49 / 164
前編
新しい道を前にして 1
しおりを挟む
サマンサは、鏡の前で、ラナに髪を梳かれている。
眠る前の、お手入れだ。
鏡に映る自分を見ながら、半月後のことを考えていた。
「どうかされたのですか?」
ラナが気づかわしげな表情で、サマンサを見ていた。
いつもなら、あれこれと話をしている。
屋敷であったことを聞いたり、本邸の様子を訊いたりすることもあった。
とくに、彼の婚約者ではなくなり、ジョバンニとの関係が進展したアシュリーがどうしているかは、たびたび訊いている。
もっとも、彼に言わせれば、元々「彼の」婚約者ではなかったらしいが、それはともかく。
だが、今夜は、芝居を観に行く日のことを考えていて、ぼんやりしていた。
押し黙ったままでいるサマンサを、ラナは心配しているのだろう。
「王都にある劇場は知っている?」
「はい。入ったことはございませんが、劇場前を通ったことはございます」
ラナは、元は王都の屋敷で勤め人をしていた。
街にある劇場を知っているのは当然だ。
サマンサが街に出ない暮らしをしていたので、知らないだけだった。
彼女の立ち回り先は、ものすごく限られている。
別の貴族の屋敷で開催される夜会にしか行ったことがない。
街を出歩くなんて考えたこともなかった。
貴族の居住区と街とは距離がある。
あえて馬車を使い、出かけなければならないのだ。
そうまでして「見世物」になる気にはなれなかった。
勤め人であるラナのほうが出歩く機会も場所も多かっただろう。
「今度、お芝居を観に行くことになったのよ」
「それは楽しみでございますね。旦那様とご一緒なら、ご安心でしょうし」
「違うのよ、ラナ」
サマンサは、ほんの少し考える。
いずれここを出て行く日が来るのだ。
ラナも含め、誰にも「交渉」のことは話していない。
去る時にどういう言い訳をするかは、まだ考えていなかった。
(でも、一般的に愛妾が邸を出るのは、主に見捨てられた時よね。飽きられたとか、別の愛妾ができたとか……そうなると、彼の品位が疑われるわ)
ここにはサマンサの意志で来たのだ。
彼は、たいして利もないのに受け入れてくれている。
想像以上に早く、そして良い形で目的は達成されていた。
家族を失望させるだろうとの不安も、ほぼ解消されている。
なのに、彼にも責任の一端があるとはいえ、マチルダのことでは彼の評判を下げてしまった。
ただでさえ、サマンサ連れでの夜会のことがある。
おかしな趣味嗜好、奇行に走る人物だと思われかねない。
さらなる「悪評」を広めるのは気が進まなかった。
「別の男性と行こうと思っているわ」
「え……? ですが、サマンサ様……」
「毎日、彼とばかりいてもつまらないでしょう? それに、彼も気晴らしは必要だと言ってくれたわ」
「さようにございますか……」
ラナに落胆されるのは心が痛む。
だが、彼がサマンサを捨てたのではなく、サマンサが彼の元を去ったと思わせておくほうがいいと判断した。
貴族界隈はともかく、自分のせいで彼が勤め人から悪く思われるのは防いでおきたい。
「当日はジョバンニが王都の屋敷に送ってくれるのだけれど、あなたも一緒に行かない? 久しぶりに王都の屋敷に帰るのもいいのじゃないかと思って」
「ありがとうございます。しばらく帰っておりませんから、お供をさせていただければ嬉しく存じます」
「私は向こうには泊まらないと思うわ。でも、あなたは1日くらいゆっくりして来れば? 帰りは彼に頼むから、心配しなくていいわよ」
「そんな……私などのために旦那様を煩わせることはできかねます……」
ラナは気後れした様子だが、サマンサは平気な顔をして言う。
「いいのよ。彼ったら、役に立つ魔術師だって私に思われたがっているのだもの」
彼との会話を思い出し、くすくすと笑った。
彼が特異な魔術師だというのは、誰しもが知っている。
とはいえ、彼は、なんでも魔術ですませていると思われるのを好まないようだ。
そのくせ、魔術で新しい花に取り換えたり、紅茶を淹れ替えたりする。
「それに、もし彼が忙しくしていたら、ジョバンニが行くわよ」
「でしたら……お言葉に甘えさせていただきます」
彼に対しては気後れしていたラナの調子が変わった。
ジョバンニは王都の屋敷も切り盛りしているのだが、アドラント本邸の者ほど親交はないと聞いている。
サマンサに当たりの強かったジョバンニに、ラナは厳しい目を向けていた。
「ここに籠り切りではね。とくに、あなたは私についてくれているから、どこにも行けないじゃない? お休みは必要だと思うの」
「私よりもサマンサ様のほうが……そうですわね。気晴らしは必要ですわ。少し前まで日中に中庭に出ることもできずにいらしたのですから」
ジョバンニのせいで。
という声が聞こえてきそうだ。
ジョバンニと顔を合わせたくなくて、外には出ないようにしていた。
アシュリーとは話したかったが、ジョバンニが常に傍にいたため、気楽にお茶に誘うこともできなかったのだ。
「それで、その……どなたと、ご一緒されるのですか?」
ラナが、少し言いづらそうにしつつも、訊いてくる。
それはサマンサも知りたいところだった。
「当日のお楽しみよ、ラナ」
彼に言われた台詞を、そのまま使う。
実際、サマンサも知らないのだから答えようがない。
「では、ドレスはいかがいたしましょう? こちらで着替えられてから、王都に行かれますか?」
なるほど、と思う。
ラナが言いづらそうにしながらも、相手の男性について訊いてきた理由だ。
エスコートの男性の年齢や身分に応じて、こちらはドレスを吟味する。
見劣りせず、かと言って、不釣り合いなほど華美であれば、相手の立場を害してしまう。
どうしようかと考えていて、ハッとなった。
半月後、予定では、サマンサは体型が変わっている。
今あるドレスは、どれも着られない「はず」だ。
さりとて、心配することはないと、すぐに思い直した。
「新しいものを用意しているの。きっと数日前には届くのじゃないかしら」
彼は、先を見越して動く。
すでにドレスは手配済みと見て間違いはない。
「かしこまりした。こちらで着替えをなさるかどうかは、ドレスの出来次第ということにございますね」
「そうなの。手直しが必要かもしれないし、思ったよりも着崩れてしまうかもしれないから、1度、試しに着てみて判断するわ」
ラナが納得してくれて助かった。
それで、気がつく。
体型の変化が、いつ頃に現れるのかはわからない。
だとしても、ラナを心配させるだろう。
(いきなり、どっとくるのか、これから、じわじわ来るのかはともかく……)
仕えている相手が、急に痩せ始めたら、まず病気を疑うはずだ。
無駄に心配させるのは気が引けた。
あまりに変わりがないので、今まで、そこに気が回らずにいたのだ。
「ラナ、私が、これから、ほっそりしてきても驚かないでちょうだい」
「なにかお薬でも、お飲みになられるのですか?」
ラナは、すでに心配顔をしている。
確かに、とサマンサは思った。
街で売っていた痩せる薬の効果は、熱病にかかったような苦痛だけだったのだ。
値段には、ちっとも見合わなかった。
「違うわ。彼に……体質改善の魔術を使ってもらったのよ。でも、効果はすぐにはあらわれないみたい。時間がかかるらしいわ」
「さようにございましたか。旦那様がなさったことであれば問題ありませんね。お時間がかかっても、効果があらわれるに違いありませんわ」
「だから、急に体型が変わっても心配しないで」
「わかりました。この話は内密にしておいたほうがよろしいでしょうか?」
別邸の勤め人のほとんどが、サマンサによくしてくれている。
体型が変わって心配するのは、ラナだけではないだろう。
とくに料理人たちは顔を蒼褪めさせるかもしれない。
「あまりに大袈裟にならなければ大丈夫よ。食事に問題があったなんて思わせるのは本意ではないの」
「騒ぎ立てないように、それとなく話しておきます」
ラナであれば、うまくやってくれるに違いない。
サマンサは、ラナを信頼している。
ティモシーのことがあり、人を信じる怖さを知った。
だが、誰も彼もを疑いたくはない。
自分が誠実であれば、相手もまた誠実さを返してくれると信じていたいのだ。
「あなたには感謝しているわ、ラナ。嫌がらずに私を引き受けてくれて」
「サマンサ様……私は、サマンサ様が、ここに留まってくださることを望んでおります。ずっとお仕えしたいと思えるかたですから」
「私に、そういう野心はないの」
「存じております。ですが……だからこそ期待してしまうのでしょうね」
ラナが少しだけ寂しそうに微笑む。
サマンサも、ここを去る時には寂しい思いをするだろうと感じていた。
ティンザーの屋敷とは違う、暖かみがあるからだ。
(突然に現れた“特別な客人”に、みんな、礼儀正しく、優しくしてくれている……冷たくされる覚悟はあったけれど、やっぱり嬉しいものだわ)
ティンザーの屋敷の者たちは、古くから勤めていて、産まれた時からサマンサを知っている。
ある意味では、サマンサにやわらかい対応をしてくれるのが当然の人たちだ。
だが、ここの人たちは、いずれ去るであろうサマンサと親しくする義理はない。
そのため、ラナや、ほかのみんなが、サマンサを支えようとしてくれるのが嬉しかった。
(いつか……私が嫁ぐ家も、こうであってくれるといいのだけれど……)
眠る前の、お手入れだ。
鏡に映る自分を見ながら、半月後のことを考えていた。
「どうかされたのですか?」
ラナが気づかわしげな表情で、サマンサを見ていた。
いつもなら、あれこれと話をしている。
屋敷であったことを聞いたり、本邸の様子を訊いたりすることもあった。
とくに、彼の婚約者ではなくなり、ジョバンニとの関係が進展したアシュリーがどうしているかは、たびたび訊いている。
もっとも、彼に言わせれば、元々「彼の」婚約者ではなかったらしいが、それはともかく。
だが、今夜は、芝居を観に行く日のことを考えていて、ぼんやりしていた。
押し黙ったままでいるサマンサを、ラナは心配しているのだろう。
「王都にある劇場は知っている?」
「はい。入ったことはございませんが、劇場前を通ったことはございます」
ラナは、元は王都の屋敷で勤め人をしていた。
街にある劇場を知っているのは当然だ。
サマンサが街に出ない暮らしをしていたので、知らないだけだった。
彼女の立ち回り先は、ものすごく限られている。
別の貴族の屋敷で開催される夜会にしか行ったことがない。
街を出歩くなんて考えたこともなかった。
貴族の居住区と街とは距離がある。
あえて馬車を使い、出かけなければならないのだ。
そうまでして「見世物」になる気にはなれなかった。
勤め人であるラナのほうが出歩く機会も場所も多かっただろう。
「今度、お芝居を観に行くことになったのよ」
「それは楽しみでございますね。旦那様とご一緒なら、ご安心でしょうし」
「違うのよ、ラナ」
サマンサは、ほんの少し考える。
いずれここを出て行く日が来るのだ。
ラナも含め、誰にも「交渉」のことは話していない。
去る時にどういう言い訳をするかは、まだ考えていなかった。
(でも、一般的に愛妾が邸を出るのは、主に見捨てられた時よね。飽きられたとか、別の愛妾ができたとか……そうなると、彼の品位が疑われるわ)
ここにはサマンサの意志で来たのだ。
彼は、たいして利もないのに受け入れてくれている。
想像以上に早く、そして良い形で目的は達成されていた。
家族を失望させるだろうとの不安も、ほぼ解消されている。
なのに、彼にも責任の一端があるとはいえ、マチルダのことでは彼の評判を下げてしまった。
ただでさえ、サマンサ連れでの夜会のことがある。
おかしな趣味嗜好、奇行に走る人物だと思われかねない。
さらなる「悪評」を広めるのは気が進まなかった。
「別の男性と行こうと思っているわ」
「え……? ですが、サマンサ様……」
「毎日、彼とばかりいてもつまらないでしょう? それに、彼も気晴らしは必要だと言ってくれたわ」
「さようにございますか……」
ラナに落胆されるのは心が痛む。
だが、彼がサマンサを捨てたのではなく、サマンサが彼の元を去ったと思わせておくほうがいいと判断した。
貴族界隈はともかく、自分のせいで彼が勤め人から悪く思われるのは防いでおきたい。
「当日はジョバンニが王都の屋敷に送ってくれるのだけれど、あなたも一緒に行かない? 久しぶりに王都の屋敷に帰るのもいいのじゃないかと思って」
「ありがとうございます。しばらく帰っておりませんから、お供をさせていただければ嬉しく存じます」
「私は向こうには泊まらないと思うわ。でも、あなたは1日くらいゆっくりして来れば? 帰りは彼に頼むから、心配しなくていいわよ」
「そんな……私などのために旦那様を煩わせることはできかねます……」
ラナは気後れした様子だが、サマンサは平気な顔をして言う。
「いいのよ。彼ったら、役に立つ魔術師だって私に思われたがっているのだもの」
彼との会話を思い出し、くすくすと笑った。
彼が特異な魔術師だというのは、誰しもが知っている。
とはいえ、彼は、なんでも魔術ですませていると思われるのを好まないようだ。
そのくせ、魔術で新しい花に取り換えたり、紅茶を淹れ替えたりする。
「それに、もし彼が忙しくしていたら、ジョバンニが行くわよ」
「でしたら……お言葉に甘えさせていただきます」
彼に対しては気後れしていたラナの調子が変わった。
ジョバンニは王都の屋敷も切り盛りしているのだが、アドラント本邸の者ほど親交はないと聞いている。
サマンサに当たりの強かったジョバンニに、ラナは厳しい目を向けていた。
「ここに籠り切りではね。とくに、あなたは私についてくれているから、どこにも行けないじゃない? お休みは必要だと思うの」
「私よりもサマンサ様のほうが……そうですわね。気晴らしは必要ですわ。少し前まで日中に中庭に出ることもできずにいらしたのですから」
ジョバンニのせいで。
という声が聞こえてきそうだ。
ジョバンニと顔を合わせたくなくて、外には出ないようにしていた。
アシュリーとは話したかったが、ジョバンニが常に傍にいたため、気楽にお茶に誘うこともできなかったのだ。
「それで、その……どなたと、ご一緒されるのですか?」
ラナが、少し言いづらそうにしつつも、訊いてくる。
それはサマンサも知りたいところだった。
「当日のお楽しみよ、ラナ」
彼に言われた台詞を、そのまま使う。
実際、サマンサも知らないのだから答えようがない。
「では、ドレスはいかがいたしましょう? こちらで着替えられてから、王都に行かれますか?」
なるほど、と思う。
ラナが言いづらそうにしながらも、相手の男性について訊いてきた理由だ。
エスコートの男性の年齢や身分に応じて、こちらはドレスを吟味する。
見劣りせず、かと言って、不釣り合いなほど華美であれば、相手の立場を害してしまう。
どうしようかと考えていて、ハッとなった。
半月後、予定では、サマンサは体型が変わっている。
今あるドレスは、どれも着られない「はず」だ。
さりとて、心配することはないと、すぐに思い直した。
「新しいものを用意しているの。きっと数日前には届くのじゃないかしら」
彼は、先を見越して動く。
すでにドレスは手配済みと見て間違いはない。
「かしこまりした。こちらで着替えをなさるかどうかは、ドレスの出来次第ということにございますね」
「そうなの。手直しが必要かもしれないし、思ったよりも着崩れてしまうかもしれないから、1度、試しに着てみて判断するわ」
ラナが納得してくれて助かった。
それで、気がつく。
体型の変化が、いつ頃に現れるのかはわからない。
だとしても、ラナを心配させるだろう。
(いきなり、どっとくるのか、これから、じわじわ来るのかはともかく……)
仕えている相手が、急に痩せ始めたら、まず病気を疑うはずだ。
無駄に心配させるのは気が引けた。
あまりに変わりがないので、今まで、そこに気が回らずにいたのだ。
「ラナ、私が、これから、ほっそりしてきても驚かないでちょうだい」
「なにかお薬でも、お飲みになられるのですか?」
ラナは、すでに心配顔をしている。
確かに、とサマンサは思った。
街で売っていた痩せる薬の効果は、熱病にかかったような苦痛だけだったのだ。
値段には、ちっとも見合わなかった。
「違うわ。彼に……体質改善の魔術を使ってもらったのよ。でも、効果はすぐにはあらわれないみたい。時間がかかるらしいわ」
「さようにございましたか。旦那様がなさったことであれば問題ありませんね。お時間がかかっても、効果があらわれるに違いありませんわ」
「だから、急に体型が変わっても心配しないで」
「わかりました。この話は内密にしておいたほうがよろしいでしょうか?」
別邸の勤め人のほとんどが、サマンサによくしてくれている。
体型が変わって心配するのは、ラナだけではないだろう。
とくに料理人たちは顔を蒼褪めさせるかもしれない。
「あまりに大袈裟にならなければ大丈夫よ。食事に問題があったなんて思わせるのは本意ではないの」
「騒ぎ立てないように、それとなく話しておきます」
ラナであれば、うまくやってくれるに違いない。
サマンサは、ラナを信頼している。
ティモシーのことがあり、人を信じる怖さを知った。
だが、誰も彼もを疑いたくはない。
自分が誠実であれば、相手もまた誠実さを返してくれると信じていたいのだ。
「あなたには感謝しているわ、ラナ。嫌がらずに私を引き受けてくれて」
「サマンサ様……私は、サマンサ様が、ここに留まってくださることを望んでおります。ずっとお仕えしたいと思えるかたですから」
「私に、そういう野心はないの」
「存じております。ですが……だからこそ期待してしまうのでしょうね」
ラナが少しだけ寂しそうに微笑む。
サマンサも、ここを去る時には寂しい思いをするだろうと感じていた。
ティンザーの屋敷とは違う、暖かみがあるからだ。
(突然に現れた“特別な客人”に、みんな、礼儀正しく、優しくしてくれている……冷たくされる覚悟はあったけれど、やっぱり嬉しいものだわ)
ティンザーの屋敷の者たちは、古くから勤めていて、産まれた時からサマンサを知っている。
ある意味では、サマンサにやわらかい対応をしてくれるのが当然の人たちだ。
だが、ここの人たちは、いずれ去るであろうサマンサと親しくする義理はない。
そのため、ラナや、ほかのみんなが、サマンサを支えようとしてくれるのが嬉しかった。
(いつか……私が嫁ぐ家も、こうであってくれるといいのだけれど……)
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる