16 / 100
第1章
第12話 久しぶり
しおりを挟む
快速蜘蛛を無力化したのと同じように、豚男も毒蔦で無力化し、ストレージリングに収納する。
と、ズシリとリングの重さが増したように感じた。
豚男は相当重い様だ。
動くのに支障をきたすほどでは無いけど、放置するメリットもないし、魔石を分離して入れ替えようとリスト表示を確認する。
「ん?」
リストを確認していて思わず声が出た。
リストには、[豚男(生)]の表示が増えていたんだか、今までと違う[生]の表示に疑問を抱いたからだ。
それに、追跡狼や快速蜘蛛とは違い、魔石の項目がない…何度か確認したが、なぜだか表示が見当たらない。
(ナビさん、豚男から魔石を分離出来ないんだが、どしたらいいんだ?)
『回答提示。豚男は魔物ではないため、魔石は存在しません。
生体活動を止めるためには、内臓の分離を行う必要があります。
確実な部位は、心臓若しくは脳になるため、それらの分離を推奨します。』
…うん?内…え?
(ナビさん、内臓って豚男の?)
『回答提示。そうです。該当生物の詳細を見ようと念じてください、分離可能な部位が表示されます。魔石の分離と同様に各生体部位についても分離可能です。』
ナビさんに言われ、豚男の詳細を見ようと念じてみると、心臓、肺、胃、肝臓…見知った各臓器の名前と様々な骨や筋肉の名前が、ずらずらっと表示される。
一応追跡狼達も確認してみると、同じように大量の表示がされる。何とはなく見ていると、心臓や肝臓、他にもいくつかの主要な臓器が見当たらないことに気が付いた。
(ナビさん、魔物には心臓とかの表示がないみたいなんだが、なんでだ?)
『回答提示。魔物化は、生体魔素転換路が暴走し、体内の主要臓器を取り込み魔石化する事で起きるため、その際取り込まれた臓器は魔石と同化しているためです。』
ふむ…魔石が臓器の代わりって言ってた気がするし、それを分離したら確かに死ぬのも理解出来た。
…しかし、問題は生き物、今なら豚男をどう処理するかなんだよな…
いつまでもストレージリングの中に入れておくわけにもいかないし、どこかのタイミングで内臓を分離して殺すしかないのか?
(ナビさん、豚男を無力化するのに、内臓の分離以外で何か方法はないのかな?)
『回答提示。頭や四肢の分離等、物理的に動けなくすることでも対応可能です。』
うん、確実にもっとグロい事になるね…
どうするかな…
セオリー通りなら、人の多い街に行けば冒険者とかが集まる組合的なものがあるはずだから、そこで解体を依頼をすればいいと思っていたんだが、生きてる状態で引き受けてくれるんだろうか?
流石に生きたままじゃ解体には出せない気がするんだよな…
そもそも、豚頭だとしても、獣人にカテゴライズされる種族だろ?…今更かもしれないが、倫理的にどうなんだ?
(ナビさん、確認させて。豚男は獣人らしいけど、獣人も人の一種だよな?人だとしたら殺人で捕まったりしないのか?)
『回答提示。豚男は獣人種で間違いありません。国家によって多少の金額の差異はありますが、各国で討伐指定をされている種族であり、生体活動を止めてもマスターが処罰されることはありません。』
(そんなのありなのか?)
『回答提示。地球とは違いじじ…』
「ん?ナビさん?」
「ハロー、僕だよ!」
「うわ!…え?ナフタ!?え?どこから…」
急にナビさんの音声が途絶えたため、反射的に空に視線を移すと、耳元で声がして驚いた。
急に話しかけられて、その場で飛び上がってしまったが、声のした方を見ると見知った顔、髪を名乗る少年ナフタが笑顔で立っていた。
「はっはっは、ここは僕の管理する星だからね。それより、ボン君が無駄なことをNB- 7653228、今はナビだっけ?に聞いてるから僕がわざわざ顕現してあげたのさ。」
うん、意味が分からない。
ナフタが急に現れたのは良しとしても、無駄なこと?
「僕が無駄って言ったのは、地球的な倫理観のことさ。」
相変わらず、ナフタは人の思考を勝手に読んでくる…まぁいいか。
「基本的な倫理観は変わらないんじゃないのか?文明があれば法律的なものもあるだろうし、人を殺して許されることはないと思うんだが?」
「それが既に地球的いや、現代日本的なんだよ。この星の文明レベルは、まだそんなにおかしなものにはなっていないし、そもそも成り立ちが違うんだから、君の常識がそのまま通用する訳ないでしょう?」
…よく分からないが、何故か呆れられた…とりあえず理由を聞いた方が良さそうだな。
「例えばだけど、君の住んでた日本って国の法律を覚えているかい?」
全て暗記しているかと言われれば、答えは否だが、ある程度は知っているつもりだ。
「別に全部覚えている必要はないけど、その中で他の人間を殺した場合はどう定義されているか分かる?」
普通なら捕まって刑務所行きか死刑じゃないのか?
「そう、何かしらの罰があるけど、内容に決まりはないよね?それじゃ、500年前だとどうだろう?」
500年前だと…戦国時代か?
国同士の戦も多かっただろうけど、それ以外での殺人はアウトだろうし、やっぱり捕まるんじゃないのか?
「ブッブー!正解はほとんど捕まらないでしたー。」
ふーん…科学技術が発展してないから捜査も今ほどの技術がないだろうし、当然と言えば当然か?
でも、捕まる奴も居たはずだよな?
「技術的なこともあるけど、現代日本の様な警察官なんていないし、侍なんかに捕まると簡単に殺されるから、逃げる方も必死だったんだよね。
そもそもがそこら中で殺し合いが起きていたんだから、死がもっと身近なことだったんだ…ま、それはいいや。
次は1000年前、当時の日本の法を答えられるかな?」
1000年前?…何時代だ?
そんな前のこと知らんし…
「ぷふ、思考読まれるのに慣れ過ぎて、喋らなくなってる。」
ナフタが吹き出すが、そんな事よりも、何が言いたいんだか真意が読めない…
「くくく…まったく、君は適応するのが早いよねー。本当に変わってるよ。」
ナフタに変わっていると言われたが、そんな自覚はないしナフタには言われたくない。
「俺のことはいいから、話を戻してほしいんだが?」
「ふふ、そうだねー…そうそう、法なんて曖昧なものは、その時の支配階級の人間が勝手に決めているものなんだよ、って話だったね。
それじゃ、さっきの続きだよ。この星の文明は、1000年くらい昔の地球文明に近いものがあるのは前に話したよね?」
こちらに来る前、ナフタが画面に現れた時にそんなことを言っていた気がするが…
あれ?そんな話をしていたんだったか?
「この星は地球に近い環境で、特異物質の魔素が自然に発生する様に改造した星なんだけど、僕の目論見だと魔素を利用した色んな技術が発展する予定だったんだよね。
だけど、地球には居ない魔物や魔獣が魔素の影響で出てきちゃったから、思った様な発展をしていかないわけさ。」
ナフタは、どこからか出した丸椅子に腰を下ろすと、そのまま話を続ける。
「まぁ、魔物や魔獣なんかが人種の共通の敵みたいな認識になってるから、地球とは違って人種同士の争いは少ないんだよ。」
手に持ったティーカップを口に運び、ナフタは一息つく。
どこから出したのかは指摘するだけ無駄だ。
「今は、王を自称する人間が土地を奪い合う地球と似た時代なんだけど、大半の国は協力し合っているし、地球に比べたら人種同士は仲良く暮らしていると言っていいかな。
それでもほとんどの国は君主政をとっているし、争い自体がないわけじゃないんだけどね。」
ナフタがこの星の事を教えてくれる、独演会みたいなものが始まった。
なんか元の話から脱線してる気がするけどね…
ーーーー
作者です。
神様再登場、多分寂しがりやなんだと思います。
感想その他、お時間あれば是非。
と、ズシリとリングの重さが増したように感じた。
豚男は相当重い様だ。
動くのに支障をきたすほどでは無いけど、放置するメリットもないし、魔石を分離して入れ替えようとリスト表示を確認する。
「ん?」
リストを確認していて思わず声が出た。
リストには、[豚男(生)]の表示が増えていたんだか、今までと違う[生]の表示に疑問を抱いたからだ。
それに、追跡狼や快速蜘蛛とは違い、魔石の項目がない…何度か確認したが、なぜだか表示が見当たらない。
(ナビさん、豚男から魔石を分離出来ないんだが、どしたらいいんだ?)
『回答提示。豚男は魔物ではないため、魔石は存在しません。
生体活動を止めるためには、内臓の分離を行う必要があります。
確実な部位は、心臓若しくは脳になるため、それらの分離を推奨します。』
…うん?内…え?
(ナビさん、内臓って豚男の?)
『回答提示。そうです。該当生物の詳細を見ようと念じてください、分離可能な部位が表示されます。魔石の分離と同様に各生体部位についても分離可能です。』
ナビさんに言われ、豚男の詳細を見ようと念じてみると、心臓、肺、胃、肝臓…見知った各臓器の名前と様々な骨や筋肉の名前が、ずらずらっと表示される。
一応追跡狼達も確認してみると、同じように大量の表示がされる。何とはなく見ていると、心臓や肝臓、他にもいくつかの主要な臓器が見当たらないことに気が付いた。
(ナビさん、魔物には心臓とかの表示がないみたいなんだが、なんでだ?)
『回答提示。魔物化は、生体魔素転換路が暴走し、体内の主要臓器を取り込み魔石化する事で起きるため、その際取り込まれた臓器は魔石と同化しているためです。』
ふむ…魔石が臓器の代わりって言ってた気がするし、それを分離したら確かに死ぬのも理解出来た。
…しかし、問題は生き物、今なら豚男をどう処理するかなんだよな…
いつまでもストレージリングの中に入れておくわけにもいかないし、どこかのタイミングで内臓を分離して殺すしかないのか?
(ナビさん、豚男を無力化するのに、内臓の分離以外で何か方法はないのかな?)
『回答提示。頭や四肢の分離等、物理的に動けなくすることでも対応可能です。』
うん、確実にもっとグロい事になるね…
どうするかな…
セオリー通りなら、人の多い街に行けば冒険者とかが集まる組合的なものがあるはずだから、そこで解体を依頼をすればいいと思っていたんだが、生きてる状態で引き受けてくれるんだろうか?
流石に生きたままじゃ解体には出せない気がするんだよな…
そもそも、豚頭だとしても、獣人にカテゴライズされる種族だろ?…今更かもしれないが、倫理的にどうなんだ?
(ナビさん、確認させて。豚男は獣人らしいけど、獣人も人の一種だよな?人だとしたら殺人で捕まったりしないのか?)
『回答提示。豚男は獣人種で間違いありません。国家によって多少の金額の差異はありますが、各国で討伐指定をされている種族であり、生体活動を止めてもマスターが処罰されることはありません。』
(そんなのありなのか?)
『回答提示。地球とは違いじじ…』
「ん?ナビさん?」
「ハロー、僕だよ!」
「うわ!…え?ナフタ!?え?どこから…」
急にナビさんの音声が途絶えたため、反射的に空に視線を移すと、耳元で声がして驚いた。
急に話しかけられて、その場で飛び上がってしまったが、声のした方を見ると見知った顔、髪を名乗る少年ナフタが笑顔で立っていた。
「はっはっは、ここは僕の管理する星だからね。それより、ボン君が無駄なことをNB- 7653228、今はナビだっけ?に聞いてるから僕がわざわざ顕現してあげたのさ。」
うん、意味が分からない。
ナフタが急に現れたのは良しとしても、無駄なこと?
