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前編
悩むより進むこと 3
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予想しても意味はないが、想定していたよりも、上手く事は進んでいる。
ティンザーは、頑なに昔気質のロズウェルド商人を使っているため、情報が取りにくい。
だが、アドルーリットやラウズワースは、ほとんどカウフマンの手の内だ。
いくらでも情報を仕入れられるし、手間なく与えるべき情報を伝えられる。
「落ちた木の実に驚いて兎が走り、走った兎が蹴散らした石粒が馬車馬を驚かせ、馬が駆け出し車軸が壊れ、放り出された馬車が木にぶつかり、乗っていた者が命を落とす。偶然というのは、そのようなものだ」
「でも、木の実を落としたのは、じぃちゃんじゃんか」
ジェシーが立って、カウフマンを見つめていた。
両腕を頭の後ろで組み、足を軽く交差させている。
「公爵とティンザーの娘の婚約が気に入らんようだな」
カウフマンは、さらりと言った。
情報の出どころは、アドルーリットだ。
マクシミリアンが妹のマチルダに「恥をかかされた」と激昂していたらしい。
とはいえ、その2人は、カウフマンが動かしたのではなかった。
カウフマンが取った行動はひとつ。
ラウズワース公爵夫人の信頼を得ている宝石商に、軽く耳打ちをさせている。
子息が公爵から愛妾を奪ったら、さぞ気分がいいだろうと。
そのあとの、それぞれの者の動きは、カウフマンもあずかり知らない。
ジェシーの言うように「木の実」を落としたに過ぎないからだ。
母親に追い立てられたからなのか、自らの意思なのかはともかく、ティモシー・ラウズワースは、ティンザーの娘を取り返そうとし、失敗している。
(己が気に入りの女が傷つく様に感情は揺さぶられたか? ジェレミア・ローエルハイド。する必要もない婚約をするほど、入れ込んでおるのだろう?)
どうやらマクシミリアンが、ティンザーを脅したらしいが、それも失敗。
どちらにも、公爵が関与していた。
その結果として「婚約」の話が持ち上がっている。
公爵が冷静であれば、もっと違った対処をしていたはずだ。
ローエルハイドの当主として、ティンザーを守ることも、マクシミリアンを追いはらうことも容易にできる。
が、公爵はティンザーの娘に執着するあまり、正しさを見誤っていた。
「だって、婚姻されたら困るんだろ?」
「こちらも、それなりに急がねばならんが、そうせっかちになることはなかろう。もっと、あれの頭の中を、ティンザーの娘のことでいっぱいにしてやらねばな」
「早目に始末しないの?」
「ジェシー、ティンザーの娘の使い途は決まっておるのだ」
自分が直接に手を下さずとも、人の心は操れる。
長年、カウフマンはそうやって、人を思い通りにしてきた。
公爵は筋書きを作り、そこに相手を誘導する。
だが、カウフマンは、無理に筋書きを作らない。
人を操ることで、筋書きが勝手にできるからだ。
そのほうが、自由度が高い。
人はなにをしでかすかわからないし、予測のできないこともある。
ティンザーの娘がローエルハイドに駆け込んだのも、思いがけないことだった。
予定は覆され、その道は行き止まりになったが、ならば、別の道を進めばいい。
状況や環境、とくに人の感情は、偶然を生み易いものだ。
都度、対処し、動かすべき者を動かして、欲しい結果を得る。
それが、カウフマンのやりかただった。
偶然は取り除くことができず、いつ引くかもわからないカード。
最初の偶然は、カウフマンの不利に働いている。
今は、公爵にとって不利に働いていたが、それにはまだ気づかれていない。
その「木の実」を落としたのがカウフマンだということも。
「その前に、あっちが先に動くかもしんねーじゃん」
