夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
上 下
89 / 100
第2章

第27話 解放は手早く

しおりを挟む
エルフやドワーフは直ぐに決めてくれたが、残りの獣人達もやっと全員が奴隷からの解放を望んでくれた。

左手に持ったままだった鍵束に視線を移し、今更なことをナビさんに聞く。

(ナビさん。この鍵束、どれがなんの鍵か教えてもらえるか?)

『情報提示。リング右から奴隷檻スレイケージの共通鍵、森林人ウッドエルフ、個体名エンディウッド・レーブ・オロ・セットに取り付けられた隷属の首輪スレイリングの鍵、狼獣人ウルフェン、個体名ガル・ヴォルフに取り付けられた隷属の首輪スレイリングの鍵、個体名ギル・ヴォルフに取り付けられた隷属の首輪スレイリングの鍵…』

ナビさんから、どれがなんの鍵か報告されていくのだが、20本近い数を全部報告してくるつもりなのか?
全部覚えられるわけないだろうが…

(待て待て、そんなバラバラに言われても覚えられん…せめて種族ごとにまとめて教えてくれよ。)

『内容変更。隷属の首輪スレイリングの鍵番号を、鍵束の右より採番し報告します…』

まとめると、森林人ウッドエルフ達の鍵が2、7番目。山槌人ランドワーフ達の鍵が、5、9、10番目。狼獣人ウルフェン達の鍵が、3、4番目。兎獣人ラビディア達の鍵が、6、8番目だった。

ナビさん聞いた通りに、鍵束から隷属の首輪スレイリングの鍵を取り外していくのだが、見た目がほとんど同じものだ…

もう少しくらい、分かりやすいものにしても良さそうなものなのに、間違えたりしないのだろうか?

それに、他にもよく分からない鍵が何本も残っている…これなんの鍵なんだ?

(ナビさん。残りの鍵はなんの鍵?)

『情報提示。一番長い鍵は奴隷檻スレイケージの予備鍵、左端の小さいものは小金庫の鍵になります。
それ以外は用途不明。この場に無いモノの鍵と推察されます。』

無いものをどうこういっても仕方ないので、檻の鍵と金庫の鍵だけ外して、それ以外は収納しておく。

いつか、何かに使うかも知れないしな。

鍵束を収納し、エルフ達の檻の中に、それぞれの首輪の鍵を投げ入れていく。

一々手渡すのは面倒だし、少し確認したいこともあるからね。

「これで首輪を外し終わったら、扉の前に置いて少し離れて待っていてくれ。」

そう声をかけながら、エルフ、ドワーフ、狼、兎の順に鍵を投げ入れていくと、彼らは自分にはめられた隷属の首輪スレイリングを外して、扉の前に投げ捨てるように置いていった。

そうして全員が自由になったが、心配していたような事は起きなかった。

(ナビさん。こいつらが敵意を向けてきたら…容赦なく毒液の檻ベノムケージの範囲指定をしてくれ。俺も発動は容赦しないから。)

『要請受諾。各個体への警戒を強化します。』

口約束だけで信じるほど、俺はお人好しじゃないからね。

ナビさんに警戒をお願いし、奴隷檻スレイケージの鍵を外していく。

「おめでとう、これで君達は全員自由になったね。
ここから一番近い人間の集落は、この方角に4日くらい歩いたところにあるみたいだから、行くあてがないならそちらに向かえばいい。
食糧や水が必要ならあとで渡してやるから、その前に…」

ナビさんに聞いた一番近い集落は、旅する魔樹大老トラベルトレンダーの丁度反対方向にあるらしい。
道中の食糧が必要なのは分かっているから、渡すのは渡すんだが…

「これ以上我慢出来ん…全員、その匂いをなんとかしてくれ…」

俺の言葉に、エルフ達が一番反応した。
自分の格好が、どんな状態なのか思い出したんだろう。
肌も髪も、垢や皮脂でドロドロ…体臭も近づくと凄いことになっている…

女の人…いや、女の人に限らなくても、耐えられない人は多いだろう…

すぐさま何かをぶつぶつと言い始め、魔法を発動させてしまった。

彼女達に攻撃の意思がなかったので、今回はナビさんも反応せず、魔法の範囲に巻き込まれてしまった。

「「…ヒーリングレイン!」」

エルフ達が揃って魔法を発動させると、彼女達を中心に、上空に雨雲が形成されていき、急に雨が降ってきた。

突然のことで、誰も準備できておらず…俺を含めて奴隷達は全員びしょ濡れになってしまったが、降っているのがただの雨ではないらしく、濡れた奴隷達は全員どんどん綺麗になっていった。

綺麗にするためとはいえ…一言言ってくれてもいいだろう…

「ふぅ…これでさっぱりしたでしょ?人の子よ。改めて礼を言わせてもらうわ。私はセット家が2子、エンディウッド・レー…」
「おいこら!ひょろ長!何しゃがんだ!!」
「邪魔しないでくれませんこと?だから野蛮な石喰いは嫌いなんです!」
「なんじゃと!?」
「なによ!?」

いきなり喧嘩を始めてしまうエルフとドワーフ…
喧嘩するなら、俺に関係ないところでやってくれ…
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...