87 / 300
第1章 彼女の言葉はわからない
乖離の成果 3
しおりを挟む
フィッツの場合は愛称ではなく、単なる「呼び名」だが、人が、人を愛称で呼ぶことがあるのは知っている。
その条件は「親しい間柄であること」だ。
だから、どうしてもカサンドラを愛称で呼びたい。
なのに、口にしようとすると、言葉がうまく出て来なくなる。
フィッツは、カサンドラが湯を浴びている浴室の前に立っていた。
安全は確保されているため、見張りはいらないのだが、離れがたかったのだ。
もちろん、中に入ることは、もうしない。
カサンドラは「別にいい」と言ってくれているものの、アイシャの言葉を、忘れられずにいる。
(私は、姫様と恋仲ではないし、夫でもない。不必要に裸身を見るのは破廉恥だ)
思いながら、胸のあたりを、ぎゅっと握りしめた。
今まで、考えもしなかったことを、考えてばかりいる。
ティニカでは教わらなかったので、自分で考えるよりほかない。
その中で、思考を中断したくなることも、ままある。
カサンドラといると楽しいのに、苦しい。
愛称で呼びたいのに、呼べない。
それが、なぜなのか、わからなかった。
考えても、答えがみつけられないのだ。
(私は、おそらく、普通ではないのだろうな)
人は、人から産まれる。
親が子を育てる。
親を亡くしたり、親に捨てられたりする子がいるのは知っていた。
だとしても、比喩ではなく事実として「親がいない」子はいない。
だが、フィッツに「親」はいないのだ。
フィッツの中の「当たり前」は、ティニカでのもので、一般的ではないのだと、ようやく気づいている。
そもそも、ほかの基準なんて考えたことがなかった。
ティニカの教えの上に、フィッツの命は成り立っていたからだ。
(姫様がヴェスキルの継承者でなくても、私は、やはり傍にいたいと思っている。ティニカとしては、失敗作だ。お仕えする前なら処分されていた)
ティニカでは、ヴェスキルの継承者を守り、世話をする者が作られている。
候補は複数いるのだが、最も優秀な者しか必要とはされない。
あとあと面倒なことにならないように、選ばれなかった者は処分されるのだ。
フィッツは、自分と同じく作られた者たちが処分されるのを目にしている。
なんとも思わなかった。
不要な者が処分されるのを、ごく自然に受け止めている。
フィッツ自身、カサンドラに「不要」と見なされれば、いつでも自死するつもりでいたのだ。
ティニカの存在理由は、それしかないから。
(しかし、姫様は、私がいいと言ってくれた。私がいなければ困るとも……)
ふっと、胸が軽くなる。
知らず、胸から手を離していた。
たとえティニカとしては出来損ないであっても、カサンドラが必要としてくれるのなら、それだけでいいと思える。
(……愛称で呼べるようになったら……姫様と私は、恋仲になれるのだろうか)
今度は、胸の奥が、ぽっぽっと熱くなってきた。
最近、よくこうなる。
不快ではないが、落ち着かない。
「フィッツ~、いる~?」
「は、はい。います。なにか必要なものがありますか?」
「ごめんごめん、用があったわけじゃなくて、いるかなって思っただけ~」
浴室内から、歌うような声が響いていた。
また、うまく言葉で表現できない感覚が胸に広がる。
無意識ではあるのだが、フィッツの口元に笑みが浮かんでいた。
声が笑っている。
そう感じたのだ。
何年も仕えてきて、その間、カサンドラは、いつも淡々としていた。
とくに女王の他界後は、ひどく冷静で、何事にも動揺しなくなっている。
感情に揺らぎがなく、落ち着いていた。
それまでは、皇太子に会ったあとやなんかには、感情の揺らぎがあったのだ。
明確に言われたわけではないが、皇太子に好意をいだいているのは察していた。
あれほどに無関心さを示されていて、なぜ好意的になれるのかはわからなかったものの、フィッツにとっては関係ない。
関係なく「使命」を果たすべく、行動している。
(私も、姫様ご自身には、無関心だった……? 姫様が言っていたのは、こういうことかもしれない。ヴェスキルの継承者だからと……)
ティニカは「ヴェスキルの継承者」であることを、なにより重要視する。
もとより、ティニカ自体が、ヴェスキルのために作られた家門からだ。
千年ほども続く歴史の中で、その思想は変わらず存在し続けている。
今だって、どこかで「ティニカ」は作られているのだろう。
ティニカは変わらない。
けれど、自分は変わった、と思う。
たとえば、今、正当なヴェスキルの継承者が見つかったので、その者に仕えろと言われても、彼女の傍を離れる気はない。
以前とは、真逆の思考になっている。
別人になろうが、その血の1滴までもがヴェスキルならば、それが、フィッツの仕えるべき理由だった。
なのに、今は、ヴェスキルの血がどうでも、彼女の傍にいたいと感じている。
しかも「仕える」との意識とは、異なる感覚もあった。
「お待たせ、フィッツ」
きゅうっと、胸が締めつけられる。
カサンドラが、自然な笑顔を、フィッツに向けていた。
一緒にいると楽しいのに、苦しい。
当たり前に笑ってくれる彼女に、どう応えればいいのかすら、自分には、わからないのだ。
それは、きっと「普通」ではないからに違いない。
身の程をわきまえるべきなのかもしれないが、できなかった。
「え? フィッツ? どしたの?」
フィッツは、許しを得ることも忘れ、カサンドラを抱きしめている。
自分でも、自分の中に、そうした「衝動」があるとは知らずにいた。
だが、ただ彼女を抱きしめたかったのだ。
「なに、寂しかった? だったら、入ってくればよかったのに」
「そんな破廉恥な真似はしません」
「フィッツならいいって言ってるじゃん」
「なぜ、私ならいいのですか?」
「ん~、下心がないからかな。別に、私の全裸なんて見飽きてるでしょ?」
抱きしめた時と同様、唐突に、パッと体を離す。
ものすごく居心地が悪い感覚があった。
こんな感覚も初めてで、理屈がついてこない。
まるで自分の言動を分析できないのだ。
「私には、下心がないのでしょうか?」
「なに言ってんの、フィッツ」
「下心があるのかないのか判断できません」
「はあ? 下心の意味はわかってるんだよね」
こくり。
フィッツとて、男女の親密な関係がどういうものかはわかっている。
同意のあるなしとは無関係の「下心」が存在するという知識もあった。
だが、自分の感覚が「下心」によるものかは、判断できずにいる。
「先ほど、愛称で呼べるようになったら、姫様と恋仲になれるのだろうかと思っていました。それから以前も言ったように、姫様を抱きしめたり、口づけたり、肌にふれたいと思っています。これは、下心でしょうか?」
「う、うーん……そっか……」
「申し訳ありません。自分で判断ができないのです」
「フィッツさ、ほかの人にも、そういうことしたくなる?」
問われている意味がわからず、フィッツは、少しだけ体を離した。
そうしなければ、カサンドラの顔が見えないからだ。
カサンドラに、呆れたり、怒ったりしている様子はない。
「ほかの者に対しては、必要があるかどうかの判断はしますが、したくなることはありません」
「そんな必要ないから」
「ですが、姫様をお守りするのに……」
「じゃあ、フィッツのためなら、私があいつとキスしてもいいんだね」
ちらっと、想像が頭をよぎる。
「……い、嫌です」
体が、ふるふるっと震えた。
今までも、何度か「嫌だ」と感じた事象はある。
が、これは中でも最大級の「嫌」だった。
不快も入り混じって、背筋が、ざわざわする。
「私も、フィッツが誰かと、そういうことすると、同じように感じるんだよ」
「嫌なのですね」
「嫌だよ」
「わかりました。しません。ですから、姫様もしないでください」
「わかった。しない。でも、フィッツが誰かとしたら、私もするからね」
「肝に銘じておきます」
カサンドラが「しない」と言ったので、ひとまず安心する。
自分がしなければ、彼女もしないのだ。
ならば、たとえ「ティニカ」が必要だとする場合であっても、しないと決める。
彼女が誰かと親密になるのは「絶対」に嫌だった。
最善ではなくとも、カサンドラを守る別の手段を考えればいい。
「それとさ、フィッツ」
「はい、姫様」
「フィッツは下心あってもいいよ。私も前に言ったけど、フィッツなら嫌じゃないからさ。あ~、でも、やっぱりキスとかは愛称で呼べるようになったらだね」
声が笑っている。
カサンドラは自らを「意地悪で性根が悪い」と言うし、優しいという感覚も漠然としたものには違いない。
それでも、フィッツは彼女を「優しい」と感じる。
自然に、笑みを浮かべ、うなずきながら言った。
「全力で努力します」
その条件は「親しい間柄であること」だ。
だから、どうしてもカサンドラを愛称で呼びたい。
なのに、口にしようとすると、言葉がうまく出て来なくなる。
フィッツは、カサンドラが湯を浴びている浴室の前に立っていた。
安全は確保されているため、見張りはいらないのだが、離れがたかったのだ。
もちろん、中に入ることは、もうしない。
カサンドラは「別にいい」と言ってくれているものの、アイシャの言葉を、忘れられずにいる。
(私は、姫様と恋仲ではないし、夫でもない。不必要に裸身を見るのは破廉恥だ)
思いながら、胸のあたりを、ぎゅっと握りしめた。
今まで、考えもしなかったことを、考えてばかりいる。
ティニカでは教わらなかったので、自分で考えるよりほかない。
その中で、思考を中断したくなることも、ままある。
カサンドラといると楽しいのに、苦しい。
愛称で呼びたいのに、呼べない。
それが、なぜなのか、わからなかった。
考えても、答えがみつけられないのだ。
(私は、おそらく、普通ではないのだろうな)
人は、人から産まれる。
親が子を育てる。
親を亡くしたり、親に捨てられたりする子がいるのは知っていた。
だとしても、比喩ではなく事実として「親がいない」子はいない。
だが、フィッツに「親」はいないのだ。
フィッツの中の「当たり前」は、ティニカでのもので、一般的ではないのだと、ようやく気づいている。
そもそも、ほかの基準なんて考えたことがなかった。
ティニカの教えの上に、フィッツの命は成り立っていたからだ。
(姫様がヴェスキルの継承者でなくても、私は、やはり傍にいたいと思っている。ティニカとしては、失敗作だ。お仕えする前なら処分されていた)
ティニカでは、ヴェスキルの継承者を守り、世話をする者が作られている。
候補は複数いるのだが、最も優秀な者しか必要とはされない。
あとあと面倒なことにならないように、選ばれなかった者は処分されるのだ。
フィッツは、自分と同じく作られた者たちが処分されるのを目にしている。
なんとも思わなかった。
不要な者が処分されるのを、ごく自然に受け止めている。
フィッツ自身、カサンドラに「不要」と見なされれば、いつでも自死するつもりでいたのだ。
ティニカの存在理由は、それしかないから。
(しかし、姫様は、私がいいと言ってくれた。私がいなければ困るとも……)
ふっと、胸が軽くなる。
知らず、胸から手を離していた。
たとえティニカとしては出来損ないであっても、カサンドラが必要としてくれるのなら、それだけでいいと思える。
(……愛称で呼べるようになったら……姫様と私は、恋仲になれるのだろうか)
今度は、胸の奥が、ぽっぽっと熱くなってきた。
最近、よくこうなる。
不快ではないが、落ち着かない。
「フィッツ~、いる~?」
「は、はい。います。なにか必要なものがありますか?」
「ごめんごめん、用があったわけじゃなくて、いるかなって思っただけ~」
浴室内から、歌うような声が響いていた。
また、うまく言葉で表現できない感覚が胸に広がる。
無意識ではあるのだが、フィッツの口元に笑みが浮かんでいた。
声が笑っている。
そう感じたのだ。
何年も仕えてきて、その間、カサンドラは、いつも淡々としていた。
とくに女王の他界後は、ひどく冷静で、何事にも動揺しなくなっている。
感情に揺らぎがなく、落ち着いていた。
それまでは、皇太子に会ったあとやなんかには、感情の揺らぎがあったのだ。
明確に言われたわけではないが、皇太子に好意をいだいているのは察していた。
あれほどに無関心さを示されていて、なぜ好意的になれるのかはわからなかったものの、フィッツにとっては関係ない。
関係なく「使命」を果たすべく、行動している。
(私も、姫様ご自身には、無関心だった……? 姫様が言っていたのは、こういうことかもしれない。ヴェスキルの継承者だからと……)
ティニカは「ヴェスキルの継承者」であることを、なにより重要視する。
もとより、ティニカ自体が、ヴェスキルのために作られた家門からだ。
千年ほども続く歴史の中で、その思想は変わらず存在し続けている。
今だって、どこかで「ティニカ」は作られているのだろう。
ティニカは変わらない。
けれど、自分は変わった、と思う。
たとえば、今、正当なヴェスキルの継承者が見つかったので、その者に仕えろと言われても、彼女の傍を離れる気はない。
以前とは、真逆の思考になっている。
別人になろうが、その血の1滴までもがヴェスキルならば、それが、フィッツの仕えるべき理由だった。
なのに、今は、ヴェスキルの血がどうでも、彼女の傍にいたいと感じている。
しかも「仕える」との意識とは、異なる感覚もあった。
「お待たせ、フィッツ」
きゅうっと、胸が締めつけられる。
カサンドラが、自然な笑顔を、フィッツに向けていた。
一緒にいると楽しいのに、苦しい。
当たり前に笑ってくれる彼女に、どう応えればいいのかすら、自分には、わからないのだ。
それは、きっと「普通」ではないからに違いない。
身の程をわきまえるべきなのかもしれないが、できなかった。
「え? フィッツ? どしたの?」
フィッツは、許しを得ることも忘れ、カサンドラを抱きしめている。
自分でも、自分の中に、そうした「衝動」があるとは知らずにいた。
だが、ただ彼女を抱きしめたかったのだ。
「なに、寂しかった? だったら、入ってくればよかったのに」
「そんな破廉恥な真似はしません」
「フィッツならいいって言ってるじゃん」
「なぜ、私ならいいのですか?」
「ん~、下心がないからかな。別に、私の全裸なんて見飽きてるでしょ?」
抱きしめた時と同様、唐突に、パッと体を離す。
ものすごく居心地が悪い感覚があった。
こんな感覚も初めてで、理屈がついてこない。
まるで自分の言動を分析できないのだ。
「私には、下心がないのでしょうか?」
「なに言ってんの、フィッツ」
「下心があるのかないのか判断できません」
「はあ? 下心の意味はわかってるんだよね」
こくり。
フィッツとて、男女の親密な関係がどういうものかはわかっている。
同意のあるなしとは無関係の「下心」が存在するという知識もあった。
だが、自分の感覚が「下心」によるものかは、判断できずにいる。
「先ほど、愛称で呼べるようになったら、姫様と恋仲になれるのだろうかと思っていました。それから以前も言ったように、姫様を抱きしめたり、口づけたり、肌にふれたいと思っています。これは、下心でしょうか?」
「う、うーん……そっか……」
「申し訳ありません。自分で判断ができないのです」
「フィッツさ、ほかの人にも、そういうことしたくなる?」
問われている意味がわからず、フィッツは、少しだけ体を離した。
そうしなければ、カサンドラの顔が見えないからだ。
カサンドラに、呆れたり、怒ったりしている様子はない。
「ほかの者に対しては、必要があるかどうかの判断はしますが、したくなることはありません」
「そんな必要ないから」
「ですが、姫様をお守りするのに……」
「じゃあ、フィッツのためなら、私があいつとキスしてもいいんだね」
ちらっと、想像が頭をよぎる。
「……い、嫌です」
体が、ふるふるっと震えた。
今までも、何度か「嫌だ」と感じた事象はある。
が、これは中でも最大級の「嫌」だった。
不快も入り混じって、背筋が、ざわざわする。
「私も、フィッツが誰かと、そういうことすると、同じように感じるんだよ」
「嫌なのですね」
「嫌だよ」
「わかりました。しません。ですから、姫様もしないでください」
「わかった。しない。でも、フィッツが誰かとしたら、私もするからね」
「肝に銘じておきます」
カサンドラが「しない」と言ったので、ひとまず安心する。
自分がしなければ、彼女もしないのだ。
ならば、たとえ「ティニカ」が必要だとする場合であっても、しないと決める。
彼女が誰かと親密になるのは「絶対」に嫌だった。
最善ではなくとも、カサンドラを守る別の手段を考えればいい。
「それとさ、フィッツ」
「はい、姫様」
「フィッツは下心あってもいいよ。私も前に言ったけど、フィッツなら嫌じゃないからさ。あ~、でも、やっぱりキスとかは愛称で呼べるようになったらだね」
声が笑っている。
カサンドラは自らを「意地悪で性根が悪い」と言うし、優しいという感覚も漠然としたものには違いない。
それでも、フィッツは彼女を「優しい」と感じる。
自然に、笑みを浮かべ、うなずきながら言った。
「全力で努力します」
1
お気に入りに追加
347
あなたにおすすめの小説

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろうでも公開しています。
2025年1月18日、内容を一部修正しました。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する
春夏秋冬/光逆榮
恋愛
クリバンス王国内のフォークロス領主の娘アリス・フォークロスは、母親からとある理由で憧れである月の魔女が通っていた王都メルト魔法学院の転入を言い渡される。
しかし、その転入時には名前を偽り、さらには男装することが条件であった。
その理由は同じ学院に通う、第二王子ルーク・クリバンスの鼻を折り、将来王国を担う王としての自覚を持たせるためだった。
だがルーク王子の鼻を折る前に、無駄にイケメン揃いな個性的な寮生やクラスメイト達に囲まれた学院生活を送るはめになり、ハプニングの連続で正体がバレていないかドキドキの日々を過ごす。
そして目的であるルーク王子には、目向きもなれない最大のピンチが待っていた。
さて、アリスの運命はどうなるのか。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私の推しメンは噛ませ犬◆こっち向いてよヒロイン様!◆
ナユタ
恋愛
十歳の誕生日のプレゼントでショッキングな前世を知り、
パニックを起こして寝込んだ田舎貴族の娘ルシア・リンクス。
一度は今世の幸せを享受しようと割りきったものの、前世の記憶が甦ったことである心残りが発生する。
それはここがドハマりした乙女ゲームの世界であり、
究極不人気、どのルートでも死にエンド不可避だった、
自身の狂おしい推し(悪役噛ませ犬)が実在するという事実だった。
ヒロインに愛されないと彼は死ぬ。タイムリミットは学園生活の三年間!?
これはゲームに全く噛まないはずのモブ令嬢が推しメンを幸せにする為の奮闘記。
★のマークのお話は推しメン視点でお送りします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる