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前世の私⑬

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修也はクラブに誘うと

「何だよ~めんどくせえな。」

と言いながらにやにや笑って入部してくれた。

言い出しっぺは私なので私が部長、せなちゃんと修也は副部長に決まった。


そうそう、ここ最近修也は歯を矯正し始めた。
出っ歯は自分でも気になってたんだろう。

このタイミングなのは、やっぱりせなちゃんが関係するんじゃないかと思っている。

徐々に修也の歯が引っ込むほどに修也のことが気になる女子も増えているみたいで、上級生や下級生からも『かっこいい。』『アイドルの○○に似てる。』と覗きに来るほどだ。


もちろんせなちゃん目当ての生徒も多い。

白々しくせなちゃんに手話の分からないところを聞きに行く男子を見ると腹が立つかって?

全く立たない。

せなちゃんの素晴らしさを分かってもらえるようでむしろ嬉しい。


そうして、手話クラブは部員が増えその分、予算というクラブで使えるお金も増えたそうだ。

部長として何が欲しいか先生に聞かれ、ずっと思っていた事を話してみた。


まず、自分はパソコンを持っているから動画で練習ができるけど、奥様からもらった大切なパソコンだから学校には持ってこれない。

それにパソコンの画面はみんなが一斉に見るには小さすぎるから、映画のようにみんなが見やすい画面が欲しい。


そうすれば他の学校に手話クラブがあったら、ここみたいな田舎の学校でもインターネット繋がれると思う。

つまりパソコンと画面が欲しい。と伝えた。


でも、どれもすごく高いのは知ってる。

すぐにぽんぽん買ってもらえるようなものじゃないって分かってるから

「言うだけ言ってみました。今のクラブの状態で十分です。」

と先生にあんまり真剣にとらないようにと一声かける。


先生は『前田さんは可哀そう発言』のあの日の最後のような茫然とした顔をしていた。


ああ、また生意気言ってしまったかな。

何でこの先生とはタイミングの相性が合わへんのやろうか…。


「先生…大丈夫ですか?」


「…佐多さん…。」先生はわなわなしている。


「そのアイデア、素晴らしいよ!!そ、それだ!!今から校長先生に交渉だ!!職員会議でぜったいものにしてみせる!!政府の助成金もあれば不可能じゃない!
無理なら教育委員会と市長だ!佐多さん、後は頼んだよ!!」と先生なのに廊下を走って行った。


先生、あんな叫びながら廊下走る人だったっけ?


先生の声に驚いて修也が見に来てくれた。


「おい、ルキア大丈夫か?先生のすごい声が聞こえたけど怒鳴られたのか?」


「いや、大丈夫。先生もあんな風に廊下走るんやな。良い事でもあったみたいやわ。」

「ふーん。なら良いけど…。」

「あっそうや、修也この前手話の表現ちょっとおかしいところあったで。この動作の方向間違ってるわ。」

「え?これ?」

「そう、それ。その指は、こっち側に回すんじゃなくて逆のこっち。」

対面だと説明しづらかったので修也の手をそのまま掴んで方向を伝える。


「こっちじゃないと意味が変わってしまうらしいわ。」
修也を見ると目を見開いて赤くなっている。


「あ、ごめん、手痛かった?突然掴んでごめん。」どうも私はせっかちみたいだな。


手を握ったまま謝る。いじめてるわけじゃないからね。

「お、お、おう…。」ああ、ちょっと怒ってるかな?

「どうもせっかちで、口で言うよりこうやって相手動かした方が早いと思ってしまうわ。あかんなあ。」

苦笑いになってしまう。反省はしてるんよ。


「あ、あかんことない。…俺はこうやって教えてもらう方がありがたい。」


「あ、そうなん?そういう人もいるんやね。そうならみんなもそうやって教えるのもありかな?」


「だ、だめだ。俺だけが動かしてもらう方がありがたいんだ。
他の奴は耳が聞こえるんだから言葉で説明した方が良い。」


?修也も耳聞こえるやん。まあ、そういうもんなんかな?


「そっか。分かった。じゃあ修也だけそうするわ。」


「お、おう!それが良いな!」ああ、修也の顔が嬉しそうになった。

もう怒ってないな、良かった良かった。

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