日常系小説

王太白

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 さて、六人がそろって最初に行われた半荘では、征一は六位、茜は四位だった。ミーシャはといえば、ダントツの一位である。
『あ~、リアルのみならず、麻雀でも一位をとれないなんて、おれはダメなニートだ……』
『でも、羅候さんは三位じゃないですか。まだ私よりマシですって。私なんて五位ですよ』
 麗羅が残念そうにつぶやく。
『そうですよ。僕なんて今年受験なのに、国立大学がどれもD判定なんですよ。このうえ、麻雀で二位止まりなんて……』
 竜我雷も残念そうにつぶやくが、麗羅や羅候には嫌味としか聞こえないらしく、『何ですか、それは? 私らをバカにしているんですか?』と反論される。
『まあまあ、同じチーム内で罵りあうのは、やめよう。あたしらがやるべきことは、同じ目標に向かって、お互いを高めあうことだよ。罵りあう暇があるなら、練習あるのみよ』
 ミーシャが仲裁に入ったことで、何とか五人は静まる。
『でさ、あたしが思うに、皆それぞれ弱点があるの。例えば、斉王都くんは字牌ばかり捨てすぎ。正宗ちゃんは逆に字牌ばかり大事にかかえすぎ。とかね』
「でも、俺は字牌が嫌いというか、肌に合わないんですよ。だから、条件反射で捨てちゃうんですよね」
『わたしは漢字が好きなんですよ。できれば万子も捨てたくないけど、東西南北とか發とか中のほうが好きだから、つい持っておきたくなるんですよね』
『だから、どの牌で待っているかが、簡単に読まれるのよ。もっと頭を使いなさい』
 ミーシャが手厳しく言い放つ。
『まずは、えり好みせずに、あらゆる牌を均等に持っておくことが必要ね。それを意識して、半荘をやってみようかな』
 こうして、雀仙で何度も半荘を繰り返す、地道な練習が始まった。しかし、初めの頃は、征一も茜もいつもの癖が出てしまい、字牌ばかり捨てたり、逆に大事にかかえすぎたりすることが目立った。
『はぁ~……。斉王都くんも正宗ちゃんも、本当に学習ってことをしないわね。とにかく、だまされたと思って、今までの戦術をきっぱり忘れて、あたしの言う通りにしてみなさい』
 二人がミーシャの言う通りに打ってみると、打っていくうちに、なかなか相手に振り込まずに済むようになった。
『その調子よ。やればできるじゃない。さあ、何度も練習することで、体と頭にたたきこむのよ!』
 ミーシャはその後、何度も半荘を繰り返した。さすがの征一も、ゲームのしすぎで目が疲れてくる。
(思えば、高校受験の勉強で、理科の苦手分野を克服しようと勉強した際に、夏休みに何日も自宅にこもって、ひたすら理科ばかり勉強し続けたことがあるが、今日のはまさにそれだ。あの頃みたいに、目は寝不足で疲れきっていたけど、不思議と高揚感があるんだよな)
 半荘は夜明け近くまで続けられ、皆が目の疲れを感じた頃になって、ようやくミーシャの『今日はここまでにしよう』という一言で終わりを告げた。征一は大きく伸びをしながら、eスポーツのチーム練習の厳しさを改めて感じつつ、眠りについた。もちろん、夜が明けると、寝坊して遅刻ギリギリで登校したのは、言うまでもない。
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