夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第46話 接敵直前…

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「ノノーキル!ちょっと手を貸してくれ!」

腰が抜けて立ち上がれないキャナタは、地面を這う様にして村の入り口に到着する。

「キャナタ?おいおい、どうしたんだ?何かあったのか?」

ノノーキルが、そんなキャナタに近寄り、肩を貸して立ち上がらせる。

「あったんだよ!お前らみんな、今すぐ村の中に入れ!」

キャナタは、青い顔をそう叫ぶ。
他の村人は、なにが起きているのか分からず、皆首を傾げていた。

「キャナタ…いきなりなにを言ってるんだ?もうすぐ定期便が到着するんだぞ?土煙が上がってるから何かあったら大変だって、みんな集まったんじゃないか…それを…」

「だからだよ!今、ボンが魔法を使ったんだ!俺には何の魔法か分からなかったが、あれは俺たちじゃどうにも出来ない!巻き込まれる前に、早く村の中に入ってくれ!!」

泣きそうな顔でキャナタは叫ぶ。
その必死さに、集まっていた村人は、少しづつ村の中に戻って行った。
キャナタも、ノノーキルに肩を借りながら、村の中に急いで戻って行った。

ただ1人、門番をしているレクレットだけは、門の外に残ると言って聞かなかった…


門の前に、レクレットさんだけが残り、他の人が居なくなったのを見て、俺は彼に近づいていく。

「止まれ!ボン!お前、いったい何をした!!」

まぁそうなるよね…レクレットさん達からしたら、無茶なことをしている様にしか見えないだろうから…

「村を守るために、俺がやれることをやってるんです。それがなにか?」

「すまないが信用できん!キャナタの怯えようは相当…」

「問答している時間はありません。向こうを見て下さい。もうすぐ馬車が見えてきます。そして、その向こうに…」

ドドドドドド…

足の裏に、地響きの様な振動を感じ始めた…

「おい…ボンお前…」

『情報提示。対象集団の速度上昇。5分で到達します。』

ナビさんの声に俺も顔を向けると、木々の向こうに、土煙が迫ってきているのが見えた。

『情報提示。敵性体の種類を提示します。追跡狼チェルフ快速蜘蛛スピーダー走小鬼ゴブラン走大鬼オーラン…』

次々と報告される魔物モンスターの情報に、俺は頭が痛くなった。
今まで会っていないゴブリン系や、オーガ系も魔物モンスターも、相当な数がいる…
何の準備もしていなかったら、どれだけの被害が出ていたか分からない…

「もうすぐ来ますね…定期便の人達は…俺が何とかします。レクレットさんも早く中へ入ってください。」

「…いや、俺はここを守る。それが俺の仕事だ…」

「レクレットさ…分かりました。その代わり、定期便の人達を誘導してあげてください。死なせたくないですから…」

レクレットさんを説得するのは諦め、俺は門から離れるように街道を走る。
もう、話をしている時間はない…

(ナビさん、街道の左右に毒液の檻ベノムケージを展開させる。範囲指定は任せるからね。)

『要請受諾。展開範囲確定しました。』

「…毒液の檻ベノムケージ!」

街道の左右に、膝下高の薄黄色の毒液の壁が出来上がっていくのだが、毒蔦を成長させた時と同じく、体に痺れが走る…さっきよりも辛い…
少し頭痛もしてきた…

『情報提示。展開完了しました。』

ナビさんに言われて、力を込めるのをやめるが、頭痛は治るどころか酷くなっていく…

…ガラガラガラガラ!

馬車が走る音も聞こえてきた…
顔を上げると、まだ小さくだが、確実にこちらに近づく小さな点が見える。

その後ろには、大小様々な魔物モンスターらしき姿も…

(ナビさん。魔物モンスターと馬車の間はどのくらいの距離がある?)

『回答提示。20m程度あります。』

(敵の総数は?変化してるか?)

『回答提示。総数186…1体倒されましたので185です。』

護衛の冒険者が狩っているのか?
でも、元の数より増えているようだ…

『情報提示。最終工程の準備をして下さい。』

考えるのは後…全部片付けて、それからでいい。
俺は門から離れる様に少し進むと、街道の左右に毒蔦縛ポイズンアイビーを薄く広く展開、その上に毒麻痺霧ポイズンミストで見えない壁を作り出す。
後はタイミングだけ…

ガラガラガラガラ!!

「…危ないぞ!!逃げろ!!!!」

御者台に座っていた男が、俺に気がついたらしく声を上げる。
もう逃げられる状況じゃないけどな…

馬車が通れる様に道を開けると、御者台の男が尚も声を上げた。

「ダメだ!!魔物モンスターの群れだぞ!!逃げてくれ!!!」

逃げた方がいいのは知っている…俺も何でこんなことをしているのか不思議だけど…もう逃げるには…遅いだろ?

「この先は安全だ!!スピードを落としてくれ!!」

御者台の男に聞こえるように、出来るだけ大声を出した。
その声が聞こえたのかはわからないが、馬車は俺の横を猛スピードで駆け抜けていく。
止まれないかも知れないけど、そこまで責任持てないから…知らん!!

「ナビさん!頼んだよ!!…毒液の檻ベノムケージ!!!」

自分を中心に魔法を展開する。
もう、魔物モンスターの顔もはっきり見て取れる距離だ…
ジワジワと薄黄色の毒液が地面を這い、5mほど離れた位置で立ち上がり始めた。



ーーーー
作者です。
これで準備は終わりました。
準備だけで時間使い過ぎですね…
感想その他、お時間あれば是非。
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