 / 164
後編
後手と先手 2
しおりを挟む
カウフマンはジェシーと連絡が取れなくなっている。
ジェシーにつけていた配下も、ほとんどの者が消されていた。
なんとか事と次第をカウフマンに伝えようとした者も死んでいる。
直接、話を聞けてはいなかった。
知り得た情報は少ない。
森には、かなりの騎士が来ていたようだ。
リバテッサ・バロワから聞いていた場所は、シャートレーの飛び領地だった。
当然、シャートレーの騎士に違いない。
だが、通常、飛び領地は、少数の領民以外は住んでいないのだ。
領主が治めているような領地とは違い、放置されている。
「男と一緒にいると報告はあったが……シャートレーの次男であったか」
次男が旅に出ているのは、カウフマンとて知っていた。
ただ、以前、別の辺境地にいるとの報告を受けていたため、その男と同一人物だとは思わなかったのだ。
辺境地には流れ者が住み着くことも多い。
そして、その男は「魔力持ち」だと、魔術師から連絡があった。
それが、カウフマンに、よけいな「納得」をさせている。
まさか「魔術騎士」だとは、考えもしなかったのだ。
現在、ロズウェルドには、正式な魔術騎士はいない。
逆に「半端者」であるほうが、納得し易かった。
魔術師は、国王から魔力を与えられ、魔術師となる。
そのため、魔術師は、基本的には王宮に属していた。
だが、例外がある。
王宮魔術師たちが揶揄をこめて「半端者」と呼ぶ者たちだ。
彼らは、王宮を極端に忌避している。
そのくせ、なぜか魔力を維持できてしまう。
王宮に「魔術師」として認められていないのに、魔力を持つ者。
ゆえに「半端者」なのだ。
半端者は異端であり、王宮魔術師に見つかれば捕らえられる。
そのため、たいていは身を隠して生活をしていた。
飛び領地の辺境地に隠れ住んでいても、少しも不思議ではない。
結果、魔術騎士などという稀な存在よりも、可能性として高い、半端者であるとカウフマンは結論づけたのだ。
「やはり己の目で確かめねば、足元をすくわれるものよな」
森にいたのはシャートレーの騎士だった。
王宮魔術師まで動員されれば、分が悪いのは必然だ。
シャートレーに雇われている魔術師程度では、点門を使えるはずがない。
いきなり現れたとの話からすれば、騎士たちはカウフマンの配下が動いてから、その場に来た。
騎士は転移が使えない。
雇われ魔術師の転移に便乗などすれば、魔力影響で意識を失うなりして使いものにはならなかっただろう。
となれば、点門を使ったとしか考えようがなかった。
「シャートレーなら有り得る。王族まで動かしたか」
ふ…と、小さく息をつく。
それでも勝算はあったのだ。
ジェシーであれば、騎士だろうが国王付の魔術師だろうが、簡単に始末できた。
何千人いようが関係ない。
味方を犠牲にすることさえ、ジェシーは躊躇わなかったはずだ。
とことん分が悪いと判断すれば、逃げもしただろう。
だが、報告に、ジェシーの「最期」はなかった。
逃げたのか、捕らえられたのか。
「あの子が殺されるとは思えん」
とはいえ、連絡がないのも現実なのだ。
生きていることを前提に考えれば、連絡が取れない状況だということになる。
相当な傷を負っているか、もしくは捕らえられて魔術を封じられているか。
いずれにしても、ジェシーが動けない事態なのは間違いない。
「ローエルハイドめ……いつも我らの邪魔ばかりする」
ローエルハイドが動くのを見越して、ジェシーを送り込んだ。
それを間違いだったとは思っていない。
ただ想定していた以上のことが起きている。
「……奴1人ではなかったのか……いや、しかし……」
カウフマンの「歴史」にはないが、そう思わざるを得なかった。
最初の「ローエルハイド」が現れてから、百年近くになる。
大公、その子、孫の代まで、カウフマンは知っていた。
ローエルハイドは、常に1人で動く。
対等になれる者などいないからだ。
もし対等になれる者がいるとすれば、それはジェシーだけだった。
だから、今回も1人で動くと、カウフマンは見込んでいる。
ティンザーの娘のため、ローエルハイドが「1人」で出て来ると想定した。
シャートレーの騎士たちが想定外だったとしても、それは問題にはならない。
問題なのは、ジェシーが深手を負ったらしいことだ。
ローエルハイド1人なら、そんなことにはなっていなかった。
「ローエルハイドが人の手を借りる……そのようなことは前例がない……」
だが、きっと「そう」なのだ。
誰だかはわからないが、信頼し得る「誰か」がいた。
そして、その相手に「たった1人の愛する者」を委ねた。
信じられないことだが、納得はできる。
「まぁ、よい。これを前例にするとしよう」
失敗は失敗として認めざるを得ない。
カウフマンは、いっときのことに固執しないのだ。
常に先を見据えている。
今回の失敗も、血の歴史に刻む、ひとつの「事例」に過ぎない。
カウフマンは、この先も「種」を蒔き続ける。
どんな土壌からも新しく芽吹く種なのだ。
たったひとつの「種」さえ残れば、どうにでもなる。
いずれローエルハイドを駆逐する日も来るに違いない。
「ここも引きはらわねばならんな」
ジェシーからの連絡を待っていたが、これ以上は待てなかった。
時間は刻々と過ぎている。
そろそろ自ら動かなければならない。
「ジェシー……私の宝……もう1度、会っておきたかった」
じぃちゃん。
そう呼ぶ声が聞きたかった。
愛されていないことも、ジェシーがカウフマンになんの感情もいだいていないこともわかっている。
それでも、カウフマンにとって、ジェシーは「宝」だった。
両親を取り上げ、カウフマン自身の手で育ててきたのだ。
甘えてくる姿を思い出す。
そこに、まったく意味がなかったとしても、愛しく思わなくもなかった。
ほかの、どんな血筋の子らとも異なっていたのだ。
こんこん。
鉄の扉が叩かれる。
カウフマンは短く返事をした。
ジェシーでないのはわかっている。
たとえ魔術が使えなくても、ジェシーなら勝手に入って来るからだ。
「なるほどなるほど。これは、なかなかに見事な隠れ家ですねえ」
赤毛に、銀色を暗くしたような瞳の男が入って来た。
室内にはカウフマン1人。
外に配下はいたのだが、声は聞こえない。
そもそも、その男が入って来られたということは、配下は全滅している。
「お前がローエルハイドの手足になっておった者か」
「私は誰の手足にもなりませんよ。私の手足になる者は多いですがね」
フレデリック・ラペルが見つからなかった理由を、カウフマンは理解した。
この男が匿っていたに違いない。
なにしろ、カウフマンは、この男を知らないのだ。
見たこともなかった。
ロズウェルドにいながら、カウフマンに知られずに生きてきた男。
そして、ひっそりと背後に忍び寄り、気づかれることなく、ここまで辿り着けた男でもある。
おそらく、この男の「手足」は、カウフマンと同等に長く、多い。
「どうやって、ここを知った?」
「刻印の術、ご存知でしょう? 私は、少々、それに造詣が深いのですよ」
「だが、あれは塗料を使わねばならん」
「おやおや。カウフマンともあろう者が、情報が古過ぎるのではないですか?」
刻印の術は、魔術に似たことはできるが、特殊な塗料を使う術だ。
主に魔力暴走した、今でいう「半端者」たちを隔離するために使っていた。
当時は、魔力や魔術に対する知識がなかったため、狂人として扱われたのだ。
その隔離施設のひとつが、レスター・フェノインの閉じ込められていたエッテルハイムの城だった。
ジェシーが産まれる偶然を呼び起こした地でもある。
「廃れた術の中にも優れたものはあります。活用の方法を見つければ、より強靭な武器にも成り得る。にもかかわらず、長く手つかずでいたのですから呆れますよ」
「お前は新しいすべを手に入れたのであろうな」
男が黒縁眼鏡を片手で押し上げた。
自慢げな表情が鼻につく。
慇懃無礼な態度と言い、不愉快な男だった。
男が、ローエルハイドの手足ではないと言ったことは本当だろう。
ローエルハイドが、このような者を「手足」とするわけがない。
配下にできるのなら、心強い。
だが、誰かの「配下」になるような者ではないと感じる。
この男は、レスターにも似た狂人だ。
自らの興味と好奇心を満たすためなら、なんでもやる。
そういう類の者だと直観していた。
「本来、刻印の術は魔力を封じるのが目的とされていました。ですが、考えてもみてください。魔力を封じられるということは、その逆も然り。すなわち、魔力を活用できるのです。魔力の活用、その最たるものは、どのようなものでしょう?」
「………………魔力……感知か……」
男が、嬉々とした顔で拍手をする。
手袋をはめているため、ぽんぽんという間の抜けた音がした。
「そこの扉に、ほんのわずかな刻印がつけられています。これも私が開発したのですが、とても便利ですよ。指先に塗っておきましてね。その指で、ぺたりと」
カウフマンの頭に、ひとつの名が浮かぶ。
リバテッサ・バロワ、アシュリー付きのメイドだ。
操っているつもりで、こちらが操られていたのだと気づく。
無から虚を作っても、偽りにしかならない。
だが、リバテッサ・バロワの忠誠心は本物だった。
そのせいで見抜けなかったのだ。
「これは失礼、名乗るのを忘れていましたね」
カウフマンは、自分が囚われの身になったことを知る。
ここをつきとめた方法をぺらぺら話したのは、カウフマンが「誰にも話せない」と分かっているからだ。
男は口の端を吊り上げ、自らの名を告げた。
「私の名は、トリスタン・リドレイ。今後、長いお付き合いになることでしょう」
ジェシーにつけていた配下も、ほとんどの者が消されていた。
なんとか事と次第をカウフマンに伝えようとした者も死んでいる。
直接、話を聞けてはいなかった。
知り得た情報は少ない。
森には、かなりの騎士が来ていたようだ。
リバテッサ・バロワから聞いていた場所は、シャートレーの飛び領地だった。
当然、シャートレーの騎士に違いない。
だが、通常、飛び領地は、少数の領民以外は住んでいないのだ。
領主が治めているような領地とは違い、放置されている。
「男と一緒にいると報告はあったが……シャートレーの次男であったか」
次男が旅に出ているのは、カウフマンとて知っていた。
ただ、以前、別の辺境地にいるとの報告を受けていたため、その男と同一人物だとは思わなかったのだ。
辺境地には流れ者が住み着くことも多い。
そして、その男は「魔力持ち」だと、魔術師から連絡があった。
それが、カウフマンに、よけいな「納得」をさせている。
まさか「魔術騎士」だとは、考えもしなかったのだ。
現在、ロズウェルドには、正式な魔術騎士はいない。
逆に「半端者」であるほうが、納得し易かった。
魔術師は、国王から魔力を与えられ、魔術師となる。
そのため、魔術師は、基本的には王宮に属していた。
だが、例外がある。
王宮魔術師たちが揶揄をこめて「半端者」と呼ぶ者たちだ。
彼らは、王宮を極端に忌避している。
そのくせ、なぜか魔力を維持できてしまう。
王宮に「魔術師」として認められていないのに、魔力を持つ者。
ゆえに「半端者」なのだ。
半端者は異端であり、王宮魔術師に見つかれば捕らえられる。
そのため、たいていは身を隠して生活をしていた。
飛び領地の辺境地に隠れ住んでいても、少しも不思議ではない。
結果、魔術騎士などという稀な存在よりも、可能性として高い、半端者であるとカウフマンは結論づけたのだ。
「やはり己の目で確かめねば、足元をすくわれるものよな」
森にいたのはシャートレーの騎士だった。
王宮魔術師まで動員されれば、分が悪いのは必然だ。
シャートレーに雇われている魔術師程度では、点門を使えるはずがない。
いきなり現れたとの話からすれば、騎士たちはカウフマンの配下が動いてから、その場に来た。
騎士は転移が使えない。
雇われ魔術師の転移に便乗などすれば、魔力影響で意識を失うなりして使いものにはならなかっただろう。
となれば、点門を使ったとしか考えようがなかった。
「シャートレーなら有り得る。王族まで動かしたか」
ふ…と、小さく息をつく。
それでも勝算はあったのだ。
ジェシーであれば、騎士だろうが国王付の魔術師だろうが、簡単に始末できた。
何千人いようが関係ない。
味方を犠牲にすることさえ、ジェシーは躊躇わなかったはずだ。
とことん分が悪いと判断すれば、逃げもしただろう。
だが、報告に、ジェシーの「最期」はなかった。
逃げたのか、捕らえられたのか。
「あの子が殺されるとは思えん」
とはいえ、連絡がないのも現実なのだ。
生きていることを前提に考えれば、連絡が取れない状況だということになる。
相当な傷を負っているか、もしくは捕らえられて魔術を封じられているか。
いずれにしても、ジェシーが動けない事態なのは間違いない。
「ローエルハイドめ……いつも我らの邪魔ばかりする」
ローエルハイドが動くのを見越して、ジェシーを送り込んだ。
それを間違いだったとは思っていない。
ただ想定していた以上のことが起きている。
「……奴1人ではなかったのか……いや、しかし……」
カウフマンの「歴史」にはないが、そう思わざるを得なかった。
最初の「ローエルハイド」が現れてから、百年近くになる。
大公、その子、孫の代まで、カウフマンは知っていた。
ローエルハイドは、常に1人で動く。
対等になれる者などいないからだ。
もし対等になれる者がいるとすれば、それはジェシーだけだった。
だから、今回も1人で動くと、カウフマンは見込んでいる。
ティンザーの娘のため、ローエルハイドが「1人」で出て来ると想定した。
シャートレーの騎士たちが想定外だったとしても、それは問題にはならない。
問題なのは、ジェシーが深手を負ったらしいことだ。
ローエルハイド1人なら、そんなことにはなっていなかった。
「ローエルハイドが人の手を借りる……そのようなことは前例がない……」
だが、きっと「そう」なのだ。
誰だかはわからないが、信頼し得る「誰か」がいた。
そして、その相手に「たった1人の愛する者」を委ねた。
信じられないことだが、納得はできる。
「まぁ、よい。これを前例にするとしよう」
失敗は失敗として認めざるを得ない。
カウフマンは、いっときのことに固執しないのだ。
常に先を見据えている。
今回の失敗も、血の歴史に刻む、ひとつの「事例」に過ぎない。
カウフマンは、この先も「種」を蒔き続ける。
どんな土壌からも新しく芽吹く種なのだ。
たったひとつの「種」さえ残れば、どうにでもなる。
いずれローエルハイドを駆逐する日も来るに違いない。
「ここも引きはらわねばならんな」
ジェシーからの連絡を待っていたが、これ以上は待てなかった。
時間は刻々と過ぎている。
そろそろ自ら動かなければならない。
「ジェシー……私の宝……もう1度、会っておきたかった」
じぃちゃん。
そう呼ぶ声が聞きたかった。
愛されていないことも、ジェシーがカウフマンになんの感情もいだいていないこともわかっている。
それでも、カウフマンにとって、ジェシーは「宝」だった。
両親を取り上げ、カウフマン自身の手で育ててきたのだ。
甘えてくる姿を思い出す。
そこに、まったく意味がなかったとしても、愛しく思わなくもなかった。
ほかの、どんな血筋の子らとも異なっていたのだ。
こんこん。
鉄の扉が叩かれる。
カウフマンは短く返事をした。
ジェシーでないのはわかっている。
たとえ魔術が使えなくても、ジェシーなら勝手に入って来るからだ。
「なるほどなるほど。これは、なかなかに見事な隠れ家ですねえ」
赤毛に、銀色を暗くしたような瞳の男が入って来た。
室内にはカウフマン1人。
外に配下はいたのだが、声は聞こえない。
そもそも、その男が入って来られたということは、配下は全滅している。
「お前がローエルハイドの手足になっておった者か」
「私は誰の手足にもなりませんよ。私の手足になる者は多いですがね」
フレデリック・ラペルが見つからなかった理由を、カウフマンは理解した。
この男が匿っていたに違いない。
なにしろ、カウフマンは、この男を知らないのだ。
見たこともなかった。
ロズウェルドにいながら、カウフマンに知られずに生きてきた男。
そして、ひっそりと背後に忍び寄り、気づかれることなく、ここまで辿り着けた男でもある。
おそらく、この男の「手足」は、カウフマンと同等に長く、多い。
「どうやって、ここを知った?」
「刻印の術、ご存知でしょう? 私は、少々、それに造詣が深いのですよ」
「だが、あれは塗料を使わねばならん」
「おやおや。カウフマンともあろう者が、情報が古過ぎるのではないですか?」
刻印の術は、魔術に似たことはできるが、特殊な塗料を使う術だ。
主に魔力暴走した、今でいう「半端者」たちを隔離するために使っていた。
当時は、魔力や魔術に対する知識がなかったため、狂人として扱われたのだ。
その隔離施設のひとつが、レスター・フェノインの閉じ込められていたエッテルハイムの城だった。
ジェシーが産まれる偶然を呼び起こした地でもある。
「廃れた術の中にも優れたものはあります。活用の方法を見つければ、より強靭な武器にも成り得る。にもかかわらず、長く手つかずでいたのですから呆れますよ」
「お前は新しいすべを手に入れたのであろうな」
男が黒縁眼鏡を片手で押し上げた。
自慢げな表情が鼻につく。
慇懃無礼な態度と言い、不愉快な男だった。
男が、ローエルハイドの手足ではないと言ったことは本当だろう。
ローエルハイドが、このような者を「手足」とするわけがない。
配下にできるのなら、心強い。
だが、誰かの「配下」になるような者ではないと感じる。
この男は、レスターにも似た狂人だ。
自らの興味と好奇心を満たすためなら、なんでもやる。
そういう類の者だと直観していた。
「本来、刻印の術は魔力を封じるのが目的とされていました。ですが、考えてもみてください。魔力を封じられるということは、その逆も然り。すなわち、魔力を活用できるのです。魔力の活用、その最たるものは、どのようなものでしょう?」
「………………魔力……感知か……」
男が、嬉々とした顔で拍手をする。
手袋をはめているため、ぽんぽんという間の抜けた音がした。
「そこの扉に、ほんのわずかな刻印がつけられています。これも私が開発したのですが、とても便利ですよ。指先に塗っておきましてね。その指で、ぺたりと」
カウフマンの頭に、ひとつの名が浮かぶ。
リバテッサ・バロワ、アシュリー付きのメイドだ。
操っているつもりで、こちらが操られていたのだと気づく。
無から虚を作っても、偽りにしかならない。
だが、リバテッサ・バロワの忠誠心は本物だった。
そのせいで見抜けなかったのだ。
「これは失礼、名乗るのを忘れていましたね」
カウフマンは、自分が囚われの身になったことを知る。
ここをつきとめた方法をぺらぺら話したのは、カウフマンが「誰にも話せない」と分かっているからだ。
男は口の端を吊り上げ、自らの名を告げた。
「私の名は、トリスタン・リドレイ。今後、長いお付き合いになることでしょう」
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる