15 / 164
前編
思惑もそれぞれに 3
しおりを挟む
サマンサは、書庫の隣にある読書室で紅茶を飲みながら、本を読むことにする。
この別邸で過ごし始めて、すでに3日が経過していた。
破談について、彼がどう考えているのかはわからない。
訊いても、はぐらかされてばかりいる。
ともかく、彼は約束を守るはずだ。
そう思っているとはいえ、気にはなる。
ティモシー宛に書き上げた手紙も出さなければならないし。
「サマンサ様、お茶をお持ちいたしました」
サマンサが来た翌日の朝には、すでに勤め人が別邸にも配置されていた。
最初に訪れた時は見かけなかったため、交渉成立後に準備がなされたのだろう。
(あの無礼な執事が寄越したのだから、嫌がらせのひとつもされるかと思っていたけれど、今のところ、とても普通だわ)
いや、むしろ、感じが良くて、少し気味が悪い。
婚約者のいる相手の屋敷に乗り込んで「特別な客人」になった女。
同じ女性の立場からしても、冷たくされて当然だと思う。
なので、嫌な態度を取られる覚悟はしていた。
だが、サマンサの身の周りの世話をするメイドのラナを含め、ほかの勤め人も、いたって普通なのだ。
「ラナ、ちょっと訊いてもいいかしら」
「はい。私にお答えできることであれば、どのようなことでも」
「答えにくいかもしれないけれど、話せる範囲でかまわないわ」
ラナは、サマンサより年上と見られる栗色の髪に茶色の瞳をした女性だった。
物静かで優しい雰囲気があるのに、とてもしっかりしている。
てきぱきしていて、器用でもあった。
嫌な顔もしないし、サマンサを馬鹿にするような態度も取らない。
「あなたたちは嫌ではない? 彼に婚約者がいることは知っているのでしょう?」
「存じてはおりますが、私たちには関係がございませんので、嫌だと感じたこともございません」
「関係がないというのは、どういうこと?」
「私たちの大半は王都の屋敷からまいりました。ですから、アドラントの本邸の者とは違い、アシュリリス姫のことを、よく存じません」
そういうことか、と納得する。
彼女のことをよく知らないため、思い入れも深くない、と言いたいのだろう。
基本的に、彼女らはローエルハイドに仕えている。
主の意思に従う者たちなのだ。
ただし、アドラントの本邸の勤め人たちはサマンサを知らず、婚約者側への思い入れが強い。
逆に、王都から来た者は婚約者を知らないままサマンサの元に来たので、これといって、こだわりがない。
(あの執事……案外、優秀なの? それとも彼の指示? まさかね。屋敷の主が人員の配置にまで指図するのなら、執事を置いている意味がないもの)
ちょっぴり意外だった。
無礼な執事ではあるが、ある程度の公平さは持ち合わせているようだ。
「でも、私のせいで王都から離れることになったのよ? 突然の配置換えに気分を害するのは当然に思えるわ」
「そういうこともございませんね。王都のお屋敷には、特定のかたが住まわれることはありませんでした。時々、お客様がいらしておりましたが、たいていは旦那様のご不興をかい、すぐに追いはらわれておりました」
「つまり……それほど忙しくないということかしら?」
暇というと語弊がある気がしたので、遠回しな言いかたをしてみる。
すると、ラナが小さく笑った。
ものすごく意外だ。
反感を持たれることはあっても、歓迎されることはないと思っていたからだ。
「さようにございます、サマンサ様。旦那様は、いつ戻られるか、わからないかたにございますから、準備だけはしておりました。ですが、やはりこうしてきちんとした役割があるほうが勤め甲斐がございます」
「それが、たとえ……愛妾とされる女であっても?」
「サマンサ様は旦那様のお気に召されたかたにございます。正直に申しまして、そのようなかたは、今まで、お1人もいらっしゃいませんでした」
ラナの言葉に少なからず驚く。
彼は男性として魅力的であり、爵位などとは関係なく、女性が集まってくるのは予想するまでもない。
民服を着て、街を歩いているだけでも、熱い視線を浴びるはずだ。
「彼は、女性嫌いとか女性不信とかではないわよね?」
「はい。女性とのおつきあいがなかったとは申せませんが、このように屋敷に迎え入れられたのは、初めてのことにございます」
「でも、ご婚約者のかたがいらっしゃるじゃない」
ラナは、なにか考えているのか、わずかに首をかしげる。
が、すぐに小さく頭を横に振った。
「旦那様が、なにを考えておられるのかは、私にはわかりかねます。ですが、ひとつ言えるのは、旦那様は14歳の少女に恋をなさるかたではない、ということです」
「私は、まだ彼女に会ったことがないの。もしかすると、ものすごく大人びたかただとか……」
「いいえ。私も、ちらりとお見掛けしただけにございますが、14歳にしては少し幼いくらいの印象がございました。ですから、現時点では、旦那様のお相手になるとは考えにくいのです」
サマンサは、ラナの話を聞きつつ、紅茶を口にする。
といっても、カップではなくグラス入りだ。
ここに来て初めて知った、冷たい状態で飲む紅茶だった。
冷やしたレモネードで割ったものなのだそうだ。
のど越しが爽やかで、冷たいのもいい。
夏にぴったりの飲み物だと感じられ、サマンサは気に入っている。
もちろん敷地内の温度は、常に適温に保たれているが、印象の問題なのだ。
いくら温度が適正でも、空は夏の色をしている。
「サマンサ様、このようなことを申し上げるのは差し出がましいとは存じますが、サマンサ様は、なにも引け目に感じられることはございません。少なくとも、私はサマンサ様のお世話をさせていただけて、ようやく自分の役目を果たしていると、実感できております」
「ありがとう、ラナ」
「私のほうこそ、感謝しております、サマンサ様」
ラナは嘘を言っているようには見えない。
だが、サマンサは「人の好さ」により痛い目を見ている。
全面的に信じるのは危険だと、つい自己防衛の機能が働いてしまう。
ラナがサマンサを尊重していて、悪意を持っていないとわかっていても。
「あなたが私の姿をどう思っているのか、正直に言ってもらえる?」
我ながら、嫌な質問をしていると思った。
ラナを試す問いでもあるので、自己嫌悪に心がちくちくする。
こんな時には、決まって父の教えがサマンサの頭をよぎるのだ。
『心がちくちくするのは罪悪感があるからだ。では、なぜ罪悪感をいだくのか? 己の行動が正しくないものだとの自覚があるせいだろう? なにか理由があったとしても、ずっと、そのチクチクをかかえていたくなければ……』
父の忠告を、サマンサは受け入れるつもりでいる。
ただし、ラナの答えを聞いたあとで、だった。
「お訊きになられたいことは理解しております。サマンサ様は、確かにほかの貴族令嬢の方々とは違っておられます。ですが、少しも気にしておりません」
「それは、彼が私を選んだから?」
「ないとは言えませんが、この3日、お仕えした中で、サマンサ様がとても聡明なかたでいらっしゃると気づきました。見かけが整っていても、愚かなかたは大勢いらっしゃいますからね。そういうかたを、私は好みません」
見た目ではなく、ラナは内面で判断したと、言ってくれているのだ。
完全に警戒心を緩めてはいないが、ほわっとした喜びが胸に広がる。
知り合って3日しか経っていないのに、ラナがいて良かったと思えた。
「ラナは、いつからローエルハイドに勤めているの?」
「十歳からにございます。もうかれこれ11年目になりましょうか」
「じゅ……それほど幼い時から働いていたのね」
「平民では、めずらしくないことにこざいます。もっと幼い時から仕事をする者もおります」
ラナが平民だったとは知らずにいた。
公爵家ともなると、勤め人は下位貴族の中から選ばれるのが一般的だ。
経済的な余裕がなく平民を雇い入れることはあっても、財力があれば平民を雇うことは、まずない。
「私が平民ということで、お気に障られたのであれば、爵位持ちの……」
「まったく気にしていないわ。あなたが私の体型を気にしないのと同じよ」
サマンサは、爵位を持つ貴族だから偉いとか立派だとか、思ってはいなかった。
なにしろ、夜会でサマンサを嘲笑することくらいしかできない者たちだ。
ティンザー気質な彼女にとって、それはとても「下品」な振る舞いに感じる。
対象が自分であるため、反論すれば、妬みだの嫉みだの言われるとわかっていたので、あえて言い返さずにいただけだ。
「サマンサ様、グラスが空いておりますわ」
ラナが、グラスに冷たいレモネード入りの紅茶を注いでくれる。
注ぎながら言う。
「旦那様も、実は、これがお気に入りなのですよ?」
「え…………」
彼と好みが同じだなんてと思いはするのだが、しかし。
サマンサは、そこだけ「聞かなかった」ことにした。
(だって本当に気に入ってしまったのだもの……飲みたくない、とは言えないわ)
この別邸で過ごし始めて、すでに3日が経過していた。
破談について、彼がどう考えているのかはわからない。
訊いても、はぐらかされてばかりいる。
ともかく、彼は約束を守るはずだ。
そう思っているとはいえ、気にはなる。
ティモシー宛に書き上げた手紙も出さなければならないし。
「サマンサ様、お茶をお持ちいたしました」
サマンサが来た翌日の朝には、すでに勤め人が別邸にも配置されていた。
最初に訪れた時は見かけなかったため、交渉成立後に準備がなされたのだろう。
(あの無礼な執事が寄越したのだから、嫌がらせのひとつもされるかと思っていたけれど、今のところ、とても普通だわ)
いや、むしろ、感じが良くて、少し気味が悪い。
婚約者のいる相手の屋敷に乗り込んで「特別な客人」になった女。
同じ女性の立場からしても、冷たくされて当然だと思う。
なので、嫌な態度を取られる覚悟はしていた。
だが、サマンサの身の周りの世話をするメイドのラナを含め、ほかの勤め人も、いたって普通なのだ。
「ラナ、ちょっと訊いてもいいかしら」
「はい。私にお答えできることであれば、どのようなことでも」
「答えにくいかもしれないけれど、話せる範囲でかまわないわ」
ラナは、サマンサより年上と見られる栗色の髪に茶色の瞳をした女性だった。
物静かで優しい雰囲気があるのに、とてもしっかりしている。
てきぱきしていて、器用でもあった。
嫌な顔もしないし、サマンサを馬鹿にするような態度も取らない。
「あなたたちは嫌ではない? 彼に婚約者がいることは知っているのでしょう?」
「存じてはおりますが、私たちには関係がございませんので、嫌だと感じたこともございません」
「関係がないというのは、どういうこと?」
「私たちの大半は王都の屋敷からまいりました。ですから、アドラントの本邸の者とは違い、アシュリリス姫のことを、よく存じません」
そういうことか、と納得する。
彼女のことをよく知らないため、思い入れも深くない、と言いたいのだろう。
基本的に、彼女らはローエルハイドに仕えている。
主の意思に従う者たちなのだ。
ただし、アドラントの本邸の勤め人たちはサマンサを知らず、婚約者側への思い入れが強い。
逆に、王都から来た者は婚約者を知らないままサマンサの元に来たので、これといって、こだわりがない。
(あの執事……案外、優秀なの? それとも彼の指示? まさかね。屋敷の主が人員の配置にまで指図するのなら、執事を置いている意味がないもの)
ちょっぴり意外だった。
無礼な執事ではあるが、ある程度の公平さは持ち合わせているようだ。
「でも、私のせいで王都から離れることになったのよ? 突然の配置換えに気分を害するのは当然に思えるわ」
「そういうこともございませんね。王都のお屋敷には、特定のかたが住まわれることはありませんでした。時々、お客様がいらしておりましたが、たいていは旦那様のご不興をかい、すぐに追いはらわれておりました」
「つまり……それほど忙しくないということかしら?」
暇というと語弊がある気がしたので、遠回しな言いかたをしてみる。
すると、ラナが小さく笑った。
ものすごく意外だ。
反感を持たれることはあっても、歓迎されることはないと思っていたからだ。
「さようにございます、サマンサ様。旦那様は、いつ戻られるか、わからないかたにございますから、準備だけはしておりました。ですが、やはりこうしてきちんとした役割があるほうが勤め甲斐がございます」
「それが、たとえ……愛妾とされる女であっても?」
「サマンサ様は旦那様のお気に召されたかたにございます。正直に申しまして、そのようなかたは、今まで、お1人もいらっしゃいませんでした」
ラナの言葉に少なからず驚く。
彼は男性として魅力的であり、爵位などとは関係なく、女性が集まってくるのは予想するまでもない。
民服を着て、街を歩いているだけでも、熱い視線を浴びるはずだ。
「彼は、女性嫌いとか女性不信とかではないわよね?」
「はい。女性とのおつきあいがなかったとは申せませんが、このように屋敷に迎え入れられたのは、初めてのことにございます」
「でも、ご婚約者のかたがいらっしゃるじゃない」
ラナは、なにか考えているのか、わずかに首をかしげる。
が、すぐに小さく頭を横に振った。
「旦那様が、なにを考えておられるのかは、私にはわかりかねます。ですが、ひとつ言えるのは、旦那様は14歳の少女に恋をなさるかたではない、ということです」
