綾音と風音

王太白

文字の大きさ
上 下
1 / 4

しおりを挟む
「あたしは世界を救うんだ。くらえ! ウィンドストリーム!」
「はぁ? 何、バカなことばかり言ってんのよ? いい加減、目を覚ましな。無限斬撃!」
 洋間の一室で、二人の女の子が、夜中に二台のパソコンのマウスをクリックしながら、それぞれ掛け声をあげる。双子の姉妹、綾音と風音だ。二人とも市立虎之子中学校の一年生だが、性格は真逆である。
綾音は真面目でスポーツ万能で成績優秀という優等生なのに、風音のほうはオンラインゲームやカードゲーム大好きなオタクで、まるでアニメ『ガヴリールドロップアウト』の主人公ガヴリールみたいな自堕落な性格である。ガヴリールよろしく、「自分には異世界を救う義務がある」などと信じてオンラインゲームをやっている困り者だ。テニスの順位やテストの成績も綾音には及ばず、宿題もろくにしない問題児でもある。
 その日も、二人は相部屋になっている八畳の自室で、それぞれに買い与えられたパソコンでオンラインゲームをしていた。風音は異世界を救う勇者パーティーを組み、ひたすらモンスターを狩って財貨やアイテムや経験値を稼いでいるのに対し、綾音はチャットで会話を楽しみながら、お気楽にソロで細々とモンスターを狩っている程度である。職業は、風音が攻撃魔法職で、綾音が戦士職だ。
「あたしは、『大魔法使い』っていう称号にあこがれているのよ。だからこそ、攻撃魔法職を選んだの。ハーマイオニーみたいで、かっこいいじゃん」
「そう? ウチは『封神演義』の黄天化みたいに、剣の宝貝をブンブン振り回すほうが良いわ。剣でモンスターをバッサバッサと斬っていく感覚が、たまんないのよねぇ」
「てか、『封神演義』って何よ? あたしは知らないんだけど」
「もう、風音は相かわらず、本を読まないんだから……。古代中国の殷と周との、仙人どうしの戦争を描いた小説よ」
 このように、あまり似ていない双子の姉妹だったが、後には互いに深く関係することになるとは、このとき予想だにしていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...