夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第16話 優子の言い分

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「ぼん?みんなで行ったらダメなの?」

「…は?みん…え?何言ってるんだ?」

優子マメがよく分からないことを言ってきた。

「危ないからダメに決まっているじゃないか…怪我したらどうするんだ?最悪死ぬんだぞ?」

「それはぼんも同じだよね?なんで私達だけダメなの?」

「…そりゃ、そうかもしれないけど…」

俺だって、別に好きで戦っているわけじゃない。
でも、俺以外に誰が戦えるっていうんだ?
俺にしたって戦い慣れているわけじゃないけど、優子マメ達と比べればまだマシだ。
ナビさんの指示があれば、怪我をする事はあっても死ぬ事はないしな。

なにより、せっかく病気が治った優子マメを守るのは、俺の役目だと思っている…

その為なら、多少の怪我くらいどうと…

「ほら、ぼんの悪い癖が出てるよ。」

「…は?癖?何のことだ?」

「私達に相談しないで、勝手に自己完結しようとしてるでしょ!?
前にも言ったよね?家族なんだからまずは相談してよ。一人で抱え込まないでよ。一緒に考えたら、もっといい方法が見つかるかもしれないじゃん。」

優子マメは少し怒っているようで、地団駄を踏むように地面を踏みしめながら言い放つ。

「おい、ちょっ…」

「私も思ってました。にいさんて、なんでも一人で全部背負い込むタイプなんだなーって。」

俺の言葉に被せるように、シーホまでが言ってくる。
何?俺、そんな風に思われてたの?
そんな抱え込むタイプじゃないと思ってたんだけど…あれ?

「そうだよ。ぼんは大体変な風に考えて、勝手な答えを出すからね。
今回のことだって、自分が怪我するのは良いとか思ってるんでしょ?」

「そうですね。多分そう思ってるんでしょうね。」

「…なぁ、それの何がダメなんだ?
優子マメが怪我をしたり、ましてや死んだりするなんて、俺は絶対に嫌だし、俺だけならなんとか生き残る事も出来るって、さっきの戦いで分かっただろ?
それなのに何が…」

「それだよ!」

何がだ…頰を膨らませた優子マメは、こちらに近づいて来ると、抱いていたしろまをシーホに渡して詰め寄って来る。

「なんで自分は心配されないと思ってるのかな!?ぼんが怪我したら私もしろまも、でっかちゃんもシーちゃんも、みんな心配するに決まってるよね!?」

人差し指で、俺の胸をつきながら優子マメは続ける。

「毎回毎回、大怪我して帰って来るくせに、何が生き残ることができるよ!偉そうな事言わないで!!
大体ね、守ってくれなんて一度も頼んでないでしょ!?」

…確かに頼まれたわけじゃないが…
でも、こっちの世界に来てからは、ずっとそうやってきたから、それが普通になっていた…
それと、そんなに毎回怪我はしてないとは思う…
最近たまたま重なっただけだ…

「そもそもさ。ぼんには回復魔法とか使えないよね?それなのに、私から離れている時に怪我したらどうするの?動けなくなったらどうするの?」

「それは…」

怪我して動けなくなる可能性を考えなかったわけじゃない…
だけど、他に選択肢がなかったんだから仕方ないと思っている。

それに、ハボック村みたいな定住している集落もあるんだ、多頭鰐スクナダイルみたいな明らかにヤバ気な魔物モンスター、いるとしても森の奥とか迷宮ダンジョン的なところだと思っていたから、こんな開けた場所で出会うなんて思わないだろ?

…そうだよ、たまたま運が悪かっただけで、元々は怪我する予定なんてなかったし、毒液の檻ベノムケージで囲っておけばほとんど大丈夫なんだし、最悪待ちに徹すれば遠距離で攻撃されない限り問題はな…

「ほら、また勝手に結論出してるでしょ!?」

優子マメに腕を揺すられてしまった。

「わか…分かったから揺らすな。」

「分かったなら、もう一人で行くなんて言わない事!行くならみんな一緒に行くからね。」

「いや、それは別のはな…」

「一緒に行くの!」

無理矢理言いくるめられた感があるが、もういいや…言い返しても喧嘩になるだけな気がするし…
ナビさんに作戦考えてもらえば、なんとかなるだろ…

「…分かったよ…ただ、俺の指示には従ってもらうからな?」

「ん。」

満足そうに頷く優子マメだったが、わざわざ危険な所に行くってのに、何が嬉しいのかまったく理解出来なかった。

ただ、これで俺のやることが増えてしまったのは確実だ。

それについては、魔物モンスターの所に向かいながら、ナビさんと相談するしかないかな…

優子マメ達と一緒に、残った魔物モンスターのところに向かって歩き出しすのだが、今のところ不安しかないよ…
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