「私は、まだ彼女に会ったことがないの。もしかすると、ものすごく大人びたかただとか……」
「いいえ。私も、ちらりとお見掛けしただけにございますが、14歳にしては少し幼いくらいの印象がございました。ですから、現時点では、旦那様のお相手になるとは考えにくいのです」
サマンサは、ラナの話を聞きつつ、紅茶を口にする。
といっても、カップではなくグラス入りだ。
ここに来て初めて知った、冷たい状態で飲む紅茶だった。
冷やしたレモネードで割ったものなのだそうだ。
のど越しが爽やかで、冷たいのもいい。
夏にぴったりの飲み物だと感じられ、サマンサは気に入っている。
もちろん敷地内の温度は、常に適温に保たれているが、印象の問題なのだ。
いくら温度が適正でも、空は夏の色をしている。
「サマンサ様、このようなことを申し上げるのは差し出がましいとは存じますが、サマンサ様は、なにも引け目に感じられることはございません。少なくとも、私はサマンサ様のお世話をさせていただけて、ようやく自分の役目を果たしていると、実感できております」
「ありがとう、ラナ」
「私のほうこそ、感謝しております、サマンサ様」
ラナは嘘を言っているようには見えない。
だが、サマンサは「人の好さ」により痛い目を見ている。
全面的に信じるのは危険だと、つい自己防衛の機能が働いてしまう。
ラナがサマンサを尊重していて、悪意を持っていないとわかっていても。
「あなたが私の姿をどう思っているのか、正直に言ってもらえる?」
我ながら、嫌な質問をしていると思った。
ラナを試す問いでもあるので、自己嫌悪に心がちくちくする。
こんな時には、決まって父の教えがサマンサの頭をよぎるのだ。
『心がちくちくするのは罪悪感があるからだ。では、なぜ罪悪感をいだくのか? 己の行動が正しくないものだとの自覚があるせいだろう? なにか理由があったとしても、ずっと、そのチクチクをかかえていたくなければ……』
父の忠告を、サマンサは受け入れるつもりでいる。
ただし、ラナの答えを聞いたあとで、だった。
「お訊きになられたいことは理解しております。サマンサ様は、確かにほかの貴族令嬢の方々とは違っておられます。ですが、少しも気にしておりません」
「それは、彼が私を選んだから?」
「ないとは言えませんが、この3日、お仕えした中で、サマンサ様がとても聡明なかたでいらっしゃると気づきました。見かけが整っていても、愚かなかたは大勢いらっしゃいますからね。そういうかたを、私は好みません」
見た目ではなく、ラナは内面で判断したと、言ってくれているのだ。
完全に警戒心を緩めてはいないが、ほわっとした喜びが胸に広がる。
知り合って3日しか経っていないのに、ラナがいて良かったと思えた。
「ラナは、いつからローエルハイドに勤めているの?」
「十歳からにございます。もうかれこれ11年目になりましょうか」
「じゅ……それほど幼い時から働いていたのね」
「平民では、めずらしくないことにこざいます。もっと幼い時から仕事をする者もおります」
ラナが平民だったとは知らずにいた。
公爵家ともなると、勤め人は下位貴族の中から選ばれるのが一般的だ。
経済的な余裕がなく平民を雇い入れることはあっても、財力があれば平民を雇うことは、まずない。
「私が平民ということで、お気に障られたのであれば、爵位持ちの……」
「まったく気にしていないわ。あなたが私の体型を気にしないのと同じよ」
サマンサは、爵位を持つ貴族だから偉いとか立派だとか、思ってはいなかった。
なにしろ、夜会でサマンサを嘲笑することくらいしかできない者たちだ。
ティンザー気質な彼女にとって、それはとても「下品」な振る舞いに感じる。
対象が自分であるため、反論すれば、妬みだの嫉みだの言われるとわかっていたので、あえて言い返さずにいただけだ。
「サマンサ様、グラスが空いておりますわ」
ラナが、グラスに冷たいレモネード入りの紅茶を注いでくれる。
注ぎながら言う。
「旦那様も、実は、これがお気に入りなのですよ?」
「え…………」
彼と好みが同じだなんてと思いはするのだが、しかし。
サマンサは、そこだけ「聞かなかった」ことにした。
(だって本当に気に入ってしまったのだもの……飲みたくない、とは言えないわ)
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる