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イリスの苦言
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朝起きると自分の部屋だった。
どうやって帰って来たんだ?記憶がないぞ。
調理場に水でも飲みに行くか…。
朝早くだというのに、エレノアはせっせと朝食の準備をしていた。
まだクロエとイリスは起きていないようだ。
何となくばつが悪いが、エレノアはまだ俺が起きてきたことに気が付いていない。
「もう、起きていたのか?早いな。」
「ああ、旦那様、体調はどうですか?」
「俺は昨日、どうやって帰った?」
「旦那様は酔いつぶれていたので、ご一緒していたエルヴィス様が私をお呼びになりました。
エルヴィス様と私で急遽馬車を捕まえて帰宅したんです。
旦那様の部屋へはエルヴィス様が運んでくださったので私はアルテミス棟には入っていませんからご安心を。」
「…。そうか。
ご婦人やレイズたちと話が盛り上がっていたのではないか?
俺のせいで切り上げたんじゃないか?」
「まあ、レイズ君とはまた領地視察で会えますし、後見人の件で書類や手紙のやりとりはしますから。
ご婦人たちは理事長の計らいで別の日に会う約束をとってもらいました。
今日、そのうちのお一人とお茶に呼ばれたのでこの料理を作ったらすぐ出かけます。」
「そうか…。」
ああ、頭がガンガンする。
エレノアはいつものようにてきぱきと料理をこなしている。
「イリスは…奴隷なのに、君の方が働いているんじゃないか?」
「まあ、イリスは全く料理が出来ないので。
彼女への命令はクロエの安全確保です。
それに、まだ蛇は巻き付いてますし本調子ではないんですよ。
かなり薄くはなったみたいですけど。」
「蛇?薄くなった?何の話だ?」
「あ、いえ。彼女の個人情報です。これ以上は言いません。」
「奴隷に個人情報なんてないだろう。」
「奴隷は期間限定です。その期間もレイズ君次第なので。
私はイリスの事を大切な友人と思っています。
ぶっきらぼうだけど話はいつも的確で優しい女性です。
早く奴隷契約を解除してあげたいんですけどね。」
「大切な友達か。」
「はい。…あ、料理出来上がったので二人を起こしてきます。
私はそのまま外出するのでここで失礼します。
旦那様の分もあるので、良かったらどうぞ。」
「ああ…。」
クロエとイリス、俺の三人で食事をとる。
「マスター昨日はひどい姿だったな。」
「…ああ。完全に飲みすぎた。」
「今更だが、パートナーズビューはやったのか?」
「よく知ってるな。俺は昨日まで知らなかったから実現不可だ。」
「だろうな。
エレノアのドレスもジュエリーもマスターの色は一つもなかった。」
「それも昨日知った。」
「知ろうともしなかった。
マスターはエレノアに付いて行っただけだ。」
「イリス…さっきから何が言いたい?
朝から俺を侮辱して楽しいか?」
「私の主人はエレノアだ。
だが、大切な友人だとも思っている。
そして、マスターはあの店で私を支えてくれた恩がある。
こう見えて私はマスターは伸びしろのある男だと思っている。
だからマスターにはいい男であってほしい。」
「何の話だ?」
「エレノアに甘えるだけなら早く離縁してくれ。
今のあなたはエレノアの足を引っ張っているだけだ。」
「な、何だと!」
「エレノアの懐の広さに気づかず胡坐をかくなと言っている。
その態度の事だ。」
「態度?何が問題なんだ。
以前は確かに悪態をついていたが今はそのようなことしない。」
「それは、当り前だ。
マスター、エレノアに感謝を伝えているのか?
そもそもエレノアに自分から挨拶をしたことあるのか?
朝の一言からエレノアに気を遣わせているのに、何でそんな偉そうなのか私には分からぬ。」
「え、偉そう…。」
「我が主はああ見えて賢い。
マスターとの会話が一見成り立っているように見えるのはエレノアの譲歩のおかげじゃないか?」
「…。」
「私なら夫であろうとそのような態度をされれば家を出るだろう。
エレノアがそうしないのはよっぽどの覚悟があるからじゃないか?」
「…。」
思い当たる節がありすぎる。特にレイズの事だ。
「まあ、聡明なエレノアの事だ。
無駄な事に労力をかけるのは避けたいんだろうな。」
「…。俺の相手をする事が無駄な労力という事か?」
「意外と文脈が読めるな。
マスター、見直したぞ。」
「褒められてもうれしくない。
イリス、カタコトなのを良い事に言いたい放題言っている自覚はあるか?」
「まあ、ある。
私の無礼な話をどう消化するかで今後のマスターの格が決まるんじゃないか。」
「イリスの言いたいことは分かった。…。
ちょっと考えさせてくれ。」
「私はただの奴隷だ。夫婦の事は夫婦で解決したらいい。」
「…よく言うよ。そこまで言っておいて。」
イリスと話すと調子が狂うな。
クロエが心配そうに俺たちのやりとりを見ている。
安心させるように穏やかな表情でエレノアが作ってくれた食事を口に入れた。
その顔を見てクロエがほっとした顔をしている。
どうやって帰って来たんだ?記憶がないぞ。
調理場に水でも飲みに行くか…。
朝早くだというのに、エレノアはせっせと朝食の準備をしていた。
まだクロエとイリスは起きていないようだ。
何となくばつが悪いが、エレノアはまだ俺が起きてきたことに気が付いていない。
「もう、起きていたのか?早いな。」
「ああ、旦那様、体調はどうですか?」
「俺は昨日、どうやって帰った?」
「旦那様は酔いつぶれていたので、ご一緒していたエルヴィス様が私をお呼びになりました。
エルヴィス様と私で急遽馬車を捕まえて帰宅したんです。
旦那様の部屋へはエルヴィス様が運んでくださったので私はアルテミス棟には入っていませんからご安心を。」
「…。そうか。
ご婦人やレイズたちと話が盛り上がっていたのではないか?
俺のせいで切り上げたんじゃないか?」
「まあ、レイズ君とはまた領地視察で会えますし、後見人の件で書類や手紙のやりとりはしますから。
ご婦人たちは理事長の計らいで別の日に会う約束をとってもらいました。
今日、そのうちのお一人とお茶に呼ばれたのでこの料理を作ったらすぐ出かけます。」
「そうか…。」
ああ、頭がガンガンする。
エレノアはいつものようにてきぱきと料理をこなしている。
「イリスは…奴隷なのに、君の方が働いているんじゃないか?」
「まあ、イリスは全く料理が出来ないので。
彼女への命令はクロエの安全確保です。
それに、まだ蛇は巻き付いてますし本調子ではないんですよ。
かなり薄くはなったみたいですけど。」
「蛇?薄くなった?何の話だ?」
「あ、いえ。彼女の個人情報です。これ以上は言いません。」
「奴隷に個人情報なんてないだろう。」
「奴隷は期間限定です。その期間もレイズ君次第なので。
私はイリスの事を大切な友人と思っています。
ぶっきらぼうだけど話はいつも的確で優しい女性です。
早く奴隷契約を解除してあげたいんですけどね。」
「大切な友達か。」
「はい。…あ、料理出来上がったので二人を起こしてきます。
私はそのまま外出するのでここで失礼します。
旦那様の分もあるので、良かったらどうぞ。」
「ああ…。」
クロエとイリス、俺の三人で食事をとる。
「マスター昨日はひどい姿だったな。」
「…ああ。完全に飲みすぎた。」
「今更だが、パートナーズビューはやったのか?」
「よく知ってるな。俺は昨日まで知らなかったから実現不可だ。」
「だろうな。
エレノアのドレスもジュエリーもマスターの色は一つもなかった。」
「それも昨日知った。」
「知ろうともしなかった。
マスターはエレノアに付いて行っただけだ。」
「イリス…さっきから何が言いたい?
朝から俺を侮辱して楽しいか?」
「私の主人はエレノアだ。
だが、大切な友人だとも思っている。
そして、マスターはあの店で私を支えてくれた恩がある。
こう見えて私はマスターは伸びしろのある男だと思っている。
だからマスターにはいい男であってほしい。」
「何の話だ?」
「エレノアに甘えるだけなら早く離縁してくれ。
今のあなたはエレノアの足を引っ張っているだけだ。」
「な、何だと!」
「エレノアの懐の広さに気づかず胡坐をかくなと言っている。
その態度の事だ。」
「態度?何が問題なんだ。
以前は確かに悪態をついていたが今はそのようなことしない。」
「それは、当り前だ。
マスター、エレノアに感謝を伝えているのか?
そもそもエレノアに自分から挨拶をしたことあるのか?
朝の一言からエレノアに気を遣わせているのに、何でそんな偉そうなのか私には分からぬ。」
「え、偉そう…。」
「我が主はああ見えて賢い。
マスターとの会話が一見成り立っているように見えるのはエレノアの譲歩のおかげじゃないか?」
「…。」
「私なら夫であろうとそのような態度をされれば家を出るだろう。
エレノアがそうしないのはよっぽどの覚悟があるからじゃないか?」
「…。」
思い当たる節がありすぎる。特にレイズの事だ。
「まあ、聡明なエレノアの事だ。
無駄な事に労力をかけるのは避けたいんだろうな。」
「…。俺の相手をする事が無駄な労力という事か?」
「意外と文脈が読めるな。
マスター、見直したぞ。」
「褒められてもうれしくない。
イリス、カタコトなのを良い事に言いたい放題言っている自覚はあるか?」
「まあ、ある。
私の無礼な話をどう消化するかで今後のマスターの格が決まるんじゃないか。」
「イリスの言いたいことは分かった。…。
ちょっと考えさせてくれ。」
「私はただの奴隷だ。夫婦の事は夫婦で解決したらいい。」
「…よく言うよ。そこまで言っておいて。」
イリスと話すと調子が狂うな。
クロエが心配そうに俺たちのやりとりを見ている。
安心させるように穏やかな表情でエレノアが作ってくれた食事を口に入れた。
その顔を見てクロエがほっとした顔をしている。
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