前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな？

前世の私⑧

それは、国語の音読の授業だった。


1人1人が一章節ごとに教科書をみんなの前で音読する授業だった。

緊張する子はもちろん声は小さいし震えている。
やんちゃな子はどうしてもふざけてしまう。

私は緊張しながらも淡々と音読を終えた。

「佐多さんは声の抑揚がないから、もう少し主人公に感情を移入するように読むと、もっと良くなるよ。」

と先生から頼んでもいないアドバイスをもらった。


ちなみにこの作品の主人公はどこぞのおっさんが傘を持ち歩いているという話だ。
おじさんが主人公なのか、それを見ている子供が主人公なのか分からない謎の話だ。


傘を持ち歩こうが使わまいがそれは大人の自己責任の判断だ。

何をどう解釈してよいかさっぱり分からんわ。


そして、せなちゃんも音読に当てられた。


せなちゃんは一生懸命呼んでいるけど、発音が上手くいかなくて顔を真っ赤にしながら、たどたどしく読み続けている。


そういえば、一応喋ることはできるけど好きじゃないってせなちゃん言ってたな…。

周りのクラスメートもどこか困惑している。

悲しそうな顔をしている子もいれば、不謹慎にも笑いを堪えている子もいる。

これってどうなん…？と思ったその時、出っ歯族こと修也が爆弾発言をした。


「なあ、もういいからその下手くそな音読やめろよ！聞いてて気持ち悪いわ！！」



教室中がしーんとした。

先生が驚いた顔から、みるみる目の奥に怒りが込み上がっているのがよく分った。


せなちゃんは出っ歯族修也の声は聞き取れなかったが、クラスと先生の反応で何となく察したようだ。

音読をやめ、うつむいている。



せなちゃん、せなちゃんは何も悪くないよ。