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石鹸で手を洗え
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エレノアに握られた手をぼんやり眺める俺。
あの後しばらく手を洗うことが出来なかった。
入浴時、流石に手を洗ったが何と言うか、物凄く名残惜しかった。
寝る前も、エレノアに触られた手の感触を思い出してしまう。
それと同時に彼女の香りやあの屈託のない笑顔が頭の中で何度も再生してしまうのだ。
何でこんなに動揺しているんだろう…。
手話を習ったらまた今日みたいな機会があるんだろうか?
そんな不純でよこしまな気持ちが湧き出る自分が嫌になる。
次の日、外出予定ではないのにエルヴィスが屋敷に来た。
「やっほ~、遊びに来ました~!
あれ~みんな揃って何してるの~?」
まずい、面倒な奴が来た。
「手話の勉強会だ。エレノアが先生で私たち全員が生徒だ。」
イリスが真面目に答える。
「えええ~?ディルも生徒?あのディルが?」
「うるさい。邪魔するなら帰れ。」
「何々?楽しそうじゃん。僕も生徒になろうっと!」
「遊びじゃない!これは大切な対話の一つなんだ。
俺たちは真剣に学んでいる。
手話を学んでクロエと円滑に話をするためにやっているんだ。」
「ええ?じゃあなおさら僕も参加させてよ。
僕だってクロエちゃんとお話ししたいし。
ね、クロエちゃん?あ、筆談は出来るんだよね。
これ、見て?」
慌てて書いた筆談のメモには『僕もしゅわに混ぜて』と書いてある。
エルヴィスの字は相当に綺麗だ。
エルヴィスは何をやらせてもすぐ上達するのを俺は知っている。
学生時代成績は中の下で俺より低かったが、実力を何故か試験で出し切らない男だった。
そんなエルヴィスが本気を出して手話を学べば俺はエレノアから落第生と思われるのではないかと不安になった。
『良いですよ。エルヴィス様も一緒だと私も嬉しい。』
とクロエが返信していた。
クロエ…、優しい事は良い事だが、今は違うんだ…。
「まあまあ、クロエもこう言ってますし、手話ができる人材が多いほど私はありがたいです。
エルヴィス様も私の指導でよければどうぞ参加してください。」
ああああ、エレノアまで…。
イリスは無言でじっとエルヴィスを見つめている、いや睨んでいる?
こんな時にイリスの無礼すぎるイリス節があればいいのに今日は口数が少ない。
「やった~エレちゃんやっさし~!
エレちゃん先生、よろしくお願いします!」
「はいはい…。
じゃあ、今日のテキストをエルヴィス様にもお渡ししますね。」
「は~い!」
何と言うか、モヤモヤする。
今までエルヴィスが調子よく女性と親しくしていても全く気にならなかったのに。
何でエレノアが相手だとこんなにイライラするんだ?
テキストに沿って手話の学習を進めていく。
エルヴィスはもうふざけずに真剣モードに入っている。
黙っていればなかなかにいい男なんだがな。
キリの良いところまで終えたので、今日の学習会は終了となった。
今日の日のためにエレノアが茶菓子を用意してくれていた。
それを皆で囲んで食べる。
「ほんっとうにエレちゃんの作るものって美味しいよね~。
手話の手つきも何と言うか、繊細で品があるし。
ちょっと手、見せてくれる?」
「普通ですよ。料理するから爪は派手に飾りもしてないですし。
まあ、もともと荒れにくいのはありますが。」
エレノアがエルヴィスに手を見せる。
その時、エルヴィスがエレノアの手に触れた。
「ん~、やっぱ何か綺麗だよね。
ちゃんとケアしているからかなあ?
爪先も綺麗だもんね。」
エレノアの爪をエルヴィスの指先がなぞった。
その瞬間、俺は慌てて立ち上がりエルヴィスとエレノアの間に割って入った。
「何をしているんだ?」
エルヴィスの手を掴む。
自分でも感情が高ぶっているのが分かる。
「いや、エレちゃんの爪が綺麗だなってちょっと触っただけだよ。
ディル、その手痛いよ。」
「エレノアに触るんじゃない。分かったか?」
「わ、分かったよ。そんなに怒らないでよ。
エレちゃん、ごめんね。」
「い、いいえ。大丈夫ですよ。」
ダメだ、イライラがおさまらない…。
「エルヴィス、手を洗え。
エレノアもちゃんと手を洗うんだ。」
「えええ?僕そんな汚くないよ。
ディル、どうしちゃったの?」
「とにかく、手を洗いに行くぞ!
さあ、エルヴィス、こっちだ!」
俺はエルヴィスを引っ張って手洗い場に直行した。
エルヴィスは素直に石鹸で手を洗っている。
俺はそれをずっと見届けていた。
「ねえ、ディル。」
「何だ。」
「何か変わったね。
手話習ったり、僕にエレちゃん触られて怒ったり。」
「そのエレちゃんっていうのもやめろ。」
「無理だね。
今更呼び名替えたら余計よそよそしくなるじゃん。
あとさ…。」
「何だ。」
「今のやりとり、捉え方によってはエレちゃんを触ると汚らわしいから汚れを落とすために手を洗えっていう解釈にもなるよね。
大丈夫?」
「何だと?そんな訳が…。」
あるぞ、十分にありえる…。
急いでエレノアのいる先ほどの部屋に向かったがエレノアはいなかった。
イリスに聞くと、このあと役所に行く予定だったから出かけたらしい。
「あれ~エレちゃん出掛けちゃったの?
謝りたかったんだけどな~。」
エルヴィスが手を拭きながら後ろで呟いている。
「人の妻に不用意に触るものではない。
それくらい分かっているだろう。」
イリスが低く圧を感じる声でエルヴィスをたしなめた。
俺が言いたかったことをイリスがズバリと言ってくれた。
「…。申し訳ありません。
…ディル、すまなかった。
調子に乗りすぎた。」
「あ、ああ。俺も過剰に反応しすぎた。
すまない。」
一瞬、イリスとエルヴィスとの間にピリピリとした空気が張り詰めた。
何だったんだ今のは。
それよりも、エレノアに誤解を解かなければ…。
あの後しばらく手を洗うことが出来なかった。
入浴時、流石に手を洗ったが何と言うか、物凄く名残惜しかった。
寝る前も、エレノアに触られた手の感触を思い出してしまう。
それと同時に彼女の香りやあの屈託のない笑顔が頭の中で何度も再生してしまうのだ。
何でこんなに動揺しているんだろう…。
手話を習ったらまた今日みたいな機会があるんだろうか?
そんな不純でよこしまな気持ちが湧き出る自分が嫌になる。
次の日、外出予定ではないのにエルヴィスが屋敷に来た。
「やっほ~、遊びに来ました~!
あれ~みんな揃って何してるの~?」
まずい、面倒な奴が来た。
「手話の勉強会だ。エレノアが先生で私たち全員が生徒だ。」
イリスが真面目に答える。
「えええ~?ディルも生徒?あのディルが?」
「うるさい。邪魔するなら帰れ。」
「何々?楽しそうじゃん。僕も生徒になろうっと!」
「遊びじゃない!これは大切な対話の一つなんだ。
俺たちは真剣に学んでいる。
手話を学んでクロエと円滑に話をするためにやっているんだ。」
「ええ?じゃあなおさら僕も参加させてよ。
僕だってクロエちゃんとお話ししたいし。
ね、クロエちゃん?あ、筆談は出来るんだよね。
これ、見て?」
慌てて書いた筆談のメモには『僕もしゅわに混ぜて』と書いてある。
エルヴィスの字は相当に綺麗だ。
エルヴィスは何をやらせてもすぐ上達するのを俺は知っている。
学生時代成績は中の下で俺より低かったが、実力を何故か試験で出し切らない男だった。
そんなエルヴィスが本気を出して手話を学べば俺はエレノアから落第生と思われるのではないかと不安になった。
『良いですよ。エルヴィス様も一緒だと私も嬉しい。』
とクロエが返信していた。
クロエ…、優しい事は良い事だが、今は違うんだ…。
「まあまあ、クロエもこう言ってますし、手話ができる人材が多いほど私はありがたいです。
エルヴィス様も私の指導でよければどうぞ参加してください。」
ああああ、エレノアまで…。
イリスは無言でじっとエルヴィスを見つめている、いや睨んでいる?
こんな時にイリスの無礼すぎるイリス節があればいいのに今日は口数が少ない。
「やった~エレちゃんやっさし~!
エレちゃん先生、よろしくお願いします!」
「はいはい…。
じゃあ、今日のテキストをエルヴィス様にもお渡ししますね。」
「は~い!」
何と言うか、モヤモヤする。
今までエルヴィスが調子よく女性と親しくしていても全く気にならなかったのに。
何でエレノアが相手だとこんなにイライラするんだ?
テキストに沿って手話の学習を進めていく。
エルヴィスはもうふざけずに真剣モードに入っている。
黙っていればなかなかにいい男なんだがな。
キリの良いところまで終えたので、今日の学習会は終了となった。
今日の日のためにエレノアが茶菓子を用意してくれていた。
それを皆で囲んで食べる。
「ほんっとうにエレちゃんの作るものって美味しいよね~。
手話の手つきも何と言うか、繊細で品があるし。
ちょっと手、見せてくれる?」
「普通ですよ。料理するから爪は派手に飾りもしてないですし。
まあ、もともと荒れにくいのはありますが。」
エレノアがエルヴィスに手を見せる。
その時、エルヴィスがエレノアの手に触れた。
「ん~、やっぱ何か綺麗だよね。
ちゃんとケアしているからかなあ?
爪先も綺麗だもんね。」
エレノアの爪をエルヴィスの指先がなぞった。
その瞬間、俺は慌てて立ち上がりエルヴィスとエレノアの間に割って入った。
「何をしているんだ?」
エルヴィスの手を掴む。
自分でも感情が高ぶっているのが分かる。
「いや、エレちゃんの爪が綺麗だなってちょっと触っただけだよ。
ディル、その手痛いよ。」
「エレノアに触るんじゃない。分かったか?」
「わ、分かったよ。そんなに怒らないでよ。
エレちゃん、ごめんね。」
「い、いいえ。大丈夫ですよ。」
ダメだ、イライラがおさまらない…。
「エルヴィス、手を洗え。
エレノアもちゃんと手を洗うんだ。」
「えええ?僕そんな汚くないよ。
ディル、どうしちゃったの?」
「とにかく、手を洗いに行くぞ!
さあ、エルヴィス、こっちだ!」
俺はエルヴィスを引っ張って手洗い場に直行した。
エルヴィスは素直に石鹸で手を洗っている。
俺はそれをずっと見届けていた。
「ねえ、ディル。」
「何だ。」
「何か変わったね。
手話習ったり、僕にエレちゃん触られて怒ったり。」
「そのエレちゃんっていうのもやめろ。」
「無理だね。
今更呼び名替えたら余計よそよそしくなるじゃん。
あとさ…。」
「何だ。」
「今のやりとり、捉え方によってはエレちゃんを触ると汚らわしいから汚れを落とすために手を洗えっていう解釈にもなるよね。
大丈夫?」
「何だと?そんな訳が…。」
あるぞ、十分にありえる…。
急いでエレノアのいる先ほどの部屋に向かったがエレノアはいなかった。
イリスに聞くと、このあと役所に行く予定だったから出かけたらしい。
「あれ~エレちゃん出掛けちゃったの?
謝りたかったんだけどな~。」
エルヴィスが手を拭きながら後ろで呟いている。
「人の妻に不用意に触るものではない。
それくらい分かっているだろう。」
イリスが低く圧を感じる声でエルヴィスをたしなめた。
俺が言いたかったことをイリスがズバリと言ってくれた。
「…。申し訳ありません。
…ディル、すまなかった。
調子に乗りすぎた。」
「あ、ああ。俺も過剰に反応しすぎた。
すまない。」
一瞬、イリスとエルヴィスとの間にピリピリとした空気が張り詰めた。
何だったんだ今のは。
それよりも、エレノアに誤解を解かなければ…。
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