「僕が無駄って言ったのは、地球的な倫理観のことさ。」
相変わらず、ナフタは人の思考を勝手に読んでくる…まぁいいか。
「基本的な倫理観は変わらないんじゃないのか?文明があれば法律的なものもあるだろうし、人を殺して許されることはないと思うんだが?」
「それが既に地球的いや、現代日本的なんだよ。この星の文明レベルは、まだそんなにおかしなものにはなっていないし、そもそも成り立ちが違うんだから、君の常識がそのまま通用する訳ないでしょう?」
…よく分からないが、何故か呆れられた…とりあえず理由を聞いた方が良さそうだな。
「例えばだけど、君の住んでた日本って国の法律を覚えているかい?」
全て暗記しているかと言われれば、答えは否だが、ある程度は知っているつもりだ。
「別に全部覚えている必要はないけど、その中で他の人間を殺した場合はどう定義されているか分かる?」
普通なら捕まって刑務所行きか死刑じゃないのか?
「そう、何かしらの罰があるけど、内容に決まりはないよね?それじゃ、500年前だとどうだろう?」
500年前だと…戦国時代か?
国同士の戦も多かっただろうけど、それ以外での殺人はアウトだろうし、やっぱり捕まるんじゃないのか?
「ブッブー!正解はほとんど捕まらないでしたー。」
ふーん…科学技術が発展してないから捜査も今ほどの技術がないだろうし、当然と言えば当然か?
でも、捕まる奴も居たはずだよな?
「技術的なこともあるけど、現代日本の様な警察官なんていないし、侍なんかに捕まると簡単に殺されるから、逃げる方も必死だったんだよね。
そもそもがそこら中で殺し合いが起きていたんだから、死がもっと身近なことだったんだ…ま、それはいいや。
次は1000年前、当時の日本の法を答えられるかな?」
1000年前?…何時代だ?
そんな前のこと知らんし…
「ぷふ、思考読まれるのに慣れ過ぎて、喋らなくなってる。」
ナフタが吹き出すが、そんな事よりも、何が言いたいんだか真意が読めない…
「くくく…まったく、君は適応するのが早いよねー。本当に変わってるよ。」
ナフタに変わっていると言われたが、そんな自覚はないしナフタには言われたくない。
「俺のことはいいから、話を戻してほしいんだが?」
「ふふ、そうだねー…そうそう、法なんて曖昧なものは、その時の支配階級の人間が勝手に決めているものなんだよ、って話だったね。
それじゃ、さっきの続きだよ。この星の文明は、1000年くらい昔の地球文明に近いものがあるのは前に話したよね?」
こちらに来る前、ナフタが画面に現れた時にそんなことを言っていた気がするが…
あれ?そんな話をしていたんだったか?
「この星は地球に近い環境で、特異物質の魔素が自然に発生する様に改造した星なんだけど、僕の目論見だと魔素を利用した色んな技術が発展する予定だったんだよね。
だけど、地球には居ない魔物や魔獣が魔素の影響で出てきちゃったから、思った様な発展をしていかないわけさ。」
ナフタは、どこからか出した丸椅子に腰を下ろすと、そのまま話を続ける。
「まぁ、魔物や魔獣なんかが人種の共通の敵みたいな認識になってるから、地球とは違って人種同士の争いは少ないんだよ。」
手に持ったティーカップを口に運び、ナフタは一息つく。
どこから出したのかは指摘するだけ無駄だ。
「今は、王を自称する人間が土地を奪い合う地球と似た時代なんだけど、大半の国は協力し合っているし、地球に比べたら人種同士は仲良く暮らしていると言っていいかな。
それでもほとんどの国は君主政をとっているし、争い自体がないわけじゃないんだけどね。」
ナフタがこの星の事を教えてくれる、独演会みたいなものが始まった。
なんか元の話から脱線してる気がするけどね…
ーーーー
作者です。
神様再登場、多分寂しがりやなんだと思います。
感想その他、お時間あれば是非。
0
お気に入りに追加
437
あなたにおすすめの小説
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる