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エレノアへの思い
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俺はディラン=マックレーン。
先日、エレノアがザック子爵からの乱暴でひどく傷ついた姿を見て、これまでの自分の不甲斐なさを真正面から受け止めた。
エレノアは爵から受けた衝撃と、これまでの蓄積した疲労や遭難時の怪我により、眠り続け数日経つが目を覚まさない。
その間に俺は軍に入隊し訓練生として生活を送っている。
昨日、イリスから彼女が寝ている合間に不思議な話をしたと報告を受けた。
たしかに、彼女が時折聞いたことのない言語を話すのは俺も気になっていたし、
手話やそろばん、料理にピアノが出来ることに今更ながら違和感を持った。
これが、父上の手紙に書いていたエレノアの事情なのだろうか。
父上には言えて、俺には教えられない秘密なのかもしれない。
遭難中に涙を流しなら彼女は父上を愛していたと語った。
自分が報われない愛情を持っていても構わないほどに。
亡き夫の恩返しのために、元夫の遺言通り息子の俺と結婚し、元夫の尊厳を守るため、俺からも世間からも中傷を受けた。
それでも、エレノアは妹のクロエのために体を張ってエリザベスの罪を暴き、イリスを奴隷に迎えた。
自ら事業を経営し、亡き離縁後の夫の領地の民に慕われているエレノア。
愛する夫から送られた『友へ』と刻印された指輪を愛しそうに月明かりに照らす姿は、儚くて美しい女性そのものだった。
若くて美しいエレノアに妻としての愛情を注がなかった父と、そんな夫を亡くした後も思い続けるエレノア。
二人の強い結びつきに嫉妬という感情が沸き上がってくる。
あの指輪を眺めている時間、エレノアの心は父に独占されているのだから。
今の俺ではエレノア一瞬の合間でもあんな風に彼女の心を独占出来ないだろう。
胸を締め付けられ、苦しい。
エレノアに関して他にも気が付いたことがある。
普段は緊張感を上げるためなのか、わざわざ濃い化粧を施し、女性らしさを振りまくようなドレスに身を包んでいる。
しかし、本来の彼女の素顔は化粧など必要ないほど美しいのを俺は知っている。
あどけなさが残る表情を隠すためでもあるんだろう。
彼女の化粧やドレスは武装と言っても良いのかもしれない。
そして、その武装は毒の様だ。
毒は毒でも中毒性のある品格をまとっている。
武装した彼女は世間で言う、高嶺の花を実体化した姿だと思う。
華麗に武装した姿、反対に可愛らしく美しい素顔。
聡明な頭脳、気高い気品、他者を慈しむ優しさ…。
こんな素晴らしい女性を愛さない男はいないだろう。
父上は例外だが、世間がエレノアの本来の姿を認識すれば例え今婚姻中であっても割り込んでくる男は現れる。
レイズも該当するが、彼は若いながらも常識のある男だ。
今は強引に迫る事はないが、立場が変わり爵位を授与されれば遠慮なしにエレノアをさらおうとするはずだ。
俺は、エレノアを愛してしまった。
いや、先ほども考えた通り、彼女を愛さない男はいない。
それに気が付くのが遅すぎた。
後悔ばかりだ。
何故あんな態度をとってしまったのだ。
何故おれはこんなに愚か者なんだ。
こんな俺ではエレノアをつなぎ留められない。
父上が最後の力を使って俺に会わせてくれた女神は父との契約が終わればここから去ってしまう。
これは父がくれた息子の俺がまっとうな人生を歩む最後のチャンスだ。
エレノアの横に立っても見劣りしない、エレノアに認めてもらう男にならなければならない。
時間がない。
俺のすべてを叩きなおす場所は軍隊しかない。
この国の軍に入隊して上位の階級に上がれば、家の格も保て、エレノアも不毛な苦労をせずにすむ。
軍隊に入れば俺は確実に地獄を見るだろう。
しかしそれは今まで好き勝手やってきたツケだ。
エレノアに愛を伝え、認めてもらう為なら地獄でも耐えて見せる。
先日、エレノアがザック子爵からの乱暴でひどく傷ついた姿を見て、これまでの自分の不甲斐なさを真正面から受け止めた。
エレノアは爵から受けた衝撃と、これまでの蓄積した疲労や遭難時の怪我により、眠り続け数日経つが目を覚まさない。
その間に俺は軍に入隊し訓練生として生活を送っている。
昨日、イリスから彼女が寝ている合間に不思議な話をしたと報告を受けた。
たしかに、彼女が時折聞いたことのない言語を話すのは俺も気になっていたし、
手話やそろばん、料理にピアノが出来ることに今更ながら違和感を持った。
これが、父上の手紙に書いていたエレノアの事情なのだろうか。
父上には言えて、俺には教えられない秘密なのかもしれない。
遭難中に涙を流しなら彼女は父上を愛していたと語った。
自分が報われない愛情を持っていても構わないほどに。
亡き夫の恩返しのために、元夫の遺言通り息子の俺と結婚し、元夫の尊厳を守るため、俺からも世間からも中傷を受けた。
それでも、エレノアは妹のクロエのために体を張ってエリザベスの罪を暴き、イリスを奴隷に迎えた。
自ら事業を経営し、亡き離縁後の夫の領地の民に慕われているエレノア。
愛する夫から送られた『友へ』と刻印された指輪を愛しそうに月明かりに照らす姿は、儚くて美しい女性そのものだった。
若くて美しいエレノアに妻としての愛情を注がなかった父と、そんな夫を亡くした後も思い続けるエレノア。
二人の強い結びつきに嫉妬という感情が沸き上がってくる。
あの指輪を眺めている時間、エレノアの心は父に独占されているのだから。
今の俺ではエレノア一瞬の合間でもあんな風に彼女の心を独占出来ないだろう。
胸を締め付けられ、苦しい。
エレノアに関して他にも気が付いたことがある。
普段は緊張感を上げるためなのか、わざわざ濃い化粧を施し、女性らしさを振りまくようなドレスに身を包んでいる。
しかし、本来の彼女の素顔は化粧など必要ないほど美しいのを俺は知っている。
あどけなさが残る表情を隠すためでもあるんだろう。
彼女の化粧やドレスは武装と言っても良いのかもしれない。
そして、その武装は毒の様だ。
毒は毒でも中毒性のある品格をまとっている。
武装した彼女は世間で言う、高嶺の花を実体化した姿だと思う。
華麗に武装した姿、反対に可愛らしく美しい素顔。
聡明な頭脳、気高い気品、他者を慈しむ優しさ…。
こんな素晴らしい女性を愛さない男はいないだろう。
父上は例外だが、世間がエレノアの本来の姿を認識すれば例え今婚姻中であっても割り込んでくる男は現れる。
レイズも該当するが、彼は若いながらも常識のある男だ。
今は強引に迫る事はないが、立場が変わり爵位を授与されれば遠慮なしにエレノアをさらおうとするはずだ。
俺は、エレノアを愛してしまった。
いや、先ほども考えた通り、彼女を愛さない男はいない。
それに気が付くのが遅すぎた。
後悔ばかりだ。
何故あんな態度をとってしまったのだ。
何故おれはこんなに愚か者なんだ。
こんな俺ではエレノアをつなぎ留められない。
父上が最後の力を使って俺に会わせてくれた女神は父との契約が終わればここから去ってしまう。
これは父がくれた息子の俺がまっとうな人生を歩む最後のチャンスだ。
エレノアの横に立っても見劣りしない、エレノアに認めてもらう男にならなければならない。
時間がない。
俺のすべてを叩きなおす場所は軍隊しかない。
この国の軍に入隊して上位の階級に上がれば、家の格も保て、エレノアも不毛な苦労をせずにすむ。
軍隊に入れば俺は確実に地獄を見るだろう。
しかしそれは今まで好き勝手やってきたツケだ。
エレノアに愛を伝え、認めてもらう為なら地獄でも耐えて見せる。
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