「かもしれんな。ティンザーの娘を守ろうと、あれは事を急ぐ」
「皆殺しにされちゃうんじゃねーの?」
「できるものなら、そうしたいだろうが、ばら撒かれた我らの血を探すには時間がかかり過ぎよう。かと言って、商人を皆殺しにはできんさ」
ジェシーが両腕はそのままに、首を横に傾ける。
なにか気になっていることがあるらしい。
今日は、カウフマンに甘える仕草を見せずにいた。
カウフマンは、緩く微笑む。
「私が殺されると思っておるのか?」
ジェシーには、カウフマンの死に動揺しないよう教育してきている。
目の前で人質に取られても、平気で見捨てるはずだ。
そのように、育てた。
「じぃちゃんが死ぬってのは、わかってる。けどサ、オレにはわかんねーことも、まだたくさんあるだろ? あんまり早死にされると、オレが困るんだよ」
ジェシーの潔い言葉を、カウフマンは寂しいとは感じない。
どれほど甘えていても、ジェシーはカウフマンを糧にする。
木を育てるための水であり、肥料なのだ。
そうした判断のできるジェシーは、やはりカウフマンの宝だった。
「必要なことは学んだろう。ジェシー、1番、大事にせねばならんのはなんだ?」
「オレが死なないこと」
「そうだ。どんなしくじりを冒しても、かまわん。逃げ隠れしてでも、誰を犠牲にしてでも、お前は生きねばならんのだ」
ジェシーの血を絶やすことはできない。
ほかの者とは比較にならないくらい貴重だからだ。
ジェシーには、さらなる血脈の根を伸ばさせる。
そのために、カウフマンと同じか、それ以上に子を成す必要があった。
(だが……ジェシーには、なかなか子ができん……血の濃さゆえであろうか)
14歳になった時から、より良い血を持つ女をあてがっている。
にもかかわらず、2年経った今でも、ジェシーに子はできていない。
少し方向性を変える必要があるかもしれないと思った。
これだけは、カウフマンの寿命が尽きる前に成し遂げなければならないのだ。
曾孫の顔を見てから死にたい、などという感傷的な理由からではなく。
「ひとつ、わかんねーコトがあるんだけどサ」
カウフマンの死以上に、気になっているらしい。
ブルーグレイの瞳が、いつになく揺れていた。
ジェシーには「人並み」の感情など、ほとんどないに等しいのに。
「なんで、オレを、こーしゃくサマに会わせたんだよ?」
半月以上前になるだろうか。
公爵がカウフマンを訪ねたことがある。
その時、公爵に促され、カウフマンはジェシーを呼んだ。
会わせる必要はなかったと言えば、そうかもしれない。
「1度は、顔を合わせておいても損はなかろう?」
「そんだけ?」
「私の宝を自慢したかったのだよ、ジェシー」
カウフマンの一族に煮え湯を飲ませてきた、ローエルハイド。
その現当主が、どういう反応を示すか見たかった。
ジェシーの姿は、ジェレミア・ローエルハイドの祖父に似ている。
ブルーグレイの髪も瞳も、仕草も口調も、そっくりなのだ。
若かりし頃、カウフマンは、その人物に、何度か会っている。
商人として、アドラントのローエルハイドの屋敷に入り込み、直々に、その目で確かめていた。
「あれは、驚いておったろうな」
「でも、そのせいで、オレに、あっちの血が混じってるのもバレたじゃん」
ジェシーが腕をほどき、自らの髪を、くしゅっとかき回す。
カウフマンに呼ばれた時に、髪と目の色を変えておけば良かったと思っているのかもしれない。
だが、それでは「自慢」にならない。
「なにも変わりやせんよ。お前の能力が下がるわけではないのでな」
「まぁね、わかってんだけどね」
ようやくジェシーが、カウフマンに近づいてくる。
定位置とばかりに、膝に座ってきた。
その頭を撫でながら思う。
70年前、アドラントの併合により、多くの商人が、いったんは締め出された。
カウフマンの一族も例外ではない。
アドラントが国として存在していた頃の影響力は剥奪され、長年の苦労は水泡と帰している。
もう少しでアドラント王族を掌握できるところまできていたのに。
そこからだ。
ローエルハイドをなんとかしなければ自分たちの「芽」が摘まれると、対抗策を模索し続けてきた。
アドラントを、再び自らの影響下に置きつつ、着々と準備を進めている。
およそ50年の時を要した。
当時、カウフマンは14歳。
非常に重要な役割を任せられていた。
それが、成し得られるかどうかで、次代の「カウフマン」として選ばれるというほどの役目だ。
カウフマンは、ジェシーを見つめつつ、その目を細める。
かつての友人を思い出していた。
もちろん、本当の意味での「友人」ではなく、なるべくしてなったのだけれど。
(チェット……きみは私に宝をもたらした。手は焼かされたが、その甲斐はあったと言えような)
ガルベリー13世こと、チェスディート・ガルベリー。
現国王の、一世代前の国王だ。
チェスディートは自由気ままな性格をしており、12歳の時に家出をしたきり、譲位がなされるまで王宮には戻らなかった。
そんなチェスディートに、カウフマンは近づいたのだ。
もちろんチェスディートは、カウフマンの本性は知らず、ただの商人の息子だと思っていた。
年頃になったチェスディートに、次々と女を紹介したのもカウフマンだ。
だが、チェスディートは知らずにいた。
認知していない自らの子が何人もいた、ということを。
カウフマンが、効果のない「避妊薬」を渡していたからだ。
当然、女にも言い含めてあり、場合によっては金銭で子を取引したこともある。
そのチェスディートの母こそが、大公の娘シンシアティニー・ローエルハイド。
カウフマンは、チェスディートを通じてローエルハイドの血を手に入れたのだ。
そこからは、アドラントの契約婚を利用し、ひたすら血の交わりを重ねている。
本国で行わなかったのは、目立ち過ぎるからだった。
貴族よりも平民のほうが、目立たず「交配」ができる。
立場や身分などおかまいなしなのだから。
「なぁ、じぃちゃん」
「どうした?」
「オレ……スゲー退屈なんだケド!」
むぎゅっと抱き着いてくる姿に、カウフマンは薄く笑った。
ジェシーの出番は、遠からずやってくる。
(そのために、もう1手を打っておくとしようか)
ティンザーは、頑なに昔気質のロズウェルド商人を使っているため、情報が取りにくい。
だが、アドルーリットやラウズワースは、ほとんどカウフマンの手の内だ。
いくらでも情報を仕入れられるし、手間なく与えるべき情報を伝えられる。
「落ちた木の実に驚いて兎が走り、走った兎が蹴散らした石粒が馬車馬を驚かせ、馬が駆け出し車軸が壊れ、放り出された馬車が木にぶつかり、乗っていた者が命を落とす。偶然というのは、そのようなものだ」
「でも、木の実を落としたのは、じぃちゃんじゃんか」
ジェシーが立って、カウフマンを見つめていた。
両腕を頭の後ろで組み、足を軽く交差させている。
「公爵とティンザーの娘の婚約が気に入らんようだな」
カウフマンは、さらりと言った。
情報の出どころは、アドルーリットだ。
マクシミリアンが妹のマチルダに「恥をかかされた」と激昂していたらしい。
とはいえ、その2人は、カウフマンが動かしたのではなかった。
カウフマンが取った行動はひとつ。
ラウズワース公爵夫人の信頼を得ている宝石商に、軽く耳打ちをさせている。
子息が公爵から愛妾を奪ったら、さぞ気分がいいだろうと。
そのあとの、それぞれの者の動きは、カウフマンもあずかり知らない。
ジェシーの言うように「木の実」を落としたに過ぎないからだ。
母親に追い立てられたからなのか、自らの意思なのかはともかく、ティモシー・ラウズワースは、ティンザーの娘を取り返そうとし、失敗している。
(己が気に入りの女が傷つく様に感情は揺さぶられたか? ジェレミア・ローエルハイド。する必要もない婚約をするほど、入れ込んでおるのだろう?)
どうやらマクシミリアンが、ティンザーを脅したらしいが、それも失敗。
どちらにも、公爵が関与していた。
その結果として「婚約」の話が持ち上がっている。
公爵が冷静であれば、もっと違った対処をしていたはずだ。
ローエルハイドの当主として、ティンザーを守ることも、マクシミリアンを追いはらうことも容易にできる。
が、公爵はティンザーの娘に執着するあまり、正しさを見誤っていた。
「だって、婚姻されたら困るんだろ?」
「こちらも、それなりに急がねばならんが、そうせっかちになることはなかろう。もっと、あれの頭の中を、ティンザーの娘のことでいっぱいにしてやらねばな」
「早目に始末しないの?」
「ジェシー、ティンザーの娘の使い途は決まっておるのだ」
自分が直接に手を下さずとも、人の心は操れる。
長年、カウフマンはそうやって、人を思い通りにしてきた。
公爵は筋書きを作り、そこに相手を誘導する。
だが、カウフマンは、無理に筋書きを作らない。
人を操ることで、筋書きが勝手にできるからだ。
そのほうが、自由度が高い。
人はなにをしでかすかわからないし、予測のできないこともある。
ティンザーの娘がローエルハイドに駆け込んだのも、思いがけないことだった。
予定は覆され、その道は行き止まりになったが、ならば、別の道を進めばいい。
状況や環境、とくに人の感情は、偶然を生み易いものだ。
都度、対処し、動かすべき者を動かして、欲しい結果を得る。
それが、カウフマンのやりかただった。
偶然は取り除くことができず、いつ引くかもわからないカード。
最初の偶然は、カウフマンの不利に働いている。
今は、公爵にとって不利に働いていたが、それにはまだ気づかれていない。
その「木の実」を落としたのがカウフマンだということも。
「その前に、あっちが先に動くかもしんねーじゃん」
「かもしれんな。ティンザーの娘を守ろうと、あれは事を急ぐ」
「皆殺しにされちゃうんじゃねーの?」
「できるものなら、そうしたいだろうが、ばら撒かれた我らの血を探すには時間がかかり過ぎよう。かと言って、商人を皆殺しにはできんさ」
ジェシーが両腕はそのままに、首を横に傾ける。
なにか気になっていることがあるらしい。
今日は、カウフマンに甘える仕草を見せずにいた。
カウフマンは、緩く微笑む。
「私が殺されると思っておるのか?」
ジェシーには、カウフマンの死に動揺しないよう教育してきている。
目の前で人質に取られても、平気で見捨てるはずだ。
そのように、育てた。
「じぃちゃんが死ぬってのは、わかってる。けどサ、オレにはわかんねーことも、まだたくさんあるだろ? あんまり早死にされると、オレが困るんだよ」
ジェシーの潔い言葉を、カウフマンは寂しいとは感じない。
どれほど甘えていても、ジェシーはカウフマンを糧にする。
木を育てるための水であり、肥料なのだ。
そうした判断のできるジェシーは、やはりカウフマンの宝だった。
「必要なことは学んだろう。ジェシー、1番、大事にせねばならんのはなんだ?」
「オレが死なないこと」
「そうだ。どんなしくじりを冒しても、かまわん。逃げ隠れしてでも、誰を犠牲にしてでも、お前は生きねばならんのだ」
ジェシーの血を絶やすことはできない。
ほかの者とは比較にならないくらい貴重だからだ。
ジェシーには、さらなる血脈の根を伸ばさせる。
そのために、カウフマンと同じか、それ以上に子を成す必要があった。
(だが……ジェシーには、なかなか子ができん……血の濃さゆえであろうか)
14歳になった時から、より良い血を持つ女をあてがっている。
にもかかわらず、2年経った今でも、ジェシーに子はできていない。
少し方向性を変える必要があるかもしれないと思った。
これだけは、カウフマンの寿命が尽きる前に成し遂げなければならないのだ。
曾孫の顔を見てから死にたい、などという感傷的な理由からではなく。
「ひとつ、わかんねーコトがあるんだけどサ」
カウフマンの死以上に、気になっているらしい。
ブルーグレイの瞳が、いつになく揺れていた。
ジェシーには「人並み」の感情など、ほとんどないに等しいのに。
「なんで、オレを、こーしゃくサマに会わせたんだよ?」
半月以上前になるだろうか。
公爵がカウフマンを訪ねたことがある。
その時、公爵に促され、カウフマンはジェシーを呼んだ。
会わせる必要はなかったと言えば、そうかもしれない。
「1度は、顔を合わせておいても損はなかろう?」
「そんだけ?」
「私の宝を自慢したかったのだよ、ジェシー」
カウフマンの一族に煮え湯を飲ませてきた、ローエルハイド。
その現当主が、どういう反応を示すか見たかった。
ジェシーの姿は、ジェレミア・ローエルハイドの祖父に似ている。
ブルーグレイの髪も瞳も、仕草も口調も、そっくりなのだ。
若かりし頃、カウフマンは、その人物に、何度か会っている。
商人として、アドラントのローエルハイドの屋敷に入り込み、直々に、その目で確かめていた。
「あれは、驚いておったろうな」
「でも、そのせいで、オレに、あっちの血が混じってるのもバレたじゃん」
ジェシーが腕をほどき、自らの髪を、くしゅっとかき回す。
カウフマンに呼ばれた時に、髪と目の色を変えておけば良かったと思っているのかもしれない。
だが、それでは「自慢」にならない。
「なにも変わりやせんよ。お前の能力が下がるわけではないのでな」
「まぁね、わかってんだけどね」
ようやくジェシーが、カウフマンに近づいてくる。
定位置とばかりに、膝に座ってきた。
その頭を撫でながら思う。
70年前、アドラントの併合により、多くの商人が、いったんは締め出された。
カウフマンの一族も例外ではない。
アドラントが国として存在していた頃の影響力は剥奪され、長年の苦労は水泡と帰している。
もう少しでアドラント王族を掌握できるところまできていたのに。
そこからだ。
ローエルハイドをなんとかしなければ自分たちの「芽」が摘まれると、対抗策を模索し続けてきた。
アドラントを、再び自らの影響下に置きつつ、着々と準備を進めている。
およそ50年の時を要した。
当時、カウフマンは14歳。
非常に重要な役割を任せられていた。
それが、成し得られるかどうかで、次代の「カウフマン」として選ばれるというほどの役目だ。
カウフマンは、ジェシーを見つめつつ、その目を細める。
かつての友人を思い出していた。
もちろん、本当の意味での「友人」ではなく、なるべくしてなったのだけれど。
(チェット……きみは私に宝をもたらした。手は焼かされたが、その甲斐はあったと言えような)
ガルベリー13世こと、チェスディート・ガルベリー。
現国王の、一世代前の国王だ。
チェスディートは自由気ままな性格をしており、12歳の時に家出をしたきり、譲位がなされるまで王宮には戻らなかった。
そんなチェスディートに、カウフマンは近づいたのだ。
もちろんチェスディートは、カウフマンの本性は知らず、ただの商人の息子だと思っていた。
年頃になったチェスディートに、次々と女を紹介したのもカウフマンだ。
だが、チェスディートは知らずにいた。
認知していない自らの子が何人もいた、ということを。
カウフマンが、効果のない「避妊薬」を渡していたからだ。
当然、女にも言い含めてあり、場合によっては金銭で子を取引したこともある。
そのチェスディートの母こそが、大公の娘シンシアティニー・ローエルハイド。
カウフマンは、チェスディートを通じてローエルハイドの血を手に入れたのだ。
そこからは、アドラントの契約婚を利用し、ひたすら血の交わりを重ねている。
本国で行わなかったのは、目立ち過ぎるからだった。
貴族よりも平民のほうが、目立たず「交配」ができる。
立場や身分などおかまいなしなのだから。
「なぁ、じぃちゃん」
「どうした?」
「オレ……スゲー退屈なんだケド!」
むぎゅっと抱き着いてくる姿に、カウフマンは薄く笑った。
ジェシーの出番は、遠からずやってくる。
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